日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

禁じられた過去21

时间: 2018-08-19    进入日语论坛
核心提示:20 復《ふく》 讐《しゆう》「何を考えてるの?」 暗い部屋の中で、倉林美沙が言った。「うん。大したことじゃない」 山上は
(单词翻译:双击或拖选)
 20 復《ふく》 讐《しゆう》
 
 
「何を考えてるの?」
 
 暗い部屋の中で、倉林美沙が言った。
 
「うん……。大したことじゃない」
 
 山上は、じっと天井の暗《くら》闇《やみ》を見上げていた。
 
「私たち……若い恋人たちみたいね」
 
 ベッドの中で、美沙は山上に肌をすり寄せてくる。その肌はしっとりとして滑らかで、かすかに汗ばんでいた。
 
「そうかい?」
 
「こんなに真暗にして。——太った私を見たくないわけ?」
 
 山上はちょっと笑って、
 
「分るかい。——僕は若いころ、空想の中で何度も君を抱いた。それが現実になったんだ。こんなことも、人生にゃあるんだな」
 
「嬉《うれ》しいこと、言ってくれるわね」
 
 と、美沙は指で山上の鼻をつついた。
 
「正直に言ってるのさ」
 
「がっかりしなかった?」
 
「いや。——想像していた通りの君だ」
 
 山上は本気でそう言ったのである。
 
 ほんの遊び。——そのつもりでの、このひとときだったが、山上は本気になってしまいそうな自分を感じて、怖かった。
 
「いけないわ」
 
 と、美沙は言った。「奥さんが具合悪いっていうのに」
 
「うん……。分ってる」
 
 そう言いながら、山上はもう一度激しく美沙を抱いた。
 
「時間が……」
 
 と、呟《つぶや》いて、美沙は、しかし逆らおうとはしなかった。
 
 むしろ、自分の方から、山上を強くかき抱きさえしたのである。
 
 時は、止ったように見えた。
 
 
 
 時は、流れた。
 
 山上は、寝入っていた。美沙の中に全精力を注ぎ尽くしたかのように、深い眠りに落ちていた。
 
 美沙はゆっくりとベッドに起き上った。山上の方へ目をやったが、全く目覚める気配はない。
 
 美沙は、静かに大きなベッドから滑り出ると、ソファの辺りに投げ散らかしてある下着を身につけ、服を着る。
 
 その間も、時々ベッドの山上へ目をやったが、深い寝息をたてているばかり。これなら大丈夫だろう。
 
 美沙は、バッグを開けた。バッグの底から、布にくるんだ、重い包みを取り出す。
 
 表情は、いつもの美沙とは全く違っている。青ざめ、固く唇を結んで、自分に決意を確かめさせているようでもある。
 
 布をそっと開くと、冷たく光る拳《けん》銃《じゆう》が現われた。美沙は、ありふれた布の手袋をはめると、拳銃を手にした。
 
 ベッドへ近付く。——山上がちょっと身動きしたので、美沙はギクリとして拳銃を背中へ隠した。
 
 しかし、山上は仰向けになっただけで、少しも起きる気配がなかった。
 
 美沙の額に汗が光っている。拳銃を握りしめると、両手でつかみ、銃口を、山上のこめかみに向けた。
 
 手が、銃口が震えた。汗が、背中を流れ落ちて行く。何度か深呼吸して、美沙は固く唇を結ぶと、銃口はそっと山上のこめかみに近付き、ほとんど触れそうになる。
 
 引金に指がかかった。美沙の顔が汗で光っている。息づかいが荒くなり、手も足も震える。
 
 美沙は、大きく息を吸い込むと、息を止め、ギュッと拳銃を握り直した。
 
「ごめんなさい」
 
 と、美沙は呟く。
 
 そして、美沙の白い指は引金を引いた。
 
 
 
 包帯をした右手を見下ろすと、村内は胸にしめつけるような痛みを覚えた。
 
 タクシーの窓から、夕方になりかけた町並を眺める。——胸が痛むのは、むしろ幸いだった。
 
 安西を死なせてしまったこと。その辛《つら》さを、自分自身で確かめることになるからだ。
 
 包帯に包まれた手は、あのとき電柱を殴りつけて、傷を負ったのである。
 
 安西……。すまん。
 
 俺《おれ》は結局、お前を死なせてしまった。
 
 自分が死ねば良かったのだ。安西では、ひどすぎる!
 
 悔んでも、遅い。それは分っているのだが……。
 
 村内の中に、怒りが燃え上っていた。必ず犯人をこの手で捕えてやる。そう決心していた。
 
 上司からは少し休めと言われていたが、そうはいかなかった。安西の死の光景が、決して村内を眠らせないだろう……。
 
「——そこだ」
 
 と、村内は言った。
 
 タクシーを降りると、村内はその病院へと入って行った。入院患者の病室を訊《き》き出すのは簡単だ。
 
「山上秀子さんですね」
 
 と、看護婦は、すぐに調べてくれた。
 
「ありがとう」
 
 と、村内が行こうとすると、
 
「一応、先生とお話になって下さいね」
 
「ああ、もちろんですよ」
 
 村内は、平然と嘘《うそ》をつく。これでなきゃ、刑事というやつはつとまらないのだ。
 
 病室のドアを開けると、ベッドのそばで花を花びんにさしていた少女が振り向いた。憶《おぼ》えがある。山上の娘だ。
 
「何か……」
 
 と、少女はやってくると、「母は眠ってるんです」
 
「私を憶えてるかね」
 
 と、村内は言った。「エリ君、だったかな」
 
「刑事さんですね」
 
 と、エリが肯《うなず》く。
 
「そうだ、ちょっと君のお母さんに訊きたいことがある。——お父さんにも」
 
「今、母は……」
 
「聞いてる」
 
 と、村内は言った。「しかし、殺人事件の捜査だ。悪いが、何としても話を聞く必要がある」
 
 村内はこの前と別人のように厳しい口調で言った。——エリはキュッと唇を結ぶと、
 
「じゃ……少し待って下さい。私じゃいけませんか。母は自殺未遂を起して、不安定な状態なんです」
 
 エリの目は臆《おく》さず、村内を見返した。その強さ——母を守るのだという意志の表われに、村内は打たれた。
 
「分った。ともかく君の話を」
 
 二人は、病室を出て、休憩のできるスペースのソファに腰をおろした。
 
「学校の帰りかね」
 
「そうです」
 
「お母さんの自殺未遂というのは、どういう事情だったんだね? 詳しいことが知りたい。何でも、どんなことでもだ」
 
 と、たたみかけるように、「相棒だった刑事が殺された。まだ三十四歳で、何もかもこれからだったんだ」
 
「それが……父と何か関係あるんですか」
 
「ないと思っていた。それまではね」
 
 と、村内は言った。「しかし、奥さんが自殺未遂となると、事情は変ってくる。そうだろう? これが偶然かどうか」
 
「父は——」
 
「オフィスへ連絡したが、いない。秘書も、どこへ出かけたか分らないと言ってる」
 
 村内は、じっとエリを見つめて、「君に友人として訊く。言いにくいこともあるだろうが、何もかも話してくれないか。決して、口外はしない。私はね、年下の同僚を失った。その復讐をしたいだけなんだよ」
 
 エリは、村内の言葉を信じた様子だった。
 
「分りました」
 
 と、肯くと、母の自殺未遂と、その原因になったと思える、「黒木」という男の手紙のことも話した。
 
「——すると黒木も入院中?」
 
「父はそう言っていました。どこの病院かは知りません」
 
「調べれば分るだろう。救急車で運んだというのならね」
 
 村内はメモを取ってから、「君には、いやなことを訊いてしまったね」
 
 と、言った。
 
「いいえ。——もし、本当にその黒木って人が父親だとしても、私には関係ありません。私を育ててくれたのは、今の父と母です」
 
 きっぱりとした言い方は、いかにも爽《さわ》やかで、村内はいささかの気負いがむしろ気恥ずかしい気分だった。
 
「でも、刑事さんは何の事件を調べてらっしゃるんですか」
 
 と、エリは言った。
 
「うん。——ある女が殺された。水野智江子というんだ。聞いたことは?」
 
「ありません」
 
「そうか。たぶんある男に愛人として囲われていたんだ。その男の名前も顔も分らないんだが、連絡先として、その女のマンションを借りてやるとき、君の家の電話番号を教えている」
 
 エリは、じっと村内を見て、
 
「じゃ……父がその人を愛人にしてたと?」
 
「分らん。その男がでたらめに書いた番号が、たまたま君の家の番号だったのかもしれないと思っていたんだが、君のお母さんが自殺未遂したというのを聞いてね。これは偶然じゃないのかもしれない、と思ったんだ。そうなると、水野智江子と、君のお父さんの関係も、もう一度洗い直してみる必要がある」
 
 エリは、やや青ざめていたが、
 
「父は——そんなことしていません」
 
 と、言った。「外に女の人を作るなんてこと……」
 
「そうだといいんだがね」
 
 と、村内は肯いた。「じゃ、また出直してくるよ。もしお父さんがここへ来たら、私が会いたがっていたと伝えておいてくれないか」
 
「分りました」
 
 と、エリが立ち上る。「母のそばに戻っていたいんで……」
 
「ああ、悪かったね」
 
 エリと話している内に、村内の気持も大分和らいでいた。「この番号へかけてくれれば、いなくても、捕まる。頼むよ」
 
「はい」
 
「じゃあ……。しっかり看病してくれよ」
 
 村内は、エリの肩を軽く叩《たた》いて、歩いて行った。
 
 
 
「黒木」という男のことはすぐに分った。
 
 村内は、公衆電話からその病院へ電話を入れたが、黒木は意識不明で、危険な状態ということだった。
 
「分りました。もし容態に変化があったら、ご連絡を」
 
 村内は、そう頼んで電話を切った。——黒木の入院がはたして偶然かどうか。
 
 外へ出て歩き出すと、もう辺りは薄暗い。
 
 村内はやや落ちついて来て、改めて考え直していた。安西を目の前で死なせたショックから、やっと立ち直ろうとしていたのである……。
 
 山上のような「有名人」が愛人を置いているのは、別段珍しいことではない。もし、水野智江子が山上の「愛人」だったとして、何かでもめた挙句に殺したとしたら……。
 
 不動産屋の栗山が殺されたのは、不思議でもない。男の顔をはっきり見ているのだし、口をふさぐしかあるまい。
 
 しかし、あのホステスの君原令子は? どうして命を狙《ねら》われたりしたのだろう?
 
 そして黒木という男の存在。——あのエリの本当の父親だとしても、今になってなぜ、そんなことを言って来たのか。
 
 あれは文字通り脅迫である、山上秀子が自殺を図ったのは分らないでもない。
 
 むしろ奇妙なのは黒木が入院してしまったこと。入れたのはどうやら山上らしいが、黒木の容態は普通ではないらしい。
 
「何かあるな」
 
 村内の長年の勘はそう告げている。これは何か裏のある話なのだ。
 
 ピーッピーッと村内のポケットベルが鳴り出した。
 
「おっと」
 
 手近なビルへ入って、一階の公衆電話へ。
 
「——もしもし、村内だ」
 
 連絡を聞いて、村内は、「何だって?」
 
 と、思わず大きな声で訊き返し、隣で電話していたOLらしい女の子を飛び上らせてしまった。
 
「どこだ? ——分った。そのホテルの部屋はそのままにしといてくれ」
 
 と言って、急いで切る。
 
 そのホテルまで十五分もあれば……。
 
 村内は駆け出すような勢いで歩き出した。
 
 
 
 美沙が拳銃の引金を引いた。
 
 カチッ。
 
 金属の乾いた響きがして、それだけだった。弾丸はでなかった。
 
 美沙はもう一度引金を引いた。——カチッ。
 
 弾丸が出ない。美沙は、呆《ぼう》然《ぜん》として、手にした重い鉄の塊を見下ろしていた。すると、山上がゆっくり顔を向けて、目を開いたのである。
 
「弾丸は抜いたよ」
 
 と、山上は言った。
 
「山上さん……」
 
「自殺に見せかけるつもりだったのか」
 
 美沙は、よろけるように後ずさって、ソファにぐったりと腰を落とした。
 
 コトッと音をたてて、拳銃が床に落ちる。
 
「偶然だよ」
 
 と、山上は言った。「君がシャワーを浴びているとき、バッグが落ちそうになっていてね。それを直したら、いやに重いじゃないか。普通の重さじゃない。で、中を見たら、それが入ってた」
 
 山上はベッドを出てガウンをはおると、落ちた拳銃を拾った。
 
「びっくりしたよ。どう見ても本物だ。それで、ともかく弾丸を抜いて、元に戻しておいたんだ」
 
 山上は、ベッドに腰をかけると、「どういうことなのか、話してくれないか。僕が何をした?」
 
 山上の口調は、少しも怒りを感じさせないものだった。
 
「何も……」
 
 と、美沙は言った。「あなたは何もしてやしないわ」
 
「じゃ、どうして僕を殺そうとしたんだ?」
 
「ごめんなさい……」
 
 美沙は泣き出した。——山上は、ため息をついて、
 
「泣かないで。——さあ」
 
 と、美沙の肩に手をかける。「怒っちゃいないよ。君は僕にとって、いわば永遠の恋人さ。君になら殺されても文句は言いたくない。しかしね、僕は一人じゃない。分るだろ? 妻もいるし、娘もいる。そう簡単に死ぬわけにはいかないんだよ」
 
 倉林美沙は、しばらく声を殺すようにして泣いていたが、やがて顔を上げると、
 
「——ある人を守りたかったの」
 
 と、言った。
 
「三神かい?」
 
「違うわ」
 
 と、美沙は首を振った。「私の愛している人……」
 
「君の愛してる人、か。——じゃ、もともと君が持ち込んで来た話も、目的は別にあったんだな」
 
 山上は、首を振って、「まあ、時間はある。ゆっくり聞こう」
 
 山上は涙で汚れた美沙の顔を見ると、
 
「そんな顔は君に似合わない」
 
 と言って、バスルームへ入り、タオルを水で濡《ぬ》らした。
 
 ギュッと絞って、美沙へ持って行ってやる。
 
「これで顔を拭《ふ》いて」
 
「ありがとう……」
 
 と、見上げた美沙の目が、山上の背後を見ていた。
 
 振り向く間もない。タオルを濡らすのに水を出していたわずかの間に、誰《だれ》かがこの部屋に入って来たのに違いない。
 
 山上は後頭部をしたたかに殴られ、そのまま気を失って床へ崩れるように倒れたのである。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%