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眠りを殺した少女07

时间: 2018-08-27    进入日语论坛
核心提示:7 立ち聞き いくら春休みといっても、そうそう毎日寝坊しているわけにはいかない。 のんびりと起き出す楽しさも、四、五日た
(单词翻译:双击或拖选)
 7 立ち聞き
 
 いくら春休みといっても、そうそう毎日寝坊しているわけにはいかない。
 
 のんびりと起き出す楽しさも、四、五日たつと、
 
「どこかへ出かけたい」
 
 という、あり余るエネルギーにとって代られるのである。
 
 ——小西智子は、八時過ぎに目が覚めた。
 
 カーテンを開けてみると、春にしては穏やかで風もない、上天気。いつまでも、ベッドの中でぐずぐずしている気にはなれなかった。
 
 堀内こずえにでも電話してみようか、と思ったが、一家で温泉に行くと言っていたことを思い出した。
 
 それならいい。別に、智子は一人で出かけるのが嫌いなわけではなかった。こずえと何から何まで趣味が一致しているわけでもないのだし。
 
 そうか。——絵でも見に行こうかな。
 
 智子は、時間があるとき、美術館へ行って絵を眺めるのが好きだ。姉の聡子には全くそんな趣味がないし、特別、親も絵が好きというわけでもなかったのだが。
 
 もちろん、友人の中でも、同じ趣味の子はいない。——たぶん、小さいころ両親に連れられてヨーロッパへ行ったときに、教会の天井画などに圧倒されたのが、絵画に関する記憶の初めであろう。
 
 ともかく、のんびりと絵を眺めて歩くと、気持が爽《さわ》やかになるのだ。
 
 そう決めると、智子は顔を洗って、出かける仕度をした。
 
 食事はどこか外でしてもいい。
 
 母はどうせまた出かけているのだろう。それとも、まだ父が日本にいるので、家におとなしくしているだろうか。
 
 階段を下りて行くと、居間のドアが少し開いていて、
 
「——そうか」
 
 と、父の声がした。
 
 来客かと思ったが、そうでないことはすぐ分った。電話で話しているのだ。
 
「——何とか考える。——ああ、分ってるが、今、ちょっと動けないんだ。何とか頑張っててくれ。——うん、何かあれば、いつでも電話しろ」
 
 父の声は真剣そのものだった。「——ああ、できるだけ早くそっちへ戻る」
 
 どこへかけているんだろう?
 
 仕事の話だろうと察しがついたので、智子は足を止め、居間へ入って行くのを遠慮していた。
 
 父は電話を切った。
 
「パリへ戻られては」
 
 と、もう一人の声がした。
 
 智子は、ちょっとびっくりした。その声は、やす子だったからである。
 
 やす子さんが、どうして父の仕事の電話を聞いてるんだろう。いや、もちろん、たまたま居合わせただけ、ということも考えられるけど。
 
「うむ」
 
 と、父が言った。「しかし——このままパリへは発てない」
 
「どうなさいますか」
 
「なに、大丈夫だ。パリといっても、電話とファックスがある。東京にいても、大して変らんさ」
 
 小西邦和の言い方には多少無理があった。
 
「さようでございますか」
 
 と、やす子が言った。「何か朝のお仕度を?」
 
「うん。またベッドに運んでくれるか。何しろ、紀子がすっかり味をしめて」
 
 と、笑っている。
 
「かしこまりました」
 
 と、やす子が笑いを含んだ声で言った。
 
 もういいか。智子は、居間へ入って行こうとした。
 
 すると、父が言ったのである。
 
「なあ、伸代」
 
 と。
 
 ドアにかけた手を止める間はなかった。
 
「——智子。早いじゃないか」
 
 ナイトガウンのままの小西邦和は、智子の格好を見て、「出かけるのか」
 
 と、訊《き》いた。
 
「うん……」
 
 智子は肯いた。「絵を見に行こうと思って……」
 
「いい趣味だな」
 
 と、小西は微《ほほ》笑《え》んで、「色々、いやなこともあった。行って来い」
 
「うん」
 
「何か召し上って行かれますか」
 
 と、やす子が訊いた。
 
「いいわ」
 
 と、首を振って、「お腹、空いてないし。どこかで適当に食べる」
 
「気を付けて行って来い。あまり遅くならんようにな」
 
「はい」
 
 智子は、玄関の方へ行きかけて、「お母さんは、まだ寝てるの?」
 
「ああ。もう起きるだろう」
 
「それより——」
 
 と、やす子が出て来て、「聡子さんが珍しく早くお出かけになりました」
 
「お姉さんが? もう出かけたの?」
 
 智子は少し目を大げさに見開いて見せ、「雪が降るかもね」
 
 と、言ったのだった。
 
 
 
 爽やかな日。
 
 窓を通して見ていた通りの、すてきな日だった。
 
 しかし——智子の胸には、奇妙な一《いち》抹《まつ》の不安が忍び寄っている。父の電話。そして父の言葉……。
 
 あの、やす子との話の様子では、父はパリへ電話をしていたらしい。
 
 おそらく、パリで大切な仕事が父を待っているのだ。それでいて父は、母と二人でのんびり、ベッドでの朝食と洒《しや》落《れ》込んでいる。
 
 あの電話の口調は、かなり切迫したものを感じさせた。父が、そんな大切な仕事を放っておくというのは、考えられないことだ。いつもの父なら、何があろうとパリへ飛ぶだろう。
 
 ——智子は、バスに乗った。
 
 平日の昼間。バスはガラ空きで、ゆったり座って、隣にバッグも置ける。
 
 父はなぜこっちに留まっているのだろう?
 
 母がせがんだから、という理由だけではないように、智子には思えた……。
 
 そして——伸代。
 
 伸代。そう。思い出した、一回だけ、母から聞かされた、「やす子」の本当の名前。
 
 岡崎伸代。それが、本当の名前だった。
 
 でも、いつも一緒にいる智子が——姉の聡子だって、母だってきっとそうだ——すっかり忘れていたというのに、父がなぜ、「伸代」という名で呼んだのだろう?
 
 深く考えるほどのことじゃないのかもしれない。父はたまたま、本当の名前の方で憶えていたのかも……。
 
 その判断は、智子にはつかなかった。
 
 大したことじゃないのだ。きっと。きっとそうだ。
 
 一つ一つは小さなことで、たまたま、二つ重なっただけのことだ。
 
 窓の外を、智子は眺めた。ガタガタとバスは揺れて、外の風景は大地震にでも遭《あ》っているようだった。
 
「そうか」
 
 と、智子は呟《つぶや》いた。
 
 今朝何だか落ちつかないのは、いつもと違うことが、あまりに重なりすぎたせいだろう。——もう一つ、聡子が朝早くから出かけたということを加えて。
 
 どこへ行ったんだろう?
 
 少なくとも、智子の行く美術館でないことだけは、確かだった。
 
 バスは広い通りに出ると、ホッと息をついた、という様子で、ぐっとスピードを上げた。
 
 
 
「どうする?」
 
 と、振り向いて、小野由布子は言った。
 
 聡子は足を止めて、
 
「どうする、って?」
 
 と、訊き返す。
 
「帰ってもいいのよ。私一人で行くから」
 
 小野由布子の言い方は、別に聡子を挑発しているわけではなかった。あくまで冷静で、むしろ教師が生徒に訊いているようでさえあった。
 
「帰らないわよ」
 
 と、聡子は言った。「ちゃんと考えて決めたことよ」
 
「でも、分ってる? 見付かったら、警察へ突き出されるかもしれないのよ。大学も退学。それでも後悔しないわね」
 
 小野由布子の目を、聡子は真直ぐに見つめて、
 
「どうなったって、泣きごとなんか言わないわよ」
 
 と、言った。「行きましょう」
 
「分ったわ。それならいいの」
 
 由布子の口もとに笑みらしいものが浮んだ。
 
 ——道は、大分入りくんでいた。
 
 古い住宅が並んだ町並は、何だか昔の日本映画を見ているようだ。
 
 その道を、小野由布子は迷いもせずに右へ左へと歩いて行く。事前に頭へ叩《たた》き込んである様子だった。
 
 聡子は、その後を足早について行った。いや、由布子に遅れまいとするだけで必死だった。
 
 ——ピタリ、と由布子が足を止める。
 
「どうしたの?」
 
「顔を伏せて」
 
「え?」
 
「少し顔を伏せて歩いて」
 
 二人は、うつむき加減に、足どりを緩《ゆる》めて歩き出した。
 
 向うから、一人の女がやって来る。
 
 四十を過ぎた辺りだろうか。一見したところ、五十にも見えるほど、老《ふ》けていた。
 
 決して服装などは見すぼらしくないのだが、全身から、「疲れ」がにじんでいる。眉《まゆ》の間にはしわが刻まれ、その表情は、幸福そうではなかった。
 
 聡子は、その女とすれ違ったが、たぶん、女の方は二人のことなど、見てもいなかったに違いない。
 
「——大丈夫」
 
 と、由布子がフッと息をつく。
 
「誰なの、今の人?」
 
「山神先生の奥さん」
 
 気付いても良かったのだ。——聡子は振り向いて、その女の少し背を丸めた後ろ姿を見送った。
 
「奥さんがいる、なんて、考えたこともなかったわ」
 
 と、聡子は言った。
 
「いるのよ、一応」
 
 と、由布子は皮肉っぽい口調で、「あんな男にもね」
 
「でも——大丈夫なの?」
 
「今日は用事で出かける日なの。毎週ね」
 
 と、由布子はまた足を速めながら、「夕方まで帰らないわ。大丈夫」
 
「そんなことまで調べたの?」
 
 聡子は、圧倒されていた。
 
「時間はむだにしない主義」
 
 こともなげに言って、「——あの家だわ」
 
 黒ずんだ、古い日本家屋。
 
「陰気そうなとこが、山神先生にぴったりよね」
 
 と、由布子が言って、同じことを考えていた聡子はちょっと笑った。
 
「じゃ、始める?」
 
 と、由布子は言った。
 
「どこから入るの? 玄関こじ開けたりしてたら、人が通って見られちゃうわよ」
 
 ——由布子が、
 
「山神先生の家に忍び込む」
 
 と言い出したとき、さすがに聡子もびっくりした。
 
 すぐには賛成できなかったのも当然のことだろう。しかし、由布子から、
 
「絶対の証拠をつかむには必要よ」
 
 と言われ、「私一人でもやるから、いいのよ」
 
 そう言われると、聡子としても後には引けない。片倉を好きだったという点では、死んでしまった今でも、由布子と競っているところがあったからだ。
 
「やるわよ、一緒に」
 
 と、つい言っていた。
 
 そして——いざ、山神の家の前に来ると、さすがに聡子は後悔している。しかし、そうは言えなかった。
 
「任せて」
 
 と、由布子が自信たっぷりに言った。「玄関からは入らないわよ、いくら何でも。庭の方へ回るとね、今は使ってない勝手口があるの。釘で打ちつけてあるけど、板がくさってて、ちょっと力を入れれば外れる」
 
「見られない?」
 
「うまく、隣の家の木の陰になってるの。ちゃんと見ておいたんだから」
 
 由布子は、「こっちよ」
 
 と、聡子を促した。
 
「うん……」
 
 いささか重い足どりで、聡子は由布子について山神の家のわきへ回ると、やっと通れるくらいの狭い塀の隙《すき》間《ま》を、すり抜けて行った……。
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