日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

冒険入りタイム・カプセル01

时间: 2018-08-19    进入日语论坛
核心提示:1 邪《じや》魔《ま》の入ったファーストキス それは正に映画の一場面だった。 穏《おだ》やかな春の夜。鳥の声。広々とした
(单词翻译:双击或拖选)
 1 邪《じや》魔《ま》の入ったファーストキス
 
 
 それは正に映画の一場面だった。
 
 穏《おだ》やかな春の夜。鳥の声。広々とした庭園。その茂《しげ》みの陰《かげ》の、小さな暗がり。
 
 草の上に座り込《こ》んで、羽《は》佐《ざ》間《ま》倫《みち》子《こ》と、そのボーイフレンド、小《こ》池《いけ》朝《あさ》也《や》は、黙《だま》り込んでいた。
 
 黙り込んでいた、といっても、それはほんの数秒間——一分間だっていいが——のことで、それまでは、二人とも、機《き》関《かん》銃《じゆう》顔負けのスピードで、しゃべりまくっていたのである。
 
 そして、何だか知らないけど、話が途《と》切《ぎ》れ、ふと、二人を沈《ちん》黙《もく》が包んだ。
 
 この「ふと」というところが大事なのである。
 
 あんまりわざとらしくてもいけない。といって、話すことがついになくなって、仕方なく黙っちゃった、という感じでも良くないのだ。——やはり、あくまで、沈黙は「ふと」でなきゃいけない。
 
 ついでにもう一つ、「ふと」が来ないと、事はうまく運ばないのだ。つまり、ふと、二人の視線が出会うのである。
 
 まあ、暗がりの所に座ってるんだから、そんなにはっきり相手の目を見つめられるわけがない、とか、色々細かいことはあるが、ともかく、二人は見つめ合ったのである。
 
 ここからキスまでには、理想的には五秒から七秒くらいがいい。短すぎると、「いつしか二人の唇《くちびる》は——」という感じじゃなくなるし、あんまり長いと、
 
 「顔に何かついてるのかな」
 
 という疑いを心に起こさせてしまう。
 
 羽佐間倫子と小池朝也の場合は、二人の顔が接近し始めるのに五・五秒だった。まずは理想的といっていい。
 
 こうなると、二人の顔の間の距《きよ》離《り》は一キロもないのだから(当り前だ)、ほんの二、三秒で二人の顔は衝《しよう》突《とつ》することになる。
 
 ただし、この場合注意しなくてはいけないのは、お互《たが》い、顔を真《まつ》直《す》ぐのまま近づけると、鼻同士がぶつかってしまうことで、やはり、どちらか一方が少し顔を傾《かたむ》ける必要がある。
 
 あんまり傾けても首の筋《すじ》を違《ちが》えるから、ほどほどでいい。
 
 そして、キスするときは、普《ふ》通《つう》、目を閉《と》じている。別に法律で定められているわけじゃないが、大体そうである。
 
 このタイミングがむずかしい。
 
 最初から二人が目を閉じていたらどうなるか。唇と唇がうまく出会わず、唇と鼻、唇とおでこ、といった組合せになって、具合が悪い。
 
 といって、ギリギリまで目を開けていたら、目の前にグッと相手の目が迫《せま》って来て、恐《きよう》怖《ふ》を覚えることになろう。じっと見ていたら寄り目になって、相手が吹《ふ》き出してしまうとも考えられる。
 
 やはり、徐《じよ》々《じよ》に近づくにつれ、少しずつ瞼《まぶた》を降ろして行く、というのが適当で、それなら、無《ぶ》気《き》味《み》でもないし、唇《くちびる》がとんでもない所に着陸する心配もないわけである。
 
 羽佐間倫子と小池朝也の場合は、その点も理想的だった。
 
 二人の顔は適切な角度に傾いて近づき、瞼は小《こ》刻《きざ》みに震《ふる》えつつ閉《と》じられた。この「小刻みに震えつつ」が、情《じよう》緒《ちよ》があっていいところだ。
 
 カメラのシャッターじゃないのだから、ギュッと閉じるのは味も素《そつ》気《け》もない。
 
 そしてもう二人の唇の間は、ほんの二、三センチ。あと一、二秒の内には、羽佐間倫子のファーストキスは達成されるところだった。
 
 が——その瞬《しゆん》間《かん》、二人の頭上で、馬《ば》鹿《か》でかい声がしたのだ。
 
 「倫子様! お電話でございます!」
 
 「ワッ!」
 
 小池朝也はびっくりして飛び上った。
 
 「全く、もう! 頭に来るんだから!」
 
 倫子は、いまいましげに言った。
 
 「な、何だい、今の声? 君のうち、庭にゴジラでも飼《か》ってるの?」
 
 朝也がキョロキョロと辺りを見回しながら言った。
 
 「違うわよ」
 
 倫子は、ヒョイと立ち上ると、キュロットスカートのお尻《しり》を手ではたいた。「呼出し用のスピーカーがこの真上にあるの」
 
 「ああ、びっくりした!」
 
 朝也は、かなりショックだったらしく、胸を押《おさ》えて、目をパチクリさせている。そこへ、
 
 「お嬢《じよう》様《さま》! お電話です!」
 
 と、前にも増して凄《すご》い声。
 
 「今、出るわよ!」
 
 と言い返して、倫子は、庭の遊歩道の傍《そば》に置かれた、ソクラテスの胸像の方へと歩いて行った。
 
 「おい、家へ戻《もど》るんだったら、逆じゃないの?」
 
 と、朝也が声をかけると、倫子は振《ふ》り向いて、笑った。
 
 「ここは私の家よ」
 
 そして、ソクラテスの頭をポンと叩《たた》いた。パカッと、頭が開いて、倫子はその中へ手を入れ、電話の受話器を取り出した。
 
 「はい、倫子です」
 
 ——初めて、この羽佐間家の広大な屋《や》敷《しき》へ招かれて来た朝也は、ただただ、唖《あ》然《ぜん》とするばかりだった。
 
 さて——ここで時間を十五分ほど逆回ししてみよう。場所はもちろん庭園ではない……。
 
 
 
 会議が終ると、誰《だれ》もがホッと息をついた。——いつもの通り、である。
 
 羽佐間グループの四十に上る企《き》業《ぎよう》のトップたちを集めて行うこの会議は、出席者たちの間で、ひそかに、
 
 「羽佐間マラソン」
 
 と、呼ばれていた。
 
 ともかく、開会が午後一時で、閉会は一応五時の予定。
 
 しかし、実際に終るのは、決って夜の九時を過ぎていた。
 
 大体、企業のトップというのは、二十代、三十代の若者ではない。少しくたびれて来た五十代、六十代が中心だ。
 
 その世代にとって、八時間の会議は、一キロのビフテキを無理に食べさせられるようなものだった。
 
 だから、ほとんどのトップたちは、この会議の前日には休みを取って、体調を整えて来ることにしていた。
 
 一番疲《つか》れていない——というより、会議の始まる前より元気そうにすら見えるのは、羽佐間栄《えい》一《いち》郎《ろう》だけだ。
 
 羽佐間栄一郎。——羽佐間グループの頂点に君臨する男である。
 
 四十八歳《さい》の若さ、堂々たる体《たい》躯《く》、ヘリコプターで飛び回る行動力。
 
 日本の経済人としても、異色の存在であった。
 
 「みんなご苦労だった」
 
 と、羽佐間は立ち上って、言った。「来月の会議には、もっと心楽しく席を立つようにしよう」
 
 大会議室から、潮が引くように、人の姿が消え、後には羽佐間栄一郎と、秘書の小《こ》泉《いずみ》光《みつ》江《え》が残った。
 
 「やれやれ……」
 
 羽佐間は腕《うで》を精《せい》一《いつ》杯《ぱい》伸《の》ばして、深《しん》呼《こ》吸《きゆう》をした。「会議ってやつは不健康なもんだな」
 
 小泉光江は肩《かた》をすくめて、
 
 「今度は縄《なわ》とびでもしながらにいたしますか?」
 
 と訊《き》いた。
 
 羽佐間は笑って、
 
 「君は面白い発想をするよ」
 
 「社長ほどでは」
 
 光江は言い返した。
 
 年《ねん》齢《れい》は定かでない。若い、と見られているが、すでに、十年も羽佐間の秘書をつとめていて、その間、一向に老《ふ》けない。
 
 「ロボットじゃないか」
 
 などと噂《うわさ》されたりしていた。
 
 均整の取れた体つきで、いかにもビジネス向きのグレーのスーツ。銀ぶちのメガネ。
 
 美人に違いないのだが、そのメガネを外した顔を見た者はいない、と言われていた。
 
 秘書としての能力は、並《なみ》外《はず》れていた。
 
 羽佐間の、分《ふん》刻《きざ》み、かつ錯《さく》綜《そう》したスケジュールが常に頭に入っていて、間《ま》違《ちが》えたことがない。
 
 博識の人のことを、「ウォーキング・ディクショナリー」というが、それにならえば、さしずめ、小泉光江は、「ウォーキング・コンピューター」というところか。
 
 「お車が玄《げん》関《かん》に参っていると思います」
 
 「うん」
 
 いつもなら、羽佐間は、そのままさっさと会議室を出て行く。しかし、今日は、違っていた。
 
 また、元の椅《い》子《す》に腰《こし》をおろしたのである。
 
 「——コーヒーを持って来てくれ」
 
 「はい」
 
 意外に思っても、口に出さないのが、良い秘書である。
 
 光江は、机の上の電話へ手をのばした。
 
 「二つだ」
 
 と、羽佐間は付け加えた。
 
 「——第一会議室にコーヒーを二つ」
 
 それだけ言って、光江は電話を切った。
 
 羽佐間が愉《ゆ》快《かい》そうに、
 
 「もうちょっと愛想のある頼《たの》み方はできんのか? 『お願いね』とか、『悪いけど』とか——」
 
 「仕事以外のことでなら、ともかく、仕事でむだ口はききたくありません」
 
 と、光江は言って、「——どなたかおいでになるんでしょう?」
 
 と訊《き》いた。
 
 「誰《だれ》か来る、と言ったか?」
 
 「ですが、コーヒーを二つ——」
 
 「君の分だ」
 
 今度は光江もちょっとびっくりした様子だった。羽佐間は、自分のファイルを閉じて、
 
 「これを後でキャビネに戻しておいてくれ」
 
 と、光江に渡《わた》した。
 
 「はい」
 
 光江はファイルを受け取って、「社長」
 
 「何だ?」
 
 「コーヒーを取っていただいたのはありがたいんですが、経費にしておいてよろしいんでしょうか?」
 
 「ああ、構わん」
 
 羽佐間が、ちょっとびっくりしたように、「いくらでもあるまいが」
 
 「ですが、一円でも不正は不正です」
 
 羽佐間は声を上げて笑った。——光江は戸《と》惑《まど》いを見せた。
 
 十年間、羽佐間の秘書をしていて、こんな笑い声を聞いたことがなかったのだ。
 
 ドアが開いて、コーヒーが運ばれて来た。「ああ、ここに置いてくれ。ご苦労さん」
 
 運んで来た女子社員へ、羽佐間は言った。「それから、あと十五分、この会議室に人を入れないでくれ。重要な打ち合せ中だ」
 
 「かしこまりました」
 
 羽佐間は、光江と二人になると、
 
 「座れ」
 
 と言った。
 
 「はい」
 
 「——そんな遠くじゃ顔も見えん。この隣《となり》の椅《い》子《す》に座れ」
 
 光江は言われた通りにした。
 
 「さあ、コーヒーが冷《さ》めない内に飲もう」
 
 と、羽佐間はカップを引き寄せた。「ミルクと砂糖は入れるのか?」
 
 「ミルクだけです」
 
 「そうか」
 
 羽佐間は、光江のカップにミルクを入れてやった。「やっと君のことが一つだけ分ったぞ」
 
 「社長……」
 
 これはどうやら、ただごとではないと察したのか、光江は椅《い》子《す》に座り直した。
 
 「来週の予定を、全部、キャンセルしておいてくれ」
 
 「——はい」
 
 光江は肯《うなず》いた。
 
 「休みを取る」
 
 これこそ、決め手のパンチだった!
 
 光江は唖《あ》然《ぜん》とした。——十年間、羽佐間は休むことを知らない男だったのだ。
 
 ただ、七年前、妻を亡くしたときだけ、一日、会社を休んだ。その他《ほか》は、日曜日以外、休まない。
 
 いや、日曜日だって、休んでいるのは半分ぐらいだったろう。
 
 その羽佐間が、「休みを取る!」
 
 「来週、ずっとでしょうか?」
 
 「そうだ」
 
 「かしこまりました。連《れん》絡《らく》しておきます」
 
 やっと、光江の表情が、元に戻《もど》った。
 
 「君も、この十年、よく働いたな」
 
 「恐《おそ》れ入ります」
 
 「一《いつ》緒《しよ》に休みを取ったらどうだ」
 
 光江は、少し表情をこわばらせた。
 
 「社長」
 
 「何だ?」
 
 「それは、クビだ、ということでしょうか?」
 
 「君は面白い辞書を使ってるらしいな。休みイコール、クビなのか」
 
 「ですが——」
 
 「しかし、この場合は当っている」
 
 羽佐間は穏やかに言った。
 
 「——分りました」
 
 光江は、ゆっくりとコーヒーを飲んだ。「長い間、お世話になりまして——」
 
 「これからの方が長い」
 
 「は?」
 
 「君は私と結《けつ》婚《こん》するんだ」
 
 光江は、二、三度瞬《まばた》きをした。
 
 「——ご冗《じよう》談《だん》を」
 
 「真《しん》剣《けん》だ」
 
 「ですが——」
 
 「いやか?」
 
 「社長——」
 
 「今は一人の男だ。社長は、よせ」
 
 羽佐間は真剣な表情だった。
 
 「はい」
 
 微《び》妙《みよう》に違う『はい』だった。
 
 「メガネを取ってみてくれんか」
 
 光江は、じっと羽佐間を見ていたが、やがて、ゆっくりと手を上げて、メガネを外した。
 
 羽佐間は、ホッとしたように微《ほほ》笑《え》んだ。
 
 「君が承知してくれて、嬉《うれ》しい」
 
 「社長——」
 
 「社長はよせ」
 
 「申し訳ありません。でも、私は——」
 
 「君がメガネを取った! 夫以外の人間に、そんなことをするか?」
 
 光江は、少し顔を伏《ふ》せ加減にして、
 
 「いいえ」
 
 と、小さな声で言った。「ですが——私のことを、何もご存知ありません」
 
 「女だ、ってことさえ知ってりゃ充《じゆう》分《ぶん》だ」
 
 羽佐間はそう言って、「女なんだろうな?」
 
 と訊《き》いた。
 
 光江が笑い出した。羽佐間も笑った。
 
 そして笑いが途《と》切《ぎ》れたとき、ここにも、あの「ふと」が訪れたのである。
 
 この「ふと」の後、二人の唇《くちびる》は近寄った。そして、ここには何の邪魔も入らなかったのである……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%