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忙しい花嫁24

时间: 2018-08-19    进入日语论坛
核心提示:最後のジャンプ 「田村さんが死んだ?」 有賀が目を丸《まる》くした。 「ええ」 亜由美は、肯《うなず》いた。「刺《さ》さ
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 最後のジャンプ
 
 「田村さんが死んだ?」
 有賀が目を丸《まる》くした。
 「ええ……」
 亜由美は、肯《うなず》いた。「刺《さ》されたの。淑子さんに」
 田村の死は、まだ公表されていなかった。
 ——次の日の、午後。
 二人は、桜井みどりが殺された、歴史部の部室にいた。ドン・ファンが、床《ゆか》でのんびりと寝《ね》そべっている。
 亜由美が事《じ》情《じよう》を説明すると、
 「あの田村さんが——」
 有賀は呆《ぼう》然《ぜん》とした様子で、首を振《ふ》った。
 「でも、事《じ》件《けん》は終ってないのよ」
 「まだ?」
 「そうよ。だって、桜井さんが殺されたのは、田村さんが犯《はん》人《にん》じゃないのははっきりしてるわ。その間、田村さんはドイツにいたんですもの」
 「こっそり帰ってたとか——」
 「そんなこと簡《かん》単《たん》に調べられちゃうわ。だって、田村さんがかなり衰《すい》弱《じやく》して帰って来たのは事実よ。淑子さんに殺されかけたと見せるために、わざわざ血をつけた上《うわ》衣《ぎ》を捨てておいて、飲まず食わずで日を過《す》ごしたのよ」
 「じゃ、その間、こっちで動いていた奴《やつ》がいるのか」
 「そう。そもそもの計画を立てた人間がね」
 と亜由美は肯《うなず》いた。
 「誰《だれ》なんだ、一体?」
 「考えてみれば、分るはずよ」
 亜由美は、ドン・ファンの頭を撫《な》でた。「桜井さんが、あのとき、ここで待っていることを知って、犯人は私を偽《にせ》電《でん》話《わ》でおびき出したのよ。その間、ほんのわずかの時間しかなかった」
 「そうだね」
 「じゃ、なぜ犯《はん》人《にん》は、桜井さんがここで私を待っていることを知っていたのか?——私は誰《だれ》にも言わなかったし、桜井さんだって、そんなことを人にしゃべるとは思えないわ。そうなると、犯人は、私と桜井さんの話を、あ《ヽ》の《ヽ》場《ヽ》で《ヽ》、聞いていたことになるわ」
 「それじゃ、つまり、犯人は——」
 「あ《ヽ》な《ヽ》た《ヽ》よ《ヽ》、有《ヽ》賀《ヽ》君《ヽ》」
 と、亜由美は言った。
 
 有賀は声を上げて笑《わら》った。
 「おい、びっくりさせるなよ!」
 「本気よ、私」
 「考えてもみろよ! 君が、お母さんが事《じ》故《こ》に遭《あ》ったという電話を聞いたときは、僕は一《いつ》緒《しよ》に講《こう》義《ぎ》に出てたんだぜ」
 「そう。でも私は眠《ヽ》っ《ヽ》て《ヽ》た《ヽ》わ《ヽ》。そして、電話には、直《ちよく》接《せつ》出たわけじゃないのよ。事《じ》務《む》の人から伝言を聞いただけだったわ」
 「しかし——」
 「待って。あなたは、コーヒーを持って、戻《もど》って来た。私と桜井さんは、それまで武居さんの話をしていた。そして、桜井さんは、『あの男には近付かない方がいいわよ』と言ったわ。——私は当然、桜井さんが武居さんのことを言ったんだと思ったわ。でも、実《じつ》際《さい》は、あなたのことを言ってたのよ。ちょうどあなたが戻って来るところだったから、それ以上、彼女は言わなかった。そしてここで私を待っているから、と言ったのよ。あなたは、それを耳にしてしまった……」
 有賀は平然として、話を聞いていた。
 「桜井さんは、ゴシップにかけては、誰よりも詳《くわ》しかったわ。そして、田村さんと、淑子さんの結《けつ》婚《こん》についても、あれこれ訊《き》いて回ったんだわ。その内に、どうも、あの結《けつ》婚《こん》はおかしいと思い始めた。そして陰《かげ》にあなたがいたことも、耳にしていたのね。桜井さんが色々調べ回っていることを、あなたも知っていた。だから、桜井さんが私と会う約束をしているのを聞いて、何とかしなきゃいけない、と思った。——講《こう》義《ぎ》中、私が眠《ねむ》っているのを見て、あなたは教室を出て行き、赤電話で事《じ》務《む》所《しよ》へかけて、急いで戻《もど》って来たのよ。私が目を覚ましたときは、あなたは、ちゃんとそばに座《すわ》っていたというわけね」
 有賀は顎《あご》を撫《な》でながら、
 「しかし、僕《ぼく》は、桜井君を殺せなかったぜ。そうだろう。君と神田君に見られずに殺すことはできない」
 「そこなのよ」
 亜由美は立ち上って窓《まど》を開けた。「——桜井さんは、窓《ヽ》に《ヽ》向《ヽ》か《ヽ》っ《ヽ》て《ヽ》立っていたわ」
 「だから?」
 「そこをよく考えるべきだったのよ。犯《はん》人《にん》は窓《ヽ》か《ヽ》ら《ヽ》来たんだっていうことをね」
 「空中を飛んで?」
 と、有賀は笑《わら》った。
 「屋上からロープを伝ってよ」
 と亜由美は言った。「あなたは、桜井さんを殺す決心をして、ここへ上って来ようとした。ところが、社会科学部のドアが開いていて、目につかずにはここへやって来られない。あなたは一か八かで、山登りの経《けい》験《けん》を生かしてみることにしたのよ。屋上からロープをこの窓のわきに垂《た》らし、ナイフを口にくわえて降《お》りて来る。そして、窓を叩《たた》く。——桜井さんは、何かと思ってやって来て、窓を開け、外を覗《のぞ》く。そこを一《ひと》突《つ》き!——窓は、ガタンと落ちれば、ロックされたような状《じよう》態《たい》になる。後は、そのまま下へ降りて、ロープを下から外す。そんなことはお手のものでしょう」
 「君の想《そう》像《ぞう》力《りよく》には、敬《けい》意《い》を払《はら》うよ」
 と、有賀は肩《かた》をすくめた。
 「もう諦《あきら》めて。屋上にちゃんとロープの跡《あと》も見付かったし、それに、あなたが田村さんをたきつけていたことは、田村さんの恋《こい》人《びと》も証《しよう》言《げん》してるわ」
 有賀はいつものとぼけた表《ひよう》情《じよう》で、
 「やれやれ、君にそこまで信用がないとはなあ」
 と言った。「例のハンバーガーの店へトラックをどうやって突《つ》っ込《こ》ませたのか、君の推《すい》理《り》を聞きたいね」
 「あれは純《じゆん》然《ぜん》たる事《じ》故《こ》だったのよ。ブレーキが完全にかかっていなかったのね。でも、あなたにとっては、幸いな事故だったわ。武居さんが狙《ねら》われているようにも見えるし、自分には絶《ぜつ》対《たい》のアリバイがある」
 「なるほど。それで筋《すじ》は通るわけか」
 「田村さんは死んだけど、あなたは自首してほしいわ」
 「どうして?」
 「友だちだと思うからよ」
 「そいつはどうも」
 と、有賀は窓《まど》辺《べ》に立った。「——警《けい》察《さつ》が待ってるのかい?」
 「この外でね。でも、あなたが進んで警察へ行くのなら、一人で行かせてくれるわ」
 「そのまま逃《に》げたら?」
 「無《む》理《り》よ」
 「でもね、君の言うことには証《しよう》拠《こ》がないぜ」
 「調べれば、いくらでも出て来るわ。あの服を作らせたこともそうよ。あなたの顔を憶《おぼ》えていた店員がいるわ」
 「そうか」
 と、有賀は笑《わら》った。「あんまりやり過《す》ぎるもんじゃないな」
 「有賀君……」
 「田村さんが、財《ざい》産《さん》を継《つ》いで、その上で巧《うま》くいけば増口の後を継いで社長になれるかと思ったんだがな。そうすりゃ、遊んで暮《くら》せる。——僕《ぼく》は楽《たの》しく生きるのが好きだからね」
 「そのために人を殺しても?」
 「一度やりゃ、簡《かん》単《たん》さ」
 「あなたが言ったこと——あの別《べつ》荘《そう》で、淑子さんがあなたの所へやって来たというのは嘘《うそ》ね」
 「うん。逆《ぎやく》なんだ。僕が彼女《かのじよ》の所へ行った」
 「どうして?」
 「もちろん追い返される。でもね、そんなことがありゃ、翌《よく》日《じつ》顔を合わせたくないだろう。だから、僕らが起き出さない内に出かけると思ったんだ。巧《うま》く行ったよ」
 神岡が、淑子の部屋から出て来たのは、次の日のことを指《し》示《じ》していただけなのだろう。
 「それに、君に、彼女が偽《にせ》物《もの》だという印象を植えつけようとも思ってね」
 「あの服は——」
 「まずかったよ。新しい服と取り替《か》えたのはいいけど、前の服を持って遠くまで行くのが大変だと思って、近くへ埋《う》めちゃったんだ。それをそのワン公が見てた。あの林の中を探《さが》しているとき、君は、そのすぐそばにいたんだ。茂《しげ》みで音がしたろ? そいつだったのさ。僕は、誰《だれ》かに殴《なぐ》られたふりをして、そのワン公を追《お》っ払《ぱら》った。しかし、あの邦代って子に見付かるとはね」
 「もう一つ教えて」
 「何だい?」
 「あのシェークスピアの絵葉書は? 何の意味なの?」
 「あれか」
 と有賀は愉《ゆ》快《かい》そうに言った。「田村さんへ言っておいたんだ。何か意味ありげな葉書を寄《よ》こしておいてくれってね。田村さんのアリバイにもなるし、ともかく、彼《かれ》が生きているかどうか分らない、中《ちゆう》途《と》半《はん》端《ぱ》な気分に、淑子さんを置いておく必要があった。
 田村さんが、たまたま〈シェークスピア〉劇《げき》の劇場であの絵葉書を買ったんだよ。しかし、シェークスピアは正体の分らないところのある作家だからね。あれにはふさわしかったかもしれないね」
 有賀は窓《まど》枠《わく》にヒョイと腰《こし》をかけた。
 「どうするの?」
 と亜由美は言った。
 「逮《たい》捕《ほ》されて監《かん》獄《ごく》行きなんていやだね」
 と、有賀は言った。「僕《ぼく》は楽《たの》しく生きる主義だ」
 不意に、有賀の姿《すがた》が消えた。
 「有賀君!」
 亜由美は窓《まど》辺《べ》に駆《か》け寄《よ》った。——有賀が、大の字になって倒《たお》れているのが、見下ろせた。
 「有賀君……」
 クゥーンと、ドン・ファンも窓から首を出して、低く鳴いた。
 ドアが開いて、殿永が入って来た。
 「殿永さん……」
 殿永は窓から下を見て、
 「証《しよう》拠《こ》はほとんどなかったんです。しかし……」
 と、呟《つぶや》くように言った。
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