日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

冒険入りタイム・カプセル03

时间: 2018-08-19    进入日语论坛
核心提示:3 気絶した娘《むすめ》 「まあ、人殺し?」 と、さすがに冷静さで知られる小泉光江も、ちょっとびっくりした様子で目を見開
(单词翻译:双击或拖选)
3 気絶した娘《むすめ》
 
 
 「まあ、人殺し?」
 
 と、さすがに冷静さで知られる小泉光江も、ちょっとびっくりした様子で目を見開いた。
 
 「そうなの! 私たちの見ている前で倒れたのよ」
 
 倫子は、未《いま》だ興奮さめやらぬ面持ち。
 
 そりゃそうだろう。人が死ぬ——それも事故とか、病気じゃなくて、「殺される」ところを目の前で見るなんて、めったにあることじゃない。
 
 もっとも、倫子は、怯《おび》えてはいなかった。むしろ喜んでいた——というと聞こえが悪いが、死者へ、適度な哀《あい》悼《とう》の意を表しつつ、
 
 「凄《すご》い話のタネができた=」
 
 と、思っていたのである。
 
 好奇心旺《おう》盛《せい》な世代の中でも、特にその傾《けい》向《こう》の強い倫子としては、無理もない反《はん》応《のう》であった。
 
 「で、社長は?」
 
 と、光江が秘書の顔に戻《もど》る。
 
 「警察の人に話をしてるわ。やっぱり現場に居合わせたわけだものね」
 
 「じゃ、一時半の来客には間に合わないかもしれませんね」
 
 光江は、ちょっと心配そうに、机の上のデジタル時計を見た。
 
 「ねえ、光江さん」
 
 「何でしょう?」
 
 「もう少し、詳《くわ》しい話を聞きたくない?」
 
 光江は、ちょっと微《ほほ》笑《え》んで、
 
 「仕事時間外に、うかがいます」
 
 倫子はため息をついた。
 
 「そうかなあ……。やっぱり大切なことだと思うんだけど。——その殺された男、お父さんの知り合いだったらしいし……。でも、まあいいけど」
 
 光江が、さすがに眉《まゆ》を寄せて、
 
 「お嬢様、今、何ておっしゃいました?」
 
 「いいの。時間外にお話しするから」
 
 光江は、ヒョイとメガネを外して、
 
 「時間外です」
 
 と言った。
 
 倫子は吹き出してしまった。
 
 「お嬢様、人が死んだというのに、不《ふ》謹《きん》慎《しん》ですよ」
 
 「ごめん。だって……」
 
 と、倫子は笑いを抑《おさ》えながら、「——光江さんって、もしかして、羽佐間家の家風にぴったりの人かもしれないわ」
 
 「どうしてです」
 
 「変り者だ、ってこと」
 
 「そんなことより、さっきのお話です」
 
 倫子は、死んだ男が、倒れる前に、
 
 「羽佐間!——羽佐間か!」
 
 と言ったことを話してやった。
 
 「社長のお知り合い……」
 
 「でも、およそ、そんな風に見えなかったわ。見すぼらしい格《かつ》好《こう》で。きっと、倒《とう》産《さん》した会社の社長さんだったのかもね」
 
 「社長は何かおっしゃっていまして?」
 
 「いいえ。だって、大変な騒ぎで、警官が駆《か》けつけて……。のんびり話なんかしてる雰《ふん》囲《い》気《き》じゃなかったのよ」
 
 「そうですか……」
 
 「きっと、戻《もど》ったら話してくれるでしょ」
 
 と言ったのが合図だったかのように、ドアが開いて、羽佐間が入って来た。
 
 「間に合ったな」
 
 と、時計を見る。
 
 「はい」
 
 光江は、もうメガネをかけていた。
 
 「お父さん、どうだったの?」
 
 と、倫子が父の腕をつかんで訊《き》く。
 
 「うん……。刑《けい》事《じ》に状《じよう》況《きよう》を説明してやったよ」
 
 「そんなの分ってるわよ! あの殺された人のことよ」
 
 羽佐間は困ったように耳をかいていたが、やがてヒョイと肩をすくめると、
 
 「中へ入ろう」
 
 と言った。
 
 社長室へ入ると、羽佐間は、窓辺に歩み寄って、外を眺《なが》めた。
 
 「——知ってる人だったの?」
 
 と、倫子が訊くと、少し間を置いて、羽佐間が肯《うなず》いた。
 
 「昔だ。ずっと昔のことだ……」
 
 「でも、どうして……殺されたのかしら」
 
 「分らん」
 
 羽佐間は首を振った。「誰《だれ》かに鋭《するど》い刃《は》物《もの》で刺《さ》されたらしい。犯人は分らない。——あのとき、店の入口はたてこんでいたからな」
 
 「じゃ、あの中に犯人が?」
 
 「いや……たぶん犯人はあいつの後を尾《つ》けて来ていたんじゃないかな。そして、彼が私に気付いた。——店の中へ入ろうとして、空き待ちの列へ割り込む形になった。もみ合っているとき、素早く刺したんだろう」
 
 「そうか。きっとそうね」
 
 倫子は肯《うなず》いて、「その人、お父さんに会いに来たの?」
 
 「分らんな。たまたま通りかかって、私を見かけたのかもしれん」
 
 「でも、それはおかしいわ。犯人は、その人がお父さんに会うのを止《と》めようとして、刺したんじゃないの?」
 
 羽佐間は、ちょっと苦笑して、倫子を眺《なが》めた。
 
 「お前は、そういうことになると、よく頭が回るな」
 
 「お父さんの娘だもん」
 
 と、倫子はやり返した。「——死んだ人、何ていうの?」
 
 「石《いし》山《やま》、という男だ」
 
 「どういう知り合い?」
 
 羽佐間は、ちょっと間を置いてから、
 
 「三十年前、タイム・カプセルに思い出の品を入れた仲間だよ」
 
 と言った。
 
 「社長」
 
 インタホンから、光江の声がした。「M工業の大《おお》田《た》様がおみえです」
 
 
 
 「警官がいるから、何かと思ったよ」
 
 と、小池朝也が言った。
 
 「正にあの場所で刺されたのよ」
 
 と、倫子が得意気に言う。
 
 正確には、倫子が得意に思う理由はないのだが、そこはただ、「知っている」ことが、特権の一つになる、若者の発想というべきだった。
 
 二人は、あのラーメン屋を、通路を挟んで斜《なな》め前に見る喫《きつ》茶《さ》店《てん》に入っていた。
 
 倫子が春休みなので、当然朝也の方も春休みで、時間を持て余していた。倫子から、電話一本かかると、いとも気軽にやって来たというわけである。
 
 「君が食い逃《に》げでもして、警官が来てるのかと思った」
 
 「失礼ね!」
 
 倫子は朝也の足をテーブルの下でけとばした。朝也が悲鳴を上げる。
 
 「あ、ごめんなさい」
 
 と、女の子の声がした。
 
 「え?」
 
 朝也と倫子が顔を上げると、年齢はたぶん二人と同じくらいの、何だか垢《あか》抜《ぬ》けしない少女が立っていて、
 
 「すみません、人を捜《さが》してたんで、つい——」
 
 と頭を下げる。「そんなに痛かったですか?」
 
 どうやら、これは、朝也の悲鳴を、自分が足を踏《ふ》みつけたせいだと思っているらしい。
 
 「いいえ、大したことないわよ」
 
 と、倫子が手を振って、「気にしないで」
 
 「すみません、本当に」
 
 と、なおもしつこく頭を下げる。
 
 何だか見すぼらしい身なりの少女である。セーターは、肘《ひじ》が抜けそうだし、スカートもしわくちゃ。靴《くつ》に至っては、かかとがすり減《へ》って、スリッパみたいになってしまっている。
 
 しかも、髪など、ろくに手入れもしていないのだろう、いっそうやつれた印象を与《あた》えていた。
 
 「すみません、どうも——」
 
 と謝《あやま》りながら、二人のテーブルを離《はな》れた。
 
 そして、カウンターの方へ行くと、
 
 「あの、人を呼び出してもらえるんでしょうか?」
 
 と、レジの娘に訊《き》く。
 
 「店の中なら、自分で捜《さが》してよ」
 
 と、ふてくされた顔のレジ係は面《めん》倒《どう》くさそうに言った。
 
 「いいえ、この地下全体の呼び出しなんですけど」
 
 少女の方は、よほど気が気でない様子。
 
 「そんなの分んないわね。管理室にでも訊いてよ」
 
 「それ——どこでしょうか?」
 
 「捜したら? 大して広いわけじゃないんだから」
 
 ——聞いていた倫子が頭へ来た。
 
 「ちょっと、あんた!」
 
 と、レジへツカツカと歩み寄ると、キッと係の娘をにらみつけた。
 
 「な、何よ、あんた」
 
 「客がものを訊《たず》ねてるときに、その態度は何よ! 給料もらってるなら、それだけのことしなさいよ!」
 
 倫子の剣《けん》幕《まく》に相手は恐れをなしたようだったが、少女の方は、オロオロするばかりで、
 
 「あの——いいんです、私——自分で捜《さが》しますから」
 
 と、ボソボソ呟《つぶや》くように言った。
 
 「私、ついてってあげる」
 
 と、倫子は少女の腕を取って、「小池君! 払《はら》っといて。——さ、こんな店、出よう」
 
 と、通路へ出たものの、倫子とて、どっちへ行けばいいのやら分らない。
 
 「訊《き》いて来てあげるわ。待ってて」
 
 と、少女を残し、隣のソバ屋へ入って行った。
 
 「すみません。あの、ちょっとうかがいますが——」
 
 と、レジのおばさんへ声をかけた。
 
 そこへ、
 
 「おい、倫子!」
 
 と、朝也の声が追いかけて来た。「大変だ!」
 
 振り向いて、倫子は目を丸くした。あの少女が、ぐったりと床に倒れていたのである。
 
 
 
 「——お腹《なか》、空《す》いてたのね」
 
 と、倫子は言った。
 
 しかし、これは言うまでもないセリフであった。少女の前には、チャーハンの皿《さら》二枚とラーメンのカップが二つ、空になって、重ねられていたのである。
 
 もう一枚の皿は、ギョーザだった。
 
 「どうも、ご心配かけて済みません」
 
 少女は頭を下げた。
 
 ここは倫子の父の会社、その応接室の一つである。
 
 倒れた少女を、倫子と朝也が二人してかつぎ込《こ》み、医者を呼んだら、
 
 「こりゃ、腹が減って目を回したんだな」
 
 と言われた。
 
 そこで、出前を頼んだのだが……。
 
 昼飯を抜《ぬ》いて来たという朝也の分も一緒に取ったのに、少女は全部平らげてしまった。朝也も、空腹なのを忘れて呆《ぼう》然《ぜん》としている。
 
 「いいのよ、ここ、父の会社だから、経費で落としちゃうわ」
 
 と、倫子は言った。「一体、何日食べてなかったの?」
 
 「丸三日です」
 
 朝也が目を丸くして、
 
 「俺《おれ》なら死んでる」
 
 と言った。
 
 「ねえ」
 
 と、倫子は身を乗り出して、「誰《だれ》かを捜《さが》してたんじゃないの?」
 
 「あ! いけない!」
 
 少女は口に手を当てた。「食べるのに夢中で……。父と待ち合わせてたんです。あの地下街で。でも、いつまでたっても、やってこないので、気になって」
 
 「そうだったの。じゃ、もう一度行ってみる?」
 
 「ええ。私、もう大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》ですから。本当にすみませんでした」
 
 と、少女が立ち上る。
 
 「いいわよ。一緒に行ってあげる」
 
 倫子たちは、少女と一緒に廊《ろう》下《か》へ出た。「——私、羽佐間倫子、こっちは小池朝也君よ」
 
 「どうも。私、石山秀《ひで》代《よ》です」
 
 と少女は言った。「——羽佐間さん、ですか?」
 
 「石山さん?」
 
 二人は顔を見合わせた。——石山といえば、確か、さっき、自分の目の前で殺された……。でも、まさか……。
 
 「羽佐間さんって、父がよく知ってる方にいらっしゃるんですけど——でも——」
 
 石山秀代は言いかけて、ためらった。
 
 「石山さん……。じゃ、もしかして、あなたのお父さん、私の父の所へ来るつもりだったの?」
 
 「そうだと思います、はっきり聞いてはいないんですけど」
 
 「あのね——」
 
 どう話したものか、倫子が困っていると、
 
 「おい、どうした」
 
 と、羽佐間がやって来た。「どこへ行ったかと思ったぞ」
 
 「お父さん。あの——こちらは——」
 
 「羽佐間さんですか」
 
 と、石山秀代は、ホッとした表情になった。「石山秀代といいます。父をご存知だと思いますが」
 
 羽佐間は、ちょっと目を見開いて、秀代を見ていたが、すぐに状《じよう》況《きよう》を察したようだった。
 
 「石山君の娘さんか!」
 
 「あの、父がお邪魔していませんでしょうか?」
 
 羽佐間は、ちょっと考えてから、
 
 「こちらへ来なさい。話したいことがある」
 
 と、秀代の肩に手をかけ、応接室の方へと連れて行った。
 
 倫子と朝也は顔を見合わせた。
 
 「ああいうことって、言いにくいな」
 
 と、朝也が言った。
 
 「うん……」
 
 こういうことは、やはり父のような、経験をつんだ大人にしかできないんだ、と倫子は思った。
 
 足音がして、振り向くと、光江がやって来るところだった。
 
 「お嬢様、社長、こちらへみえませんでした?」
 
 「応接室にいるわよ」
 
 「まあ、お客様ですか」
 
 「いえ、それがね——」
 
 と、倫子が説明しかけると、応接室のドアが開いて、羽佐間が飛び出して来た。
 
 「おい! 医者だ! 気を失っちまった」
 
 やっぱり、お父さんでもだめなことはだめなんだ、と倫子は思った……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%