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迷子の花嫁08

时间: 2018-08-27    进入日语论坛
核心提示:7 殴られて「はあ、確かに」 と、そのフロントの係は言った。「『キーを忘れて、部屋へ入れなくなっちゃって』とおっしゃった
(单词翻译:双击或拖选)
 7 殴られて
 
「はあ、確かに」
 と、そのフロントの係は言った。「『キーを忘れて、部屋へ入れなくなっちゃって』とおっしゃったものですから」
「この女ですか」
 と、殿永が写真を見せる。
「はあ……。大分、服装とかで、印象が違いますが。たぶん……」
「それで、マスターキーで開けてやったわけですな」
「はあ。そういうお客様は珍しくございません。特にハネムーナーの方には、よくございますので」
「分りました。どうも」
 殿永は、事件のあったセミスイートルームを見回して、「やれやれ。我々が思い付かなきゃいけないことでしたな」
 と、首を振った。
「私、よくやるんです。自動ロックなのに、キーを中へ忘れて出ちゃうこと。で、もしかしたら、と思って」
 亜由美にしては控え目な自慢の仕方であった。
「これで、小田久仁子がどうやってここへ入ったかは分ったわけだ」
「久井さんが入れたんじゃないってことですね。そうなると、犯人は久井さんじゃないかも」
「その可能性が出て来ますね。誰にせよ、小田久仁子が開けてやれば、中へ入れたわけだ」
「小夜子さんの置手紙とかも、小田久仁子が捨てちゃったんじゃないですか」
「おそらくね。——久井は初め、小夜子さんがいないというだけで、びっくりして手紙なんか目に留らなかったのかもしれない」
「だけど」
 と、聡子が言った。「どうして二人がこのホテルにいるって分ったわけ?」
「式場のK会館から、後を尾《つ》けるのは、むずかしくない。ルームナンバーは電話でもかければ、分りますからね」
「何だか、罠《わな》って気がしません?」
 亜由美の言葉に、殿永は顎《あご》をなでながら、
「たぶんね。——しかし、むしろ今は久井が犯人らしいということにしておいた方がいいでしょう」
「犯人が油断しますね」
「そう……。しかし、分らないのは、なぜ小田久仁子を殺したのか、ということです。久井に殺人容疑をかけて、誰が得をするのか……」
 亜由美も、殿永と一緒に、考え込んでしまった。
 
 マンションの鍵《かぎ》を開けると、大倉有紀は中へ入った。
 めったに使わない部屋なので、何となく空気が良くない。明りを一杯につけて、あちこちの換気扇を全部回す。
 大分、気分的に違って来る。
「——もったいない話だわ」
 と、有紀は呟《つぶや》いた。
 ここも父、内山広三郎の持物である。
 以前はちょくちょく女を住まわせていたりしたものだ。——内山広三郎は、妻を亡くして、もう十年以上たつから、女がいても、別にそれで家の中がもめるということはなかった。
 もちろん、有紀としては、父があちこちの女に手を出すのを、黙って見ている他なかったわけだが、やはりあまり気持のいいものではなかった。
 母の生前から、父に女がいなかったわけでもないし、それは当然、息子の秀輝や、娘の有紀にも分っていて、少なからず人生観に影響を与えただろう。
 有紀は、あんな風な夫婦にだけはなりたくない、と娘心に誓って、誠実そうな大倉と結婚した。
 大倉は確かに真面目な男で、少々固すぎるのが欠点というくらいだったが、そこが有紀には魅力だったのである。
 有紀の方は、大学生のころ結構遊び回っていて——しかし、男との間では決して深い仲にならなかった。両親を見ていて、潔癖にならざるを得なかったのだろう。
 有紀は、夫を持って、初めて男を知ったのだった。——大倉のほうはちょっと意外だったようだ。しかし、二人の間は、結構うまく行っていた。
 だが——大倉は変ってしまった。
 事業に失敗して、一旦|挫折《ざせつ》してしまうと、プライドが崩れてしまうのも、早かったのだ。やけ[#「やけ」に傍点]になった夫は、有紀を失望させた。
 打たれても、二人で力を合せれば立ち上れる。
 有紀はそう信じていたし、夫にそう求められたら、どんな苦労でもするつもりだった。それなのに……。
 大倉は、妻の実家の援助で養ってもらうことを、受け入れ、そして今はそれに慣れてしまった……。
 有紀は、ソファに座って、息をついた。
 やり直せないだろうか、もう一度?
 ——あの日、前田小夜子という娘を見ていて、有紀は複雑な気持だった。
 自分と比べて、何という違い。結婚直前に、「遊びおさめ」などと言って、見も知らぬ男と寝てしまう。
 呆《あき》れると同時に、こんな子が、何くわぬ顔で、「初々しい新妻」を演じるのかと思うと腹も立った。
 ただ、あの子の場合、酔った勢いのことで、後では青くなって悔んでいたのが救いではあったが……。
 玄関のドアをノックする音がした。
 出て行って開けると、秘書の野口が入って来る。
「どうも……」
 と、野口は上って、「色々厄介なことになってるようですね」
「私は知らないわ」
 と、有紀は、少し突き放すように言って、居間へ戻った。「何の用で呼び出したの、野口さん?」
「そりゃ決ってますよ」
 と、野口は、有紀に身を寄せて座ると、肩に手を回した。
「やめて。——もうあれきり、と言ったでしょ」
 と、有紀は逃れようとした。
「言葉通りに受け取る気はありません」
「本当に——いやなの。やめて」
 有紀は身をよじった。野口が、有紀をソファの上に押し倒す。
「奥さん——」
「お願い……。私、そんな気になれないのよ!」
 二人がもみ合っていると、
「いい眺めだ」
 と、声がした。
「あなた」
 有紀がハッと起き上る。
「遠慮するなよ。せっかく盛り上ったところだ」
 と、大倉は笑った。
「いや、どうも……」
 と、野口はネクタイの曲りを直して、「何かご用で——」
「そっちと同じさ」
「と言いますと?」
「空いたマンションを利用する。ホテル代の節約にもなるしね」
 大倉は、後ろを向いて、「入れよ。——大丈夫さ」
 姿を見せたのは、結城美沙子だった。
「あ。あんた——」
 と、野口が目を丸くする。
「百万円でけり[#「けり」に傍点]つけたつもり? 冗談じゃないわ」
 と、美沙子は野口に向って舌を出してやった。
「あなた」
 有紀は固い表情で立ち上って、「どういうことなの?」
「お前と同じさ。ただそっちが先口[#「先口」に傍点]だった、ってだけだ。仕方ない。おい、どこかよそへ行こう」
 大倉が美沙子の腕をとる。
「——待って」
 と、有紀は呼び止めた。「ここを使っていいわよ。私、もう出るところだったの」
「そうか、悪いな」
「いいえ。ごゆっくり」
 有紀は走るように出て行った。野口が、あわてて後を追う。
「——いいの」
 と、美沙子が訊《き》いた。
「ああ、いいとも。どうだ、こんなマンション、むだに遊ばせてるんだぜ。もったいない話だろ」
「本当ね」
 と、美沙子は、マンションの中を一通り見て回ると、「——すてきだわ」
「どうだ。シャワー浴びたら? さっぱりしてからのほうが——」
「私……帰る」
「え?」
「帰るわ」
「せっかく来たのに?」
「奥さんに悪くて」
 と、美沙子は言った。「奥さん、あんたのこと、好きなのよ。顔見りゃ分る。帰ってあげなさい」
 大倉は、ソファに腰をおろすと、
「意外に真面目なんだな」
「あんたもよ。奥さんのこと、好きなくせして。別に私なんか好きでもないくせに。——ワルぶってもだめよ。見りゃ分る」
 美沙子の言葉に、大倉はちょっと笑った。
「そうかもしれないな……。君は——しかし、百万の手切れ金で満足してるのか?」
「百万が一万だって、働いて手にしたお金じゃないでしょ。ほしいわけじゃないの。くれるもんは断らないけど、こっちからもっとよこせなんて、いやじゃない。そりゃ、こっちが働けない体ならともかく、OL勤めなら、いつでもできるんだから」
 美沙子はそう言って、「——どうする? 私、帰るけど」
 大倉は、それには答えず、
「いや、君を見くびっていたようだ」
「人に借りを作るのがいやなの。それだけのことよ」
 と、美沙子は笑った。
「じゃ、こうしよう」
 大倉は立ち上って、「晩飯をおごらせてくれ。誘ったほうのプライドってもんがある」
「OK。じゃ、おごらせてやる」
 二人は、一緒に笑うと、マンションを出た。
 大倉は、不思議にさっぱりした気持になっていた。——もうずいぶん長いこと、こんな気分になったことがないような気がした……。
 
「ワン」
 と、ドン・ファンが亜由美を出迎えて鳴いた。
「あんた、何してんの?」
 と、亜由美は言って、「一人?——あ、一匹[#「一匹」に傍点]か。小夜子さんは?」
「ワン」
 と、何やら不服そうである。
「何よ? お腹空いたの? 台所に何かあるかな……」
 と、上って、台所へ行こうとすると、
「ワン!」
 と、ドン・ファンが吠《ほ》える。
「何よ、うるさいわね」
 と、振り向いたとたん——。
 ゴン、と何かで頭を殴られ、亜由美は気を失ってしまったのだった……。
 ——気が付いたときは、聡子と殿永が心配そうに、覗《のぞ》き込んでいて、
「大丈夫?」
 と、聡子が訊いた。「私のこと、見えてる?」
「気分はどうです?」
 と、殿永が言った。
「ワルツを踊る気分じゃないですね」
 と、亜由美は言って、「——二人がいるんじゃ、ここは天国じゃなさそうね」
「嫌味言ってる元気ありゃ、大丈夫」
「いてて……」
 と、頭をさすって、「コブができてる……。ああ、ひどい目にあった」
「しかし、良かった。神田さんから連絡をもらって、ゾッとしましたよ」
「心配して下さった割にゃ、救急車も呼んでないんですね」
 亜由美は家の居間でソファに横たわっていたのである。
「まあ……一応、目を覚まして、本人に訊いてから、と思ってね」
 と、聡子が言った。
「生きてますか、って?」
 亜由美は、下に控えているドン・ファンに目を向けると、「この頼りない用心棒! 小夜子さんのときは、犯人に飛びかかって助けたくせして!」
 ドン・ファンは、聞こえないふりをしてそっぽを向いた……。
「——しかし、小夜子さんの姿が見えませんね」
 と、殿永が言った。「皆さんお出かけだったようだ」
「そう。私がたまたまやって来なかったら、亜由美、今でも廊下で寝てたわよ」
「風邪ひくぐらいよ、せいぜい」
 亜由美は頭を振って「殴られたせいか、ひらめいちゃった」
「何が?」
「どうして小田久仁子が殺されたか。——久井隆を犯人と思わせて、小夜子さんが『自殺』してもおかしくない状況を作ろうとしてたのよ、きっと」
「なるほど」
 殿永は肯《うなず》いて、「すると、誰かが、小夜子さんを殺して自殺に見せかけようとした、と」
「で、ここへ来てみたけど、小夜子さんを殺す前に、私が帰って来ちゃった、と。——で、私をのして……」
「ワン」
 ドン・ファンが抗議するように鳴いた。
「そうか。いくらあんたでも、そうなったら黙ってないね。——じゃ、きっと小夜子さん、自分で出かけちゃったんだわ」
「出かけた?」
「久井さんの無実を信じれば、あれが何かの罠《わな》だってことになる。やっぱり、自分が見た、『内山広三郎の死』と係わりがあるに違いないと……」
「じゃあ——」
「たぶん……内山広三郎の家へ行ったんじゃないかしら」
 殿永は肯いて、
「その推理は正しいかもしれませんな。しかし、勝手にこっちも内山家へ入りこむわけにはいかんし」
「入れるのもいますわ」
 と言って、亜由美はドン・ファンのほうをジロッと見たのだった……。
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