日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

南十字星03

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:3 奈々子、踊る「ウォー」 ライオンが咆《ほ》えたわけではない。浅田奈々子が欠伸《 あ く び》をしたところだった。「今日
(单词翻译:双击或拖选)
 3 奈々子、踊る
 
 
「ウォー」
 ライオンが咆《ほ》えたわけではない。浅田奈々子が欠伸《 あ く び》をしたところだった。
「今日は暇ですね、マスター」
 と、奈々子は、カウンターにもたれて、空っぽの店の中を見渡した。
「こんな日もあるさ」
 マスターは、のんびりと新聞など広げている。
 本当に不思議なもので、特別に休日とかいうわけでもないのに、混雑する日というのがあると思うと、表は結構人が歩いているのに、店はガラガラってこともあるのだ。
 ま、これだから面白いので、これが毎日、必ず八割の入り、とかいうのだったら、却《かえ》って妙なものだろう。
 そして、暇な日というのは本当に全然客が入らないもので、それはもう何時になっても同じことなのである。
「今日は開店休業日だね」
 と、マスターは、新聞をたたむと、「ねえ奈々ちゃん」
「何ですか」
「こんな日は、まず客が来ないよ」
「そうですね」
 もう閉めようか、と言うのかと思って、奈々子は「儲《もう》かった」と思った。だが——。
「今、新聞見てたらね、前から行こうと思ってた展覧会が、今日でおしまい、って出てたんだ。行って来たいんだけど、君、留守番しててくれるかい?」
「あ、そう——です、か」
 奈々子は、がっかりしたのを声に出さないように努力しつつ、「どうぞ。別に私、予定もないし」
「悪いね。閉店までに戻るから」
「どうぞ。私だって、コーヒーや紅茶ぐらい出せますもん」
 それ以外はだめなんである。
「もしお客が来たら、作る人が休んじゃってとか、適当にやっといてよ」
「はあい」
 いつも親切にしてくれるマスターのためだ。ま、たまにはいいか。
「じゃ、よろしく」
 マスターは、エプロンを外し、ベレー帽などヒョイと頭にのっけて、もう画伯の気分で、ちょっと手を上げて出て行く。
「ありがとうございました!」
 奈々子は元気よく呼びかけて、マスターをずっこけさせたのだった……。
 ——アーア。
 また、欠伸が出る。
 何もカウンターの外に立ってる必要ないんだ。私が「マスター代理」なんだから。
 カウンターの中に入っても、別に目が覚めるわけじゃない。小さなスツールに腰かけて、またまた眠くなる。
 キーン、と飛行機の音が、かすかにガラス越しに聞こえて来た。
 飛行機。——外国。
「そうだ」
 あの、三枝美貴って人、どうしたんだろう?
 美貴を成田まで送って行って、野田という男に会って……。あれから、もう半月ぐらいたつ。
「いい男だったわね、なかなか……」
 と、独《ひと》り言《ごと》。
 でも、ろくに顔なんか、憶《おぼ》えちゃいないのである。ただ、もやっとした輪《りん》郭《かく》ぐらいのもんだ。
 無事に旦那は見付かったんだろうか? それとも、セーヌ河辺《あた》りに死体が浮んだんだろうか。
 ドイツ旅行じゃ、セーヌ河は流れてないかしら?
 勝手なことを考えていると、電話が鳴り出して、ウトウトしていた奈々子は、
「ワッ!」
 と、仰天して、目を覚ました。「何よ、もう!」
 電話に文句言っても仕方ない。奈々子は受話器を取った。
「はい、〈南十字星〉です」
「もしもし。あの——そちらで働いている女の方……」
「私ですか?」
「お名前、何とおっしゃいましたっけ」
 おっしゃる、ってほどの名じゃないですけどね。
「浅田奈々子ですけど……」
「あ、そうだわ。奈々子さんでしたね」
 え? その声は、もしや——。
「三枝美貴さん?」
 と、奈々子は訊《き》いた。
「そうです。まあ、憶えてて下さったの」
 美貴の声が、嬉《うれ》しそうに弾《はず》んだ。
「もちろんです。——あの、その後は?」
「ええ。主人のことは相変らずです」
 見付かってないのか。ま、でも死体も上っちゃいないということだ。
「早く何か分るといいですね」
「あの、奈々子さん」
 と、美貴は早口に言った。「厚かましくて、気がひけるんですけど、お願いがあるんですの」
「何でしょう?」
 また成田行き? ごめんよ、そんな遠い所まで。
「そちらのお店に、もうすぐ、男の人が行くと思うんです」
「男の人……」
「ええ。週刊誌を丸めて持っているはずですわ」
「目印ですね」
「その人が行ったら、私がそこへ行くまで、引き止めておいてほしいんです」
「え?」
「私も急いでそちらへ行きます。でも三十分はかかりそうなんです」
「はあ」
 奈々子は肯《うなず》いて、「じゃ、美貴さんがおいでになるまで、その男の人を引き止めとけばいいんですね?」
「そうです。でも、私のことはその人に言わないで下さい」
「はあ……」
「できるだけ早く行くようにします。——あ、車が来たわ。じゃ、お願いします」
「ええ、あの——」
 電話は切れてしまった。「何でしょね」
 やっぱり、お金持のお嬢さんだけのことはあるわ、と思った。自分の用だけ言って、パッと切っちゃうあたりが……。
 あと三十分ね。——ま、それぐらいなら、たとえ今すぐ来たとしても、こんな店の客は、たいてい二十分や三十分、居座ってるもんだからね。
 と、思っていると、店の戸が開いた。
「いらっしゃい——」
 ませが抜けてしまって、魚屋さんかお寿司屋さんみたいに威勢よくなってしまった。
 背広姿の、四十代の男。週刊誌を丸めて持っている。
「もう来たのか」
 と、奈々子は呟《つぶや》いた。
 男は、店の中をザッと見渡すと、窓際の席について、
「コーヒー」
 と、言った。
「はい、ただいま」
 もうちっと、手間のかかるもん頼みゃいいのにね、と奈々子は思った。頼まれても、奈々子には作れないのだが。
 水のコップを運んで行くと、もう一度カウンターまで行って、今度はメニューを持って行った。
「コーヒーって頼んだろ」
「ええ。でもお気が変ることもあるかと思って」
「いいよ。コーヒーで」
「そうですか。ケチ」
「ん?」
「いえ、別に」
 奈々子はカウンターに戻《もど》った。
 コーヒーか。ま、お湯はいつも沸《わ》いてるし、フィルターの用意も粉もあるし……。
 二、三分でできるんだけど。それじゃ三十分は、もたないかもしれない。
 豆から挽《ひ》いてやろ。——奈々子は、缶《かん》から新しい豆を取り出した……。
 
「——コーヒー、まだ?」
 と、男がうんざりしたような声を出す。
「今、お湯を沸かしてます」
 奈々子は平然と言った。「コーヒーは心です。この店は、真心のこもったコーヒーを——」
「分ったから、早くしてくれ」
 男が苛《いら》立《だ》つのも無理はない。
 もう二十分もたっているのだ。
 早く来ないかな、美貴さん。——これ以上は引きのばせない。
 コーヒーをドリップで落とすと、男のテーブルに運んで行く。
「お待たせいたしました」
「本当だよ」
 男は渋い顔で、「いつもこんなにのんびりしてんのか、この店は?」
「ゆとりを持って、働いてる、と言って下さい。都会の中のオアシス。せかせかした現代人の心のふるさと——」
「分った、分った」
 男は、ミルクをドッと入れ、砂糖をドカドカ入れて、飲み始めた。
 あと七分だ。——ま、何とかもつだろう。
 奈々子が安心してカウンターの奥へ戻《もど》ると、
「お金、ここに置くよ」
 と、言って、男が立ち上ったので、奈々子は焦《あせ》った。
「もう? もう飲んじゃったんですか?」
「ああ。まあ、なかなかの味だったよ」
 と、男が出口の方へ歩き出そうとする。
「お客さん!」
 奈々子は、客の前に立ちはだかった。
「何だい?」
「あの——もう一杯いかがです?」
「いや、もういいよ」
「そんなこと言わないで! ね、もう一杯飲んだら、タダ!」
「タダ! 前のも?」
「そう! 飲まない手はありませんよ」
「へえ。変ったサービスだね」
「ね、いいでしょ?」
「じゃあ……もらうよ」
 と、男は席に戻った。
 二杯目をいれて運ぶと、三十分が過ぎていた。
 しかし——美貴が一向に現れないのである。
「——やあ、旨《うま》かった。本当にタダでいいの?」
 今さら、だめとは言えない。
 だけど——何て早いの、この人、コーヒー飲むのが!
「じゃ——」
 と、男が立ち上ろうとするのを、
「待って!」
 と、奈々子は飛んで行った。「お客さん、カラオケ、好き?」
「カラオケ?」
「そう。好きそうな顔してる! マイク握ったら離さないんでしょ」
「まあね」
 と、男は笑った。
「上手なんでしょ。いい声してるもん」
「女の子によくそう言われるよ」
「聞いてみたいわ! 何か一曲!」
「いや——だって、こんな昼間に?」
「いいじゃない! 時と場所を選ばないのが、本当の名人!」
「だけど——ここ、カラオケなんて、あるの?」
 そうだった。この店にカラオケのあるわけがない。
「あのね——私、私がやります」
「カラオケを!」
「ええ、タータカタッタ、ズンパンパン、とか」
「面白い子だね、君」
 と、男は笑い出した。「でも、用事があるんでね、悪いけどこれで……」
 まだ美貴は来ない。——奈々子はぐっと凄《すご》んで、
「ちょっと!」
 と、男をにらみつけた。
「な、何だよ?」
 男が思わずのけぞる。
「コーヒー二杯飲んで、逃げる気?」
「しかし——君がタダだ、と——」
「代りに条件があるのよ。分った? おとなしく座ってないと、一一〇番するからね!」
「わ、分った……」
 男は目を白黒させて、椅《い》子《す》へドカッと腰をおろした。
「私の歌を聞いてからでないと、帰さないわよ!」
 と、言ってから——だめだ、と思った。
 何しろ奈々子、えらい音痴である。歌の方は全然だめなのだ。——どうしよう?
「聞くよ、聞くよ」
 男は、情ない顔で、「早く歌ってくれ」
「うるさいわね!」
 と、奈々子は怒《ど》鳴《な》りつけた。「今、何を歌うか、考えてんじゃないの! おとなしく待ってなさい!」
「す、すみません……」
 男は、椅子に座り直した。
 結局——美貴が店へ駆け込んで来たのは、さらに二十分後。
 美貴は、たった一人の男の客の前で、盆踊りを踊っている奈々子を見て、唖《あ》然《ぜん》としたのだった……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%