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南十字星11

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:11 出 発 お断りしておくが、奈々子だって、そう毎回毎回、アクション場面を楽しんでいるわけじゃないのである。 作者として
(单词翻译:双击或拖选)
 11 出 発
 
 
 お断りしておくが、奈々子だって、そう毎回毎回、アクション場面を楽しんでいるわけじゃないのである。
 作者としても、奈々子のために、美しいドレスと宝石で着飾った大舞踏会とか、夕焼のモンブランを背景にしたラブシーンとかを書いてやりたいと思ってはいるのだが、残念ながら、物語はまだその段階ではない。
 従って今回も、やや唐突ながら——。
「何すんのよ!」
 奈々子は、すぐ後ろへ寄って来た男を、エイッと突き飛ばしてやった。
「ワッ!」
 男がみごとに引っくり返る。
 奈々子としても、多少神経過敏になっている気配、なしとしない。
 それもまあ無理からぬことで、何しろ、二度も殺されかけたのだから。
 一度は爆弾、一度はナイフ。で、「二度あることは三度ある」なんてことわざが、急に実感を持って迫って来る。「三度目の正直」とも言うし。
 明日はドイツへ出発、って今になって、やたら周囲に用心していたのである。
「おお、いてえ。何するんだよ」
 と、男は、やっとこ起き上って来た。
「あんた……」
 例のK探偵社の森田である。
 奈々子は、最後の買物(?)に出かけて来たところで、横断歩道で信号が青になるのを待っていたのだ。そこへ、妙な男が寄って来たので……というわけである。
「何してんのよ。こんな所で」
 と、奈々子は言った。
「聞いてないのか、志村さんから」
「あんたが、ボディガードになるっていうんでしょ。知ってるわよ」
 と、奈々子は言ってやった。「頼りないボディガード」
「お前なんか守ってやる必要もないけどな」
「じゃ、やめれば」
「仕事だ」
「へえ」
 やり合っている内に信号が変っていた。奈々子はあわてて横断歩道を渡った。
 もちろん、森田もついて来る。
「私なんかより、美貴さんについててあげれば?」
「向うへ行ったら、お前についててくれ、と言われたんだ」
「どうして?」
「向うは今日一歩も外へ出ない、とさ」
「なるほどね」
 奈々子は納《なつ》得《とく》した。「じゃ——はい」
「何だ?」
「これ持って」
 スーパーの袋を森田に持たせる。
「どうして俺《おれ》が——」
「ボディガードでしょ」
 と、奈々子は言ってやった。
 しかし——もちろん、奈々子も死ぬのは怖い。
 それも、理由も分らなくて死ぬなんて、いやだ! それは、カフカみたいな「不条理の世界」ってものだ。
 いや、まあ、もちろん奈々子を襲った誰かは、別にカフカに影響されたわけではないだろうし、ちゃんとした(というのも何か変だが)理由があったのだろう。
 しかし、その「理由」というのが何なのか、奈々子には見当もつかない。
 大体、奈々子は、たまたま美貴の夫の失《しつ》踪《そう》に係《かかわ》り合っただけだ。それも、特別深く係り合っているわけでもない。
 何か、殺されるような秘密を握っているわけでもない。それなのに……。
 私が美し過ぎるのがいけなかったのかしら、とも考えてみたが……。やはり、これは違うだろう、と思い直した。
 アパートへ帰りつくと、奈々子は、森田を部屋へ上げて、優しくお茶を出してやったりは、しなかった……。
 電話が鳴っていた。
「——はい」
「浅田奈々子君かね」
「あ、志村さんですか」
「明日、出発だね」
「ええ、まあ」
「ちょっと会いたいんだが」
「構いませんけど。——どこで?」
「迎えに行くよ、車で」
 あの凄《すご》い外車!
「はい! じゃ何時ごろ——」
「五分ぐらいしたら行く」
「五分? どこからお電話を?」
「車の中」
 なるほど。
「分りました」
 電話を切ると、あわてて着替えをして、外へ出た。
 森田が、表でむくれて立っている。
「どこへ行くんだ?」
「あんたはついて来なくていいの。雇い主のご用だから」
 と、奈々子は言ってやった。
 
「色々大変だったようだね」
 と、志村は言った。「殺されかけたっていうじゃないか」
「おかげ様で」
 と、奈々子は言った。「いつの間にか、VIPになったみたいです」
 志村が忙しいというので、車の中で、お茶をもらっている。
「——君をとんでもないことに巻き込んだようで、すまんと思ってるよ」
「いい男でも捜して下さい」
 と、奈々子は言ってやった。「でも、妙じゃありませんか」
「うん?」
「そりゃ、美貴さんと、そのご主人、若村麻衣子って女。——三角関係とか、色々あっても、そりゃ分ります」
「うむ」
「でも、それと、私のこと殺そうとするのが——」
「それは確かに分らない」
「いえ、そうじゃないんです」
 と、奈々子は言った。「その殺し方です。喫茶店に爆弾しかけたり、私を殺そうとしたのも、たぶん、誰かに頼まれた人間だと思うんです」
「なるほど」
「そんなのって、ただの三角関係のもつれ、なんかとうまく結びつかないと思いませんか?」
「全くだ」
 志村は肯《うなず》いて、「君はなかなか頭のいい子だね」
「どういたしまして」
 志村は少し考えていたが、
「これは、君に話したものかどうかと迷っていたんだが」
「何でしょう?」
「これは美貴の全く知らないことなんだ。そのつもりで聞いてくれ」
「はあ」
「三枝が向うで姿を消したのについては、もちろん、色々 噂《うわさ》も飛んでいる。例の若村麻衣子の線も、もちろんある」
「じゃ、何か他にも?」
「実はこのところ、妙な噂が耳に届いているのだ。——三枝が、何か密輸に係っていたらしい、というんだよ」
「密輸?」
「まあ、詳しいことは分らないんだが、そんな噂だ。向うで消えたのも、何かそれに関連してのことじゃないか、というんだ」
「密輸……。それなら、何となく分りますね」
 と、奈々子は肯いた。
「君の身に起ったことを考えると、その密輸の話も、本当かもしれん、と思えて来たんだよ」
 と、志村も肯く。「もちろん美貴は何も知らない。大体、潔癖な子だ。夫がそんなことに係ってると知って、黙ってはいない」
「でも、なぜ私が狙《ねら》われるんですか?」
「さあ、そこまでは分らない」
「それに——もしその話が本当なら、ドイツへ行って色々調べるの、危《あぶな》いんじゃありません?」
「うん」
 志村は、アッサリと肯いて、「確かに、危い」
「そんな!——あの頼りないボディガードだけなんですよ、頼りは」
「そこを何とか頑《がん》張《ば》ってくれ!」
 いくら頑張れ、って言われてもね……。
 奈々子は、自分の方が蒸発したくなって来たのだった……。
「よいしょ、よいしょ」
 と、奈々子は、成田空港のロビーで、スーツケースを運んで来て置くと、フウッと息をついた。
「さて、と……」
 美貴さんはどこかな? この辺りで待ち合せたんだけど。
 ともかく、平日といっても、人の多いこと! これだけの人が、毎日毎日、外国へ行ったり、戻《もど》ったりしているのだ。
 電車に乗るのと大して変らない感覚のビジネスマンもいる。
 しかし、何といっても、奈々子にとっちゃ大変なことなのである。
「ルフトハンザのカウンター……。ここよね、確か」
 と、何度も確かめていると、
「奈々子さん!」
 と、呼ぶ声がする。
 美貴にしては、元気のいい声だ。
 キョロキョロして捜すと、
「おーい!」
 手を振りながらやって来るのは、何とルミ子!
「あら……。どうしたの?」
 奈々子はルミ子がすっかり旅行者風の軽装なのを見て、びっくりした。「まさか、一緒に行くんじゃないでしょ?」
「その『まさか』」
「だって——学校は?」
「特別に休みを取ったの。父も諦めて出してくれた」
「危いのよ!」
「大丈夫。向うには知り合いがいるから。——美貴さんは?」
 奈々子は、しかしまだ面食らっていて、
「それにしても——何を考えてんだ、あの親父」
 なんて呟《つぶや》いていた。
「え?」
「何でもないの」
 と、奈々子は首を振った。
「あ、来た」
 と、ルミ子が言った。
 なるほど、美貴がやって来た。しかし——凄《すご》い荷物!
「ちょっと、これ見てて。手伝って来るわ」
 と、奈々子は駆け出した。
「奈々子さん! ルミ子も一緒なのね」
「そうらしいです」
「良かったわ。あの子の方が、私より度胸もあるし、助かるわ」
「それにしても、凄い荷物ですね。——私、持ちますよ」
 と、奈々子は、美貴の手から、トランクを受け取ったが——。
「ずいぶん古いトランクですね」
 はっきり言えば、ボロだった。
「ええ。私のじゃないわ」
「じゃ、誰の?」
 美貴は、後ろを指さした。——あの森田が両手に大きなスーツケースを下げて、フウフウ言いながら、やって来る。
「あの人……。あの荷物は?」
「自分のよ。私は、この二つだけ」
「じゃ——一人で三つも?」
「旅に慣れてないと、どうしても多くなるのね」
 それにしても!
 奈々子は頭に来て、森田の方へ歩いて行った。
「ちょっと! そんなんで、ボディガードになるの?」
「大きなお世話だ」
「何を持って来たのよ」
「色々必要な物だ」
「へえ。——呆《あき》れた。私だってそんなにないわよ」
「ワッ!」
 と、森田が声を上げる。
 手に下げていたスーツケースも、相当古かったらしい。
 とめ金が外れて、パッと開いてしまい、中身がドドッと出て来てしまった。
 奈々子は目を丸くした。枕とかけ布《ぶ》団《とん》が飛び出して来たのである。
「俺は枕が変ると眠れないんだ!」
 と、真赤になって、森田があわてて枕をスーツケースへ戻《もど》している。
 これで無事に行けるのかしら?
 行くのはともかく、帰って来るのは、かなり絶望的かもしれない、と奈々子は思わざるを得なかったのである……。
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