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死にそこなった花嫁08

时间: 2018-08-27    进入日语论坛
核心提示:7 追跡行 夢を見ていた。 ドン・ファンが、若い女の子を追いかけ回している。そして、いくら亜由美が、「やめなさい!」 と
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 7 追跡行
 
 夢を見ていた。
 ドン・ファンが、若い女の子を追いかけ回している。そして、いくら亜由美が、
「やめなさい!」
 と言っても、ちっとも聞こうとしないのである。
 その内、ドン・ファンは一人の女の子に飛びついて、押し倒した。そして——。
 突然、その女の子が亜由美の前に立っていた。——聡子だった。
「聡子。ごめんね、ドン・ファンが何か変なことしなかった?」
「ね、亜由美。私、結婚することにしたの」
 と、聡子が頬《ほお》を染めて言った。
「結婚?——誰と?」
「もちろんドン・ファンよ」
 
 見れば、聡子はいつの間にかウェディングドレスを着ており、ドン・ファンがそのそばに、蝶ネクタイをして、すました顔をしているのだった。
「聡子……。結婚するって……。ドン・ファンは犬よ!」
「あら、いいじゃない。愛し合ってれば。ねえ、ドン・ファン?」
「クゥーン……」
 ドン・ファンが甘えた声を出して、聡子にすり寄っていく。——亜由美は絶望して目をつぶった。
「——君。——君」
 何よ、うるさいわね。こっちは頭に来てんのよ!
「大丈夫か? 僕のことが分るかい?」
 え?
 亜由美は、目を開けた。——妙な気分である。眠っているのと起きているのの、ちょうど中間とでもいうか、フワフワと漂っているような気分。
 男の顔が見えた。
「——あんた!」
 と、亜由美は、吉沢という医師をにらみつけ、「よくも騙してくれたわね!」
「しっ。大きな声を出さないで」
 と、吉沢はあわてて言った。「その元気なら大丈夫だ」
「ちっとも大丈夫じゃないわ」
 確かに、亜由美は病室へ再び閉じ込められただけでなく、拘束衣という奴を着せられてしまったのである。——手も足も動かせない。何とも惨めな格好だった。
 しかも、あの看護人——大下と名のったが——が、注射を射《う》って行ったので、亜由美は、半分眠っているような状態になっているのである。
「今、これを脱がしてあげる」
 吉沢が拘束衣を脱がす。「——さあ、これでいい」
 亜由美はホッと息をついた。自由って、すばらしい!
「この注射をしよう」
 と、吉沢が白衣のポケットから金属のケースを取り出した。
「何? 変なことするんじゃないの?」
「そんなつもりなら、それを脱がしたりしないさ。そうだろう?」
「怪しいもんね……。ま、いいわ」
 どうせ、何をされても逆らえないのだ。
 腕にチクリと痛みがあって、ちょっと顔をしかめる。
「下手くそ!」
「——我慢しな。薬の効果が、これで消えるはずだ」
 と、吉沢は言った。「——君の服、これだろう?」
 と、包みを出して、広げる。
「そう! 良かった。これじゃ情なくて」
 確かに、次第に頭がすっきりしてくる。
「どうしてこんなことしてくれるの?」
 と、亜由美は言った。
「君が言ったことさ。丸山徹男。ドン・ファン。——どうやら、君の言うこともでたらめでもなさそうだと思ってね」
「当然でしょ! 私は、嘘《うそ》なんかつかないわ。何しろキリストの生れ変りって言われてるのよ」
 吉沢は笑い出した。
「いや、君は面白い子だ」
「服を着るわ。外に出てて」
「はいはい」
 亜由美は、吉沢が出て行くと、急いで自分の服を着た。靴はなくて、仕方なくここのスリッパのまま。
 廊下へ出ると、
「こっちだ」
 と、吉沢が促す。「——この時間は、当直が入口の近くにいるだけさ。そう心配しなくてもいい」
「丸山徹男のことを?」
「いや、全く知らない」
 と、吉沢は言った。「ただね、院長の沼田先生が、個人的に診ている患者がいるんだ。これは誰も手が出せない。どうも、以前からおかしいと思ってた。もしかすると、それが丸山という男なのかもしれないね」
「その患者はどこにいるの?」
「院長の山荘さ」
「山荘?」
「そう。わざわざ人をつけてね。だから、よほど因縁のある患者なんだな、とは思っていたんだ」
 吉沢は足を止めた。二人は窓の所へ来ていた。外は暗い。夜になっているのだ。
「院長の車だ」
 と、吉沢が言った。
 亜由美が窓から覗《のぞ》くと、大きなベンツが、ライトを点《つ》けて、病院の門から出て行くところだった。
「これから帰るらしい。——君、どうする? 家へ送ってもいいけど」
「院長の山荘へ行ってみましょうよ」
 と、亜由美はためらわずに言った。「その患者の正体を知りたいわ」
「元気のいい子だな」
 と、吉沢が愉快そうに言った。
「あの注射のせいかもしれないわよ」
 と、亜由美が言った。「さ、行きましょう」
 張り切って、亜由美は先に立って歩いて行ったが——。廊下の角を曲ろうとして、
「ワッ!」
 と、危うく誰かとぶつかりそうになった。
「——お前!」
 と、目の前に立った大下が目をむいた。「どうやって出て来たんだ!」
「こうやってよ!」
 亜由美は、いきなり相手の向うずねをけとばした。
「いて……いてて……」
 大下が片足をかかえ込んで呻《うめ》く。亜由美は拳を固めると——バシッと一発、パンチを食らわした。大下はあっさりと伸びてしまった。
「——君、凄《すご》いね」
 吉沢が唖然《あぜん》としている。
 正直、亜由美もびっくりしていた。
 やっぱり、さっきの注射のせいだろうか?
 
「見て」
 と、聡子が言った。「あの車に乗ってるの、院長じゃない?」
 ベンツが、病院を出て、夜道を走って行く。——聡子と尾崎、そしてドン・ファンの三人[#「三人」に傍点]は、尾崎の小型車の中で、病院の様子をうかがっていたのである。
「確かにそうだ。どうする? 尾行してみるか」
「そうね」
 と、聡子が肯《うなず》く。
 尾崎は車のライトを点けずに、ベンツの後を追い始めた。——運転の腕は確かである。
 何とかして亜由美が無事かどうか確かめたい、とやって来たものの、病院の塀も高く、中へ忍び込むのは、TVや映画で見るほど楽ではなさそうだった。
 で、仕方なく表で様子をうかがっていた、というわけである。
「郊外へ向ってるな」
 と、尾崎が言った。「安心してな。車に関しちゃ自信がある。——女の子に関しちゃないけど」
「ワン」
「そうだろう、と言ってるわ」
 と、聡子が言った。
 尾崎の車は、確実に同じ間隔を保ちながら、ベンツにピタリとついて行く。
「——本当に、あの殿永さん、何を考えてるんだろ」
 と、聡子が口を尖《とが》らしている。
 亜由美が姿を消してしまったことを、何とか殿永へ知らせようとしたのだが、なかなか捕まらず、やっと向うから連絡があったのが、今日の夕方。
 聡子の話を聞いても、殿永は大して焦るでもなく、
「塚川さんは運の強い方です。大丈夫ですよ」
 なんて言っている。聡子はすっかり頭に来てしまった。
「——尾崎さん」
「何?」
「どうしてあの片瀬幸子さんに振られたの?」
「振られるのに理由がいるのかい? それは向うに訊《き》いてくれよ」
 と、尾崎はぶっきらぼうに言ってから、「まあ、仕方ないけどね。こっちは高校も中退のしがない修理工さ」
「どうして知り合ったの?」
 尾崎は、的確にハンドルを捌《さば》きながら、
「初めは、彼女が父親の運転する車でやって来たのさ。ドライブ途中で、エンジントラブル。何とか動くが、あの工場が目に入って、飛び込んだってわけだ」
「へえ。偶然ね」
「俺は一目|惚《ぼ》れ。もちろん、相手にはしちゃくれないと思ってたが、手紙を出したら、会ってくれたんだ」
 と、尾崎は言った。「信じられなかったよ。だってそうだろ? たった一度、車の修理をしただけなのにさ」
「で、デートしたの?」
「うん。もちろん、食事したり話をしたり、それだけさ。——でも、俺は充分に幸せだった」
「そのとき、例の心中未遂の話は出たわけ?」
「聞いた。——昔のこととはいっても、彼女にとっちゃ、傷はいえていなかったんだろうな」
「そうでしょうね」
 と、聡子は肯いて、「で、どうして振られたわけ?」
「そりゃあ……。俺のせいさ」
「分った。力ずくで、いやらしいことしようとしたんでしょ」
「馬鹿言え! ちゃんと紳士的に、プロポーズしたんだ」
 と、むきになる。「で、断られた。——それでおしまい」
「そう。ま、信じとくわ」
 尾崎は、寂しくなって来た林の中の道で、前を行くベンツのテールランプを見落とさないようにするのに神経を集中していた。
「——しかし、正直言って……。これはやっかみかもしれないけどな。あの三上って奴、どうも好きになれない」
「そう。亜由美もそうだったみたい」
「幸子さんは、あんな男と結婚しない方がいいと思うぜ。もちろん、俺ならいいとは言わないけどな」
「ワン」
「この野郎! 変なところで合の手入れるない」
 と、尾崎はドン・ファンに言った。「——おっとどこかわきへ入る。林の中だな。どこへ行くんだ?」
「知りっこないでしょ、私が」
 林の中を、ライトなしで走るのは、あまりに危い。仕方なく尾崎はライトを点けた。
「気が付くかしら?」
「運転してる奴からは見えないと思うんだけど。——前方のことで頭が一杯さ。バックミラーに入るほど近付いちゃいないはずだぜ」
 やがて、前の車がスピードを落した。
「着くらしいな」
 再びライトを消して、こっちもスピードを落とす。
 やがて、林の奥に、古びた山荘風の建物が見えて来た。——窓に明りは点いているが、人が住んでいるのかしら、と思うような、荒れた感じの家である。
「謎《なぞ》めいてるわね」
 と、聡子が言った。
「うん。——この辺で停めとこう」
 尾崎が車を停め、エンジンを切ると、辺りは急に静寂に包まれたのだった。
 いささか無気味なほどである。
「——どうする?」
「もちろん、行ってみましょ、近くへ」
「しかし、ベンツの運転手がいるよ、表に」
「じゃ、裏へ回るのよ」
「忍者じゃないぜ。足音もするし」
「ドン・ファン。あんたの出番」
 と、聡子が言うと、
「ワン」
 と、ドン・ファンは短く答えたのだった。
 
 運転手は、ベンツの外へ出て、深呼吸をした。山の中の空気はひんやりと冷たく、車の中でいささか息苦しかった——ベンツでも!——運転手には、快い刺激だった。
 沼田は、
「ちょっと、待ってろ」
 とだけ言って中へ入って行った。
 いつものことだが、この「ちょっと」が、本当に数分のこともあるし、半日も待つこともある。
 運転手の宿命みたいなものだ。——タバコを出して、火をつける。中では喫えないから、停っている間に喫っておくことにする。
 と——木立ちのほうでガサガサと音がして、運転手はびっくりした。
「おい!——誰かいるのか?」
 と、声をかけるが、あんまり出て来てほしくない様子。「おい……」
 と……スタスタと出て来たのは、いやに背の低い犬。
「犬か」
 ホッと息をつき、「何してるんだ、こんな所で?」
 足の短い、ダックスフントというやつ。しかも、なかなか毛並は悪くなさそうである。
「どこから来た? ええ?」
 と、しゃがみ込んで相手をしている。
 その後ろを、聡子と尾崎が、足音を殺して駆けて行く。——ドン・ファンは、欠伸《あくび》をすると、建物の玄関へとスタスタ歩いて行った。
「中へ入るのか?」
 こんな犬、飼ってたのかな? しかし、運転手はこの中が「どうなっているのか」、全く知らないし、この犬が、いかにも慣れた感じで、「中へ入れろ」と要求しているので、きっとここの飼犬なのだと思った。
「よしよし」
 と、ドアを開けてやると、その犬は長い茶色の胴体をスルリと隙間《すきま》に通して、山荘の中へ入って行った……。
 
 尾崎と聡子の二人は、ドン・ファンが運転手の注意をそらしてくれている間に、うまく山荘の裏手へ回ったが、裏へ回ったからといって、入口があるわけではない。
「——どうする?」
「そうだな。中を覗《のぞ》いてみよう。明るい窓がある」
「そうね」
 二人は手近な窓の下へと頭を低くして近付くと、そっと頭を上げて行った。
 ——居間らしい。
 外側が古ぼけている割には、中は一応きちんと生活できるようになっている。
 沼田がいくらか落ちつかない様子で、居間の中を歩き回っている。何かよほどの心配ごとがあるのだろう。
「誰か他にいないのかしら」
「しっ。人が入って来る」
 居間のドアが静かに開く。
 沼田は振り向いて、
「お前か」
 と、言った。
 声は、窓のガラスの割れた所から、外へ洩《も》れてくる。
「何を暗い顔してんだい?」
 と、言ったのは——三上公平[#「三上公平」に傍点]だった。
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