目が覚めると、もうお昼近かった。
十時間はたっぷり眠った勘定になる。我ながら、少々呆《あき》れた。
起き出して顔を洗い、コーヒーを入れて一杯飲むと、やっとすっきりした。
さて、今日はどこへ行くか。──まずこの間の話の続きを、柏木幸子に聞こう。杉崎のところは、夜でもいい、自宅へいきなり押しかけてやってもいいだろう。
電話が鳴り出した。少し放っておいたが、しつこく鳴り続けるので、
「うるさいなあ」
とブツクサ言いながら、のんびりと歩いて行って受話器を上げる。アーアと欠伸《あくび》をしてから、
「河谷です」
と、言った。
「奥さんですか、落合ですが」
落合? 落合の方に知り合いがいたかしら、などと考えてから、やっと落合刑事だと気が付いた。
「まあ、どうもおはようございます」
と、言って、もう十二時を回っているのを見て、
「こんにちは」
と言い直した。
「おやすみでしたか、それは失礼しました」
「いいえ、さっき起きたところですの。──何かご用ですか? 逮捕されるのかしら」
「逮捕するのに、いちいち電話で都合はうかがいませんよ」
それもそうだ。
「それじゃ、どういう──」
「杉崎という男をご存じですか?」
「杉崎……。あの──M大学の?」
「やっぱりそうですか。昨日、大学へ訪ねて行かれましたね」
「はあ、それが何か……」
どうやら、嘘をついても仕方ないらしい。「杉崎さんが保護願でも出したんですか」
「いや、手遅れですね。殺されました」
「殺され……た?」
「何のご用で杉崎に会われたんです?」
と、落合刑事はたたみ込むように訊いて来る。
私に、考える間を与えまい、ということだろうが、そうはいかない。一度あったきりの男が殺されたくらいで、ショックを受けるほど、私はデリケートではないのだ。
「主人が、あの人と会うと言っていたのを思い出したので、会いに行ったんです」
「ご主人が? いつのことですか、それは」
「出張に出る前です。帰ったらすぐに会うことになっているから、もし留守中に電話があったら、聞いておいてくれ、と……」
話だけなら、消えてなくなるのだから、証拠はいらないわけだ。
「それで、杉崎は何と言いました?」
「会っていない、と。──でも、何だかあわてた様子でしたから、もう一度会おうと思っていたんです」
「そういうことは、警察の耳に入れて下さらなくては困りますね」
「だって、私の記憶も曖《あい》昧《まい》ですし、主人が殺されたことと関係があるのかどうかも分らないのに、そんなことできません。主人が何か恩を受けた方かもしれないんですよ。あの大学を出てるんですから。それなのに、警察が──」
「いや、分りました」
と、落合は遮った。
苦笑している顔が、目に見えるようだ。
「どこで殺されたんですの?」
「自宅です。今から行って来るつもりですが──」
「私を連れてって下さいません? 監視してるのに、丁度いいでしょ」
「自宅をご存じですか」
「知っているはずないでしょう」
と私は言った。「三十分で仕度しますから、迎えに来て下さいね」
私はさっさと電話を切ってしまった。──公僕でしょ。それくらいやれ!
杉崎が殺された……。昨日、私が会いに行ったことで、何かが起こったのだろうか?
まさか、そんな、スリラー映画のようなことが……。しかし、現実に夫が殺されている。そして、そのことで話を聞きに行った翌日に、杉崎が殺された。
偶然だろうか? そうでないとは言えない。私は、左手の傷を見た。
この傷だって、幻でもなく、事故でもない。誰かが私を傷つけようとして──ひどいときには死ぬかもしれないのを承知で──硫酸か何かのびんを投げたのだ。
これは冗談でも何でもない。つまり──人を殺してでも、夫の死の真相を知られたくない、誰かがいるのだ。
私は、鏡の前に立って、
「気を付けるのよ。大胆に、でも慎重にね」
と、自分の像に言い聞かせた。
手早くシャワーを浴びて、頭をもっとすっきりさせると、外出の仕度をした。もちろん、ホテルのパーティに行くわけじゃないので、できるだけ動きやすいように、パンタロンスーツにした。
だが、考えてみると、落合には仕事がある。わざわざここに迎えに来てくれるものだろうか?
「ふざけるな!」
と思って、さっさと現場へ行っているかもしれない。
「それならそれでいいわ」
と、一応仕度だけして、時計を見た。
ちょうどそのとき、玄関のチャイムが鳴った。
「パトカーで呼びつけられたのは、初めてですねえ」
と、座席に落ち着くと、落合が言った。
別に怒っている様子ではない。
「すみません」
「いいですよ。どうせ途中だったんですからね」
落合は私を見て苦笑した。「それにしても、あなたが犯人とは思えなくなって来ましたね」
「そうですか?」
「犯人なら、どんなに倹約家でも、パトカーに乗りたがったりしませんよ」
落合はそう言ってから、
「もし犯人なら、今までに会ったことがないくらい、度胸のいい犯人ですね」
と付け加えた。
「杉崎さんは、いつ殺されたんですの?」
「まだ詳しいことは、聞いていないんです。──ああ、それから、告別式のときに、あなたにぶつかった過激派の男──憶《おぼ》えていますか」
「何とかいいましたわね」
「志村一郎です。彼はM大学の学生なんですよ。つまり、ご主人の後輩というわけです」
「そうですか。でも、主人が卒業したのは、ずっと昔のことですわ」
「そうですな。──まあ、何かあったか、なかったか、その辺は調べてみた方がいいようだ」
と言ってから、落合はふと私の手を見て、
「手をどうしたんですか?」
と訊《き》いた。
「ああ、これですか。片付け物をしていて、ちょっと切ってしまったんですの」
「それは危ないな。気を付けて下さい」
本当のことを、落合に話す気には、なれなかった。夫があの若者のグループとずっと接触していたこと、そして、若者の逃亡をいわば助けていたこと……。夫の秘密は、私だけが守っておきたかった。
──杉崎の家は、ごくありふれた建売住宅だった。
せいぜい三十坪ほどの土地に、プレハブの二階屋と、小さな庭。しかし、まだそう古い建物でないと思えるのに、どことなく、荒れ果てて、汚れた感じがした。
玄関の前には、パトカーなどが停って、近所の人たちが集まっている。
私と落合刑事が、その人たちをかき分けて玄関の方へ歩いて行くと、
「奥さん?」
「違うわよ。あの人じゃない──」
といった囁《ささや》きが交わされるのが耳に入って来た。
「落合さん、どうも──」
と、中から、白い手袋をした若い刑事が顔を出した。
「何か分ったか?」
「今のところはさっぱり……。見て下さい」
「現場は?」
「居間です」
夫が殺されたのも、居間だった、と私は思った。落合が私の方を見て、
「見ない方がいいかもしれませんよ」
「主人の死体を見ていますもの」
「そうですか。──物に触れないようにして下さい」
私は、八畳ほどの、何だかちょっと狭苦しい居間へと足を踏み入れた。死体は、布で覆われていた。
「刺されていますね。凶器はまだ見付かっていません」
若い刑事が説明している。刺殺というのも夫と同じだ。やはり何か関連があるのだろうか?
私は、仕事の邪魔にならないように、気を付けながら、居間の中を見回した。──そう物が多いわけでもないのに、狭く感じられるのは、雑然として、片付いていないせいだった。──新聞が山と積んであって、灰皿はタバコの吸殻で溢《あふ》れている。
ガラス戸越しに庭を見ると、植木鉢が棚の上に並んでいたが、どれも枯れて、放ってある。どことなく佗《わび》しい光景だった。
「どうも昨日の内に刺されたようですな。詳しくは分らないが」
と、落合がやって来て、言った。
「奥さんが家を出ておられるんですね」
私の言葉に、落合は、ちょっと戸惑ったようだった。
「どうしてです?」
「灰皿や、庭の様子、飾り棚の壜《びん》なんか見ると、そんな風に思えて……」
「ああ、なるほど」
と、落合は肯《うなず》いた。 「鋭いですな。確かめてみましょう」
若い刑事を手招きして、
「杉崎の家族は?」
と訊く。
「妻と二人暮らしでした。ただ、半年前から、別居していて──というか、奥さんが出て行っちまったようですがね」
「なるほど」
落合がチラッと私を見た。「──で、連絡はしたのか?」
「はい。やっと一時間ほど前に連絡がつきまして、そろそろやって来ると思いますけど……」
と、その若い刑事が言い終ると同時に、私服の警官がやって来て、
「被害者の奥さんがみえてます」
と告げた。
杉崎の妻は、無表情に夫の死体を見下ろした。──五十近くだろうが、見たところは、もっと老《ふ》け込んでいた。
髪が白いとか、しわが目立つとかいうのではなく、生気がなく、目にも光がないのである。
「犯人?──知りませんよ」
と、落合の問いにも冷ややかに答えた。
「別居なさっていたんですか」
「ええ。でも、私は殺したりしませんよ」
「それはもう──」
「こんな人、殺したって、一文にもなりゃしない」
と、杉崎の妻は言った。
それが、憎しみも嫌悪も感じさせない、平《へい》坦《たん》な声で言われたので、いっそうやり切れない気がした。
杉崎の妻は、ふと私に気付いて、
「あなたがそうなの?」
と声をかけて来た。
「え?」
「杉崎の彼女?」
「いいえ。たまたま昨日初めてお会いしたので……」
「そう。──確かに、この人にはもったいないわ」
「ご主人に恋人が?」
と落合が訊く。
「ええ。そうなんですよ。だからこっちも出てやったんだけど──」
と、居間の中を見回して、「だらしがない人だったわ。出て行くと言うと、『お前がいなくても、彼女がちゃんと来て、きれいにしてくれる』って、威張ってたけど、結局、何もしてくれなかったようね」
あざけるような笑いが、杉崎の妻の口から洩《も》れて、私は、逃げ出したいような思いに駆られた。
「しかしですね」
と落合が言った。「ご主人は殺された。犯人がいるわけです。──あなたがここにいる間で、ご主人が身の危険を感じておられるようなことはありませんでしたか?」
「さあ。分りませんね」
と、杉崎の妻は肩をすくめた。「大体ここ何年も、ろくに口なんかきかなかったんですから」
「そうですか……」
さすがに落合も諦《あきら》めたらしい。
「もう帰っていい?」
「後ほどまたおいでいただくことになると思いますが」
「いいわよ。──そうね、もう主人がいないんだから、戻って来てもいいわね」
杉崎の妻は、もう夫の死体に目もくれず出て行った。
「大したもんだ」
と、落合が言った。
「何がですの?」
「いや……まあ、何となくです」
落合の言葉も、分らないではなかった。
それにしても、冷え切った夫婦というのは、あんなにも寒々として、やり切れないものなのか。──いくら浮気していても、私と夫の間は、あんなにひどいものではなかった……。
もちろん、私と夫の間の平和が偽りの平和だったと言われれば、その通りかもしれない。しかし、そこには何分の一か、真実の平和も含まれていた。杉崎たちのように、平和すら──いや、平和でも争いでも、ともかく関り合いということ、そのものが消えてなくなっているのとは、違っていた。
だからといって、私は自分の浮気を弁護する気はない。ただ、いくら久保寺と浮気を楽しんでいても、夫と別れる気はなかったのである。
「──どうも、これは難しそうだな」
落合が首を振った。「杉崎の女とか、例の志村の線とか、当る所は色々ありますが、どうも、勘では見込みがない」
「刑事さんって、今でも勘に頼るんですの?」
「まあ、そうですね。捜査は勘の裏付けですよ」
「落合さん」
と、巡査が一人顔を出して、「隣の家の人が、何か見たらしいんです」
「そうか。よし、話を聞こう」
居間には死体があるので、玄関先で話を聞くことにしたようだ。
「昨日の十時過ぎだね」
と言ったのは、六十近い感じの老人である。
「何か聞こえたんですね?」
「喧《けん》嘩《か》しているような声がした。──しかし、話の中味は聞き取れなかったがね」
「杉崎の声は分りましたか」
「ああ、分るとも。何度も聞いてるからね」
「すると相手は?」
「さてね。女だったことは確かだよ」
「女?──間違いありませんか」
「ああ」
「それで……」
「喧嘩の声が三十分近く続いたかな。何か物が壊れる音がして、静かになった」
「壊れる音? どんな物です?」
「ガラスとか、何かそんな物らしかったね。よく分らないが……」
「それから?」
「騒ぎがあんまり長く続くので、ちょうど窓を開けて、その家を覗《のぞ》いておったのだ」
「何か見たんですか」
「女が出て行くのをね」
「どんな様子でした? いや、着ている物じゃなくて、印象です。あわてているようでしたか? それとも、静かに周囲をうかがって……」
「そうだな……。何かこう──自分のしたことに恐れおののいている、という様子だったね」
いささか文学趣味の持主らしい、と私は思った。
「女に見憶えは?」
「残念ながら、顔は陰になっていてね」
「着ているものとか、何か特徴はありませんでしたか?」
「クリーム色のコートをはおっとったな。それ以外は、暗かったので、よく分らん」
「コートですか」
落合がメモを取って、「どんなコートか分りますか? えりは大きいとか小さいとか、ベルトがあったかどうか、とか……」
「ベルトがぶらぶらしてたな。うん、それはよく憶えとる。それ以外はちょっと分らないね」
隣家の老人が帰って行くと、落合は肩をすくめて、
「これだけじゃ、どうにもなりませんな」
と言った。
「死後大分時間がたっているところから見て、その女が犯人らしいが……」
「それなら私はアリバイがあります」
「そうですか」
「残念でした」
と言ってやると、落合は笑って、
「いや、奥さん、あなたは面白い方ですね」
「それは誉め言葉ですの?」
と私は落合をにらんでやった。
「柏木はただいま外出中でございますが」
と、交換手の返事があった。
「そうですか」
私は、ちょっとためらってから、「あの、何時頃お戻りか、分りませんか?」
「さあ……ちょっと分らないんです」
「じゃ、結構です」
私は、電話を切って、席に戻った。山田知子との待ち合せの時間には、まだ三十分ある。
そろそろ、四時になるところだった。
柏木幸子に会って、話を聞きたかったのだが、外出中では仕方ない。だが、社員が外出していて、何時に戻るか分らないというのは、ずいぶんだらしのない話だ。
私もOLだったから分るのだが、普通、仕事で外に出るときは、どこへ行って、何時頃戻るか、予定を出しておくのが当然だ。
帰りの時間を少しさばを読んで出して、どこかでのんびりさぼって来るのも、OL生活の楽しみの一つである。もっともケチな課長がいて、届を出すと、必ず、
「どこどこまで何分、用件に何分、何時までには戻れるはずだ」
と文句をつけられたものだ。
夫の会社も、その辺、割合にきっちりしているようではあったが……。まあいい。また電話してみよう、と思った。
「あら! 早いですね!」
と声がして、顔を上げると、山田知子がやって来るのが見えた。
「まあ、そっちも早いじゃない」
「ええ。ああ、お腹空いちゃった」
と、大きく息をつく。
こういう風に振舞えるというのは、若さというものなのである。私のような年齢で、大声で「お腹空いた!」などと言おうものなら、みっともない、とにらまれるだろう。
「お昼抜きなの?」
私は、知子が猛然とサンドイッチを平らげるのを見て訊《き》いた。
「いいえ。でも──足らないんです。いつも、子供たちと食べた後で、近所のおソバ屋さんに行くんですもの」
まあ、肉体労働だから、それは当り前かもしれない。
「で、何か分って?」
「ええ! 凄《すご》いでしょ。一日で情報を仕入れて来るんだから」
「どこで聞き込んで来たの?」
「お昼休みに、会社の前で待ってたんです。そして、女の子たちがワッと食事で出て来るのを、後をついて行って、同じ食堂に入って、混んでるからって、一つのテーブルに坐って……」
「それで、田代のことを?」
「ええ。友達が田代って人とお付合いしてるんだって言ったんです。でも、何だか心配なので、相手のことを調べようと思って来たんだけど、って」
「で、何か話してくれた?」
「もう、向うの方からベラベラ。怖いですね。女の口って」
「そんなものよ」
「大体、嫌われてるみたい。何人かの人にお金をちょこちょこと借りちゃ、返せと言うともうちょっと、と言って逃げるんですって。もう諦めちゃった人もいるとか。──妻子もあるというんで、私、大いに怒ってみせたんです。友達を騙《だま》してる、って。だから、その女の子たちも、私のことは田代に言わないって約束してくれました」
「いい腕ね。探偵になれるわよ」
「いつも子供と一緒にお芝居やってますからね」
と、知子は楽しげに言った。「──田代ですけど、このところ、賭け事に手を出して、大分損してたみたいなんです」
「じゃ、不思議はないわね、私のところへ来たのも。それをうまく利用して、どうやって印鑑を持ち出したのか、問いつめてやるわ」
「お手伝いしましょうか?」
「ありがとう。でも、今すぐというわけにいかないし。──またお願いするわ」
「いつでも言って下さい」
私は、張り切っている知子を見て微笑んだ。何とも心強い味方である。
「そうそう。杉崎が殺されたのよ」
と私が話をすると、知子はますます目を輝かせて、身を乗り出して来た。
「じゃ、やっぱり女が絡んでるんですね」
「そうね。──杉崎の愛人とかいう女かしら? でも、今、杉崎が殺されたっていうのは、ちょっと妙な気がするわ」
「そうだ。忘れてたわ。田代の方にも、女がいるらしいんです」
「それも聞いて来たの?」
「時々電話がかかるんですって。名前を言わないで、ただ『知り合いの者です』って。──妙でしょ? それに、電話を取ったことのある女の子の話だと、どうも長距離らしいっていうんですよね」
「長距離電話?」
「声の感じが、です。それに、田代が、話してるときに、料金がかさむからとか言ってたそうなんですよ」
さすがに細かい。──まあ、田代に女がいようといまいと、私には関係ないけれど、賭け事をやり、女にまで手を出していては、金がなくなるのも当り前だろう。
「でも、妙なのは、お金に困った田代が、どうして私のところからお金をとろうと考えたか、なの。──ねえ? 普通、あまり付合いもない家からお金を騙し取ろうとする? やっぱり、印鑑を手に入れられるという見通しがあって、計画したんだと思うのね」
「それはそうでしょうね」
「すると……。いくら考えても分らないのよね」
と私は頭をひねった。
「──田代の奥さんにでも会ってみたらどうでしょう?」
「ええ?」
「相手の女のことも分るかもしれませんよ。それに、田代だって、奥さんに知られたら、追い詰められて──」
「ちょっと危険ね。あの手の男は、結構やけになると何をするか……。いいわ。よく考えてみる。田代から電話があるでしょうから、そのときに、また手伝っていただくかもしれないけど」
「ええ。いつでも呼んで下さい。子供たち引き連れて、かけつけますから」
知子は楽しげに言った。