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南十字星08

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:8 とんでもない話「どうだろうね」 と、志村武治は言った。「はあ」 どうだろう、と訊《き》かれて、はあ、では返事になって
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 8 とんでもない話
 
 
「どうだろうね」
 と、志村武治は言った。
「はあ」
 ——どうだろう、と訊《き》かれて、はあ、では返事になっていない。そんなことぐらい、奈々子だって分っているのだが、しかし、突然そんなことを言われたって……。
「君も、野田君から聞いて知っていると思うが、私と美貴は実の親子ではない」
 と、志村はゆっくりコーヒーを飲みながら言った。「しかし、それだけに、なおさら私は美貴に幸せになってほしい。分るかね、この気持が」
「はあ」
「死んだ家内のためにも、それが一番大切なことだと思っている。——もちろん、私はルミ子のことだって可愛い。しかし、あれは独立心旺盛で、負けていない子だ」
 確かにそうだ、と奈々子も思った。
「ルミ子は勝手に自分のやりたいことを見付けるだろう。しかし美貴は、繊細な子で、誰か支えになってくれる人間がいなくては、危っかしいんだ」
「でも……」
「三枝君のことは、私もどう考えていいものか、迷っている」
 と、志村は難しい顔で首を振った。「うちへやって来たあの女の言葉が果して本当なのかどうか、それは何とも言えないが……。ともかく、三枝君の生死がはっきりしないと、美貴も今の不安定な状態から、脱け出せないと思う」
「そうですね」
「当人が、どうしても、もう一度ドイツへ行って、夫の生死を確かめたいと言うのを止めることはできない。しかし、あの子を一人でやるのは、あまりに不安が大きいのだよ」
「そりゃ分りますけど……」
「君にとっては、誠に迷惑な話だと思う」
 と、志村は少し身を乗り出して、「そこを何とか、引き受けてもらえないだろうか」
「でも——美貴さんについて行っても、私、大してお役に立てないと思います。言葉だって分らないし、外国なんて行ったことないんですもの」
「美貴は言葉がちゃんとできる。それに君は女だ」
 それくらい、言われなくたって、分ってますよ。
「美貴と同じ部屋にいられる。もし私や野田君がついて行けたとしても、同室というわけにはいかないからね。それに私も野田君も仕事を持っていて、そう長く出られない」
「ルミ子さんは?」
「学校がある」
「あ、そうか。でも——私も働いてるんです! あのお店、私がいないと大変なんです」
「店のマスターには、もう話をしてある。快く承知してくれたよ」
 奈々子は頭に来た。——人のこと、勝手に貸し出すな、って! レンタル屋じゃあるまいし!
 帰ったら、マスターの足を思い切り踏みつけてやろう、などと穏《おだ》やかではないことを考えながら、
「あの——少し考えたいんですけど」
 と、言った。
「もちろん、そうしてくれたまえ」
 志村はホッとした様子で、「言うまでもないことだが、向うへの旅費や宿泊費の一切、準備のための費用など、全部、こっちで持たせてもらう。他に、お礼も充分に出すつもりだ」
 悪い話じゃない、とは思う。人の金でヨーロッパまで行って来れると思えば。
 しかし、用事が用事である。あの美貴に付合うのも、なかなか楽じゃないだろうし。
 それに——この志村という男、見かけはいかにも、「やり手」のビジネスマンだ。美貴についての気持にも、たぶん嘘《うそ》はないだろうが……。しかし、人間ってのは、分らないものなのだから。
 おそらく、志村は知らないだろう。美貴は、野田が三枝を殺したと思っているし、野田の方は美貴が夫を殺したと思っている。
 そんな、ややこしい状況での旅ともなれば——下手すりゃ、命がけってことにもなりかねないではないか。
 まだ死にたくないんだからね! 奈々子は心の中で言った。
「では、決心がついたら、いつでもここへ電話してくれたまえ」
 と、志村が奈々子に名刺を渡す。
「分りました」
 奈々子は立ち上って、「それから——」
「何だね?」
「コーヒー代をいただきたいんですけど。領収証は持って来ました」
 と、奈々子は言った……。
 
 翌朝、奈々子は、〈南十字星〉へ入って行くと、
「おはよう」
 というマスターの声を無視して、カウンターの下から、〈本日は閉店しました〉という札を出して、さっさと店の表にかけてしまった。
 マスターが呆れて、
「おい、奈々ちゃん、何やってるんだい?」
「私、面接があるんです」
「面接?」
「ええ。すみませんけど、マスター、ちょっと外していただけません?」
「そりゃまあ……。しかし、まさか、マスターを入れかえようってんじゃないだろうね?」
「まさか。——美貴さんと野田さんが来ることになってるんです」
「なるほど。分ったよ。二人一緒に?」
「別々です。美貴さんは朝早いの、弱そうだから、十一時。野田さんは九時半です」
「じゃ、もうすぐだね。分った。午後はどうするんだい?」
「もちろん開けます。商売ですもん」
 マスターは笑ってエプロンを外した。
 ——一人になると、奈々子は椅《い》子《す》にかけて、考え込んだ。
 ゆうべは八時間しか寝ないで(?)、ドイツ行きのことを考えたのだが、どうにも決心がつかない。
 ともかく、美貴と野田の話を聞くのが先決、と思ったのである。
 それにしても……。三枝がもし誰かに殺されたのだとしたら、あのハンブルクで見付かった女も含めて、もう二人も死んでいることになる。
 奈々子としては、「三番目の死体」になって、フランクフルト辺りで見付かりたくはないのである。
 店の電話が鳴った。
「——南十字星です」
 向うは何も言わない。「もしもし。——もしもし?」
 プツッ、と切れてしまった。
「変なの」
 と、奈々子は肩をすくめた。「あ、いけない」
 下の郵便受で、郵便を取って来るのを忘れていた。いつも出勤して来た時に出すのだ。
 まだ九時半までには、十分ある。
 それに、野田が来ても下で出会うことになるし。
 奈々子は、店を出て、トコトコと階段を下りて行った。
 郵便受を開けて、中からいくつかの封筒を出す。——ダイレクトメール以外は、請求書。「ラブレターは来ないか」
 と、奈々子は肩をすくめた。
 その時——ズシン、という地響きと共に、ビルが揺れた。
「キャッ!」
 奈々子は尻もちをついた。白い煙が、階段に噴《ふ》き出して来る。
「な、何よ、一体!」
 あわてて立ち上ると、奈々子は、ビルの外へ飛び出した。
「危いぞ!」
「ガラスが……」
 と、叫び声が上る。
 奈々子は道へ出て、ビルを見上げ、唖《あ》然《ぜん》とした。
〈南十字星〉が、なくなっていた。
 窓は吹っ飛び、ポカンと大きな穴があいたようになって……。白い煙が立ちこめている。
「——奈々ちゃん!」
 と、声がした。
「マスター! 何でしょう?」
「分らんが……。爆発だ」
「ガスか何か? でも——全然ガスの匂《にお》いなんて」
「ともかく、無事で良かった!」
 そう言われて、初めて奈々子は気付いたのである。ずっと店にいたら、今ごろは……。
 ——消防車、パトカーが駆けつけて、しばらくは大騒ぎだった。
 何といっても人通りの多い場所である。野次馬も大勢で、またそれを見て、何事かと人が集まって来る……。
「——どうしたんだい?」
 と、声がして、奈々子が振り向くと、野田が立っていた。
「あ、野田さん」
「遅くなってすまない。仕事で、どうしても出られなくてね。何かあったの?」
「ええ、まあ……」
 マスターが、警察の人と話しているのを、奈々子は眺めていた。
「あれ、店は?」
「ええ。——なくなっちゃったんです」
「何だって?」
 野田が目を丸くした。
 マスターが戻って来ると、
「いや。けが人が出なくて良かった」
 と、息をつく。
「でも、どうしたんでしょう?」
「分らんね。これから調べてもらうことになる」
 マスターは、首を振って、「再開までは少しかかりそうだな」
 と、言った。
「そうか」
 と、奈々子は呟《つぶや》いたのだった。「私、失業しちゃった……」
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