日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

魔女たちのたそがれ09

时间: 2018-08-27    进入日语论坛
核心提示:8 雨 雨の日だった。 依子は、雨に打《う》たれる校《こう》庭《てい》を、ぼんやりと眺《なが》めていた。 もちろん、こん
(单词翻译:双击或拖选)
 8 雨
 
 雨の日だった。
 依子は、雨に打《う》たれる校《こう》庭《てい》を、ぼんやりと眺《なが》めていた。
 もちろん、こんな日に遊《あそ》んで行く子《こ》供《ども》もいないので、残《のこ》っている必《ひつ》要《よう》はないのだが、何となく、本を見たりして時間を過《すご》していた。
 水谷はとっくに帰っていた。
 依子も、特《とく》別《べつ》に用のない日は、いつも下《げ》宿《しゆく》へ早々に引き上げるのが常《つね》だったが、このところ、何だか急《いそ》いで帰る気になれないのだ。
 下宿にいても、落《お》ちつかない。思い過しだとは思うのだが、何となく、いつも見《み》張《は》られているような気がして仕《し》方《かた》ないのである。
 神《しん》経《けい》が休まらないのだ。
 あの多江——栗原多江という少女は、どこに住《す》んでいるのだろう?
 誰《だれ》かに訊《き》いてみたいと思うのだが、一体誰に、となると——迷《まよ》ってしまう。
 河村や、金山医《い》師《し》のような人まで信《しん》じられないということになると、町中の誰もが信じられない。
 といって、このまま放《ほう》っておくわけにもいかない。
 日がたつにつれ、何かあったと立《りつ》証《しよう》するのは困《こん》難《なん》になろう。しかし、ただ、もっと大きな町の警《けい》察《さつ》へ行って話をしたところで、一体誰が信じてくれようか?
 何の証《しよう》拠《こ》もない話なのだ。
 依子は、ため息《いき》をついた。——いつまで、こうしていても仕《し》方《かた》ない。
 下《げ》宿《しゆく》へ帰ろうか……。
 廊《ろう》下《か》で、タタ、と足音がした。
「誰?」
 と、依子は声をかけた。
 返《へん》事《じ》はない。——誰《だれ》か、子《こ》供《ども》が残《のこ》っていたのかしら?
 依子は、職《しよく》員《いん》室《しつ》を出て、廊《ろう》下《か》を見回した。誰もいない。
 しかし、確《たし》かに、足音がこっちの方へと……。
 歩いて行って、廊下の角《かど》へ顔を出したとたん、何か袋《ふくろ》のような物《もの》がスッポリと頭にかぶせられてしまった。
 同時に凄《すご》い力で後ろから抱《だ》きつかれて、手が上らなくなる。一人ではない。
 依子は必《ひつ》死《し》にもがいた。——下《した》腹《はら》をいやというほど殴《なぐ》られた。
 呻《うめ》いて、依子は体を折《お》った。気が遠《とお》くなる。
 ——誰? 一体誰が——?
 依子は、そのまま床に突《つ》っ伏《ぷ》して、気を失《うしな》った。
 そして——冷《つめ》たさに身《み》震《ぶる》いして、ハッと意《い》識《しき》が戻《もど》った。
 激《はげ》しく、雨が当っている。
 依子は、痛《いた》みよりも、冷たさとショックで身を震《ふる》わせた。——校《こう》庭《てい》だ。
 雨の降《ふ》りしきる校庭の、真《まん》中《なか》に、放《ほう》り出されていたのだ。しかも、依子は、裸《はだか》だった。
 服《ふく》を全《ぜん》部《ぶ》脱《ぬ》がされて、投《な》げ出されていたのだ。依子は、周《しゆう》囲《い》を見回した。
 それから、夢《む》中《ちゆう》で、校《こう》舎《しや》へ向《むか》って走った。校舎の中へ飛《と》び込《こ》むと、そのまま床《ゆか》に座《すわ》り込んで、すすり泣《な》いた。
「——先生」
 と呼《よ》ぶ声に、顔を上げる。
 ジーパン姿《すがた》の、栗原多江が、そこに立っていた。
「どうしたの?」
「私《わたし》——誰《だれ》かに——」
 言《こと》葉《ば》が出て来ない。寒《さむ》さと恐《きよう》怖《ふ》で、体が震えている。
「ひどいことするのね!——服はどこ?」
 依子は首を振《ふ》った。
「待《ま》ってて」
 と、多江は廊《ろう》下《か》を駆《か》けて行ったが、途《と》中《ちゆう》、職《しよく》員《いん》室《しつ》の中を覗《のぞ》くと、
「ここにあるわ、きっとこれよ」
 と声を上げた。
 多江が持《も》って来たのは、確《たし》かに、依子の服《ふく》だった。
「でも——ともかく体をタオルか何かで拭《ふ》かないと。びしょ濡《ぬ》れよ」
「タオル……私《わたし》の机《つくえ》の引出しにあるわ」
「持って来てあげる」
 多江が走って行く。
 依子は、服を体に押《お》しつけるようにして、何《なん》度《ど》も息《いき》をついた。
 多江が、タオルで、依子の体をこすってくれて、依子は少し体が暖《あたた》かくなって来た。
 それから服を身につける。——髪《かみ》も濡れていたが、これはどうにもならない。
「一体何があったの?」
 多江に訊《き》かれて、依子は、襲《おそ》われたときのことを話した。
「でも誰《だれ》が……」
 と、依子は息《いき》をついた。「こんなひどい目に、どうして遭《あ》わなきゃいけないの?」
「待《ま》って。さっき、先生の服《ふく》を見《み》付《つ》けたとき、何か紙が上にのっかってたの。たぶん床《ゆか》に落《お》ちてるわ」
「紙が?」
 依子は、一《いつ》緒《しよ》に職《しよく》員《いん》室《しつ》の床を捜《さが》した。それはすぐに見付かった。
 白い紙に、金《かな》釘《くぎ》流《りゆう》の字で、
〈余《よ》計《けい》なことはするな〉
 とだけあった。
 依子は椅《い》子《す》にかけると、その紙を手の中で握《にぎ》り潰《つぶ》した。——怒《いか》りと恥《は》ずかしさで、体が震《ふる》えた。
「——先生、何かされたの?」
 と、多江が訊いた。
「いえ——それはないわ。あれば、分るでしょう」
「じゃあ、これは要《よう》するに脅《おど》しなのね」
「ひどいわ!」
 悔《くや》し涙《なみだ》が、依子の頬《ほお》を伝った。
 いずれ、襲《おそ》ったのは男、二人か三人だろう。その男たちは、自分を裸《はだか》にして、散《さん》々《ざん》面《おも》白《しろ》がって眺《なが》めたに違《ちが》いない。
 そう思うと、悔しくてたまらなかったのである。
「いざとなりゃ、何でもできるぞ、っていう警《けい》告《こく》なのよ、きっと」
 と、多江は言った。「私《わたし》と一《いつ》緒《しよ》だったこと、誰《だれ》かに言ったの?」
「いいえ」
 と、依子は首を振《ふ》った。
「でも、私があのバスでよく帰ることは、知ってる人もいるしね」
「あの日、河村さんの奥《おく》さんと一緒だったわ」
「ああ、そうか。往《い》きで、会ってたんだわ」
「きっと、あの人が、話したのね」
 多江は黙《だま》っていた。
 職《しよく》員《いん》室《しつ》にいる、ということが、依子を落《お》ちつかせた。教師に戻《もど》れた、というべきかもしれない。
「——よく来てくれたわ」
 と、依子が言った。
「迷《まよ》ったんだけどね」
 と、多江は首をかしげた。「でも、ちょうどよかった」
「本当に。助《たす》かったわ」
 依子は、校《こう》庭《てい》の方へ目をやった。——信《しん》じられない。
 悪《あく》夢《む》のようだった。
「私《わたし》に、話しに来てくれたの?」
 と、依子は訊《き》いた。
「そうだけど……」
 多江はためらって、「でも、やっぱりやめた方がいい。これ以《い》上《じよう》、首を突《つ》っ込《こ》むと、先生、今度は、こんなことじゃ済《す》まないかもしれないよ」
 依子は、多江の目をじっと見つめた。
「これで、私《わたし》が泣《な》いて逃《に》げ出すと、向うが思ってるんだったら、残《ざん》念《ねん》ながら、間《ま》違《ちが》ってるわ」
 と、きっぱりと言った。「私《わたし》、見かけほど弱《よわ》虫《むし》じゃないのよ」
 多江は微《ほほ》笑《え》んだ。
「見かけも、弱虫じゃないよ」
「失《しつ》礼《れい》ね」
 と、依子も笑った。
 やっと、それでショックから立ち直《なお》った、という気がした。
「——先生、いい人ね」
 と、多江はしみじみと言った。「だから、危《あぶな》い目に遭《あ》わせるのはいやだわ。悪《わる》いこと言わない。この町から出た方がいいわよ。小学校の先生なんて、いくらでも仕《し》事《ごと》、あるでしょ?」
「いやよ。出て行くもんですか」
 と、依子は首を振《ふ》った。
「頑《がん》固《こ》ね」
「そう。——それだけが取《と》り柄《え》なの。昔《むかし》から、根《こん》気《き》だけはいいって言われて育《そだ》ったんだから」
 多江は、まだしばらく迷《まよ》っているようだったが、やがて、ため息《いき》をつきながら、肯《うなず》いた。
「分ったわ。でも——今日、ここで話をしても、きっとよく分らないと思うの。今《こん》度《ど》、出られる日はない?」
「土曜日の午《ご》後《ご》はどう?」
「私《わたし》はいいけど」
「私、本校に行く用があるの。少々長引いても、構《かま》わないわ」
「じゃ、そのときに、案《あん》内《ない》してあげる」
 と多江は立ち上った。
「もう行くの?」
「家に黙《だま》って出て来たから、心《しん》配《ぱい》してるといけないわ」
「そう……」
 ちょっと心《こころ》残《のこ》りだったが、無《む》理《り》強《じ》いはしないことにした。「——ねえ、多江さん」
「え?」
 職《しよく》員《いん》室《しつ》を出ようとしていた多江は振《ふ》り向《む》いた。
「案《あん》内《ない》してくれる、って、どこへ?」
「〈谷〉よ」
「〈谷〉?」
「そう。来れば分るわ。じゃあ、土曜日に」
 依子は、多江が、傘《かさ》をさして、裏《うら》手《て》の道へと消《き》えて行くのを見《み》送《おく》った。
 谷……。
 谷というのは、どこのことだろう?
 依子は、職員室を、いつもの通り片《かた》付《づ》けると、鍵《かぎ》をかけて出た。
 傘《かさ》をさして、校《こう》庭《てい》に出る。
 あんなことが、現《げん》実《じつ》にあったのだろうか?
 ——しかし、疑《うたが》いようがない。
 この濡《ぬ》れた髪《かみ》は、いやでも、それを証《しよう》拠《こ》立《だ》てている。
 あんなことまでして、一体何を恐《おそ》れているのだろう。守《まも》るべき秘《ひ》密《みつ》があるのは間《ま》違《ちが》いないが、それは何なのか?
 大沢和子の死《し》。それは、もう疑《うたが》いようのないものになった。
 依子は、学校を出た。
 ——下《げ》宿《しゆく》に帰ると、ちょうど、電話がかかっていた。
「お母様からですよ」
「すみません」
 と、依子は受《じゆ》話《わ》器《き》へ手を伸《の》ばした。「——あ、お母さん? 私《わたし》よ」
「ああ、依子。どうしたの?」
「どうした、って……」
 依子は面《めん》食《く》らった。「そっちが電話して来たんじゃないの」
「だって、お前が電《でん》報《ぽう》を打《う》ってよこしたからじゃないの」
「電報を?」
 依子はわけが分らなかった。「どんな電報?」
「急《いそ》いで帰るからって……」
「帰る? 私《わたし》が?」
「そうじゃないの?」
 依子は受《じゆ》話《わ》器《き》を握《にぎ》りしめた。
「帰らないわ。何かの間《ま》違《ちが》いよ」
 と、依子は、きっぱりと言った。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%