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南十字星12

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:12 話しかけて来た男 陰謀だわ! 奈々子は、苦しさに喘《あえ》ぎながら思った。 私としたことが。美貴を守るために、わざわ
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 12 話しかけて来た男
 
 
 陰謀だわ!
 奈々子は、苦しさに喘《あえ》ぎながら思った。
 私としたことが……。美貴を守るために、わざわざこうしてついて来たというのに、ドイツにも着かない内に、敵の陰謀に引っかかってやられてしまうなんて。
 でも——敵も卑《ひ》怯《きよう》だわ。こんなやり方は汚《きた》ない!
「——大丈夫、奈々子さん?」
 と、美貴が、心配そうに訊いた。
 奈々子は、声も出せずに、それでも肯《うなず》いてかすかに笑って見せた。少なくとも、この努力は評価すべきであったろう。
「胃の薬、服《の》む?」
 と、ルミ子も後ろの席から覗《のぞ》き込んでいる。
「大丈夫……。少し楽になったから」
 奈々子は必死の努力でそう言った。
「悪かったわ」
 と、美貴が心配げに、「機内で食事が出るっていうのを話しておかなかったから」
 だって——飛行機は夜の九時半に飛び立ったのだ。夜の九時半なら、みんな夕食を済ましてると考えて当り前じゃないの!
 奈々子は出発前に、時間潰《つぶ》しに入ったレストランで、たっぷり夕食をとってしまったのだ。
 ところが——飛び立って一時間余り、十一時近くになって、夕食が出た。
 海外旅行が初めての奈々子としては、これにはびっくりしたが、「いらない」と断るのは失礼かもしれないと思って(というより、もったいない、と思ったのだ)、出るもの出るもの、ジャンジャン食べてしまったのだった。
 ファーストクラスなので、座席は大きいし、間隔もゆったりしているし……。しかし、それとは裏腹に、奈々子のお腹はパンク寸前、おかげで眠るに眠れず、ウンウン呻《うな》っているのだった。
「誰だって知ってると思ってたから」
 と、ルミ子が言った。「成田で食事してるの見て、奈々子さん、よっぽどお腹空いてるんだな、と思ったんだけど……」
 どうでもいいよ、と奈々子は思った。我ながら、自分のドジに呆《あき》れてしまう。
「——貧乏人は困ったもんだな」
 と、いや味を言っているのはボディガードの森田である。
「何よ」
 と、奈々子はにらんでやった。
「無理して食うからだ。もったいないとかいって」
「フン、あんただって、ガツガツ食べてたくせに」
「無理してまで食ってないぞ」
 と、森田はやり返した。「ちゃんと今日は昼飯から抜いて来たんだ! 参ったか」
 どっちもどっちだ。
「アンカレッジまでは大分あるわ」
 と、美貴が言った。「ゆっくり休んで下さいな」
「ええ……。生きてドイツへ着けたら、神社へ行っておさい銭を上げなきゃ」
「ドイツに神社があるか」
 と、また森田がにくまれ口をきく。
「森田さん」
 と、美貴はキッと、この頼りないボディガードをにらんで、「あなたは私だけじゃなくて、奈々子さんを守るのも仕事なんですからね」
「はあ」
 森田は座席のリクライニングを一杯に倒して、「しかし、その女は丈夫そのものです。殺したって死にゃしませんよ」
 ヤッ、と弾《はず》みをつけて、後ろへ体を倒したが、クッションが良すぎて、はね返り、
「ワッ!」
 みごとに座席から上半身がはみ出し、逆さに床へ落っこちてしまった。
「ざま見ろ」
 と、奈々子がベエと舌を出す。
 スチュワーデスが、笑いをかみ殺して、真赤な顔をしていた。
 ルミ子がキャッキャッと声を上げて笑い出す。
 ——まことににぎやかな旅の始まりとなったのだった。
 
 ドイツへ果たして無事に辿《たど》り着けるかしら、という奈々子の不安も、何時間かウトウトして、ルフトハンザ機がアンカレッジへ降りたころには、大分薄らいで来ていた。
 アンカレッジはもちろんアラスカの都市である。ここでジャンボ機は燃料補給や乗員の交替で、一時間ほど停るのだった。
 その前に起こされて朝食が出たが、さすがに奈々子も今度は遠慮することにした。
 アンカレッジでは、空港の一画だけを自由に歩ける。
 免税品の売店がズラッと並んで、食べ物のカウンターもある。しかし、奈々子はアイスクリーム一つも見たくない気分だった。
 それでも、時計だの香水だののケースを眺めていると、大分気分も良くなって来る。
 空港を見渡す椅《い》子《す》に腰をおろしていると、
「奈々子さん」
 と、ルミ子がやって来た。「どう、ご気分は?」
「最低の状態からは、何とか這《は》い上りつつあるわ」
「良かった。奈々子さんって元気一杯にしてないと、何だか別人みたい」
 元気だけが取り柄《え》みたいね、と奈々子は思った。——ま、それも事実ではある。
「私、ちょっと売店を覗《のぞ》いて来るわ」
 と、ルミ子は言った。
「どうぞ」
「乗る時間になったら、アナウンスもあるけど、ここへ呼びに来るわね」
「よろしく」
 乗り遅れて置いてかれたらことだ。
 一人になって、表を見ていると……。
「——失礼」
 と、声がした。「お邪魔かな」
 隣に座ったのは、髪が半ば白くなった、五十代半ばくらいと見える紳士だった。高そうなジャケットを着て、パイプなど手にしているのが、いかにも似合う。
「いえ別に……」
 と、答えてから、思い出した。
 同じファーストクラスの客の一人だ。
「あの……同じ飛行機の……」
「そうです。いわばお仲間ですな」
 と、その紳士は微《ほほ》笑《え》んだ。
 どことなく、志村を思わせるが、こちらの方は、ビジネスマンというよりも、どっちかというと芸術家風。
「お騒がせして、すみません」
 と、奈々子は謝《あやま》った。
「いや、旅は楽しい方がいい。にぎやかなのも大いに結構」
「恐れ入ります」
「しかし——何となく面白いグループだな、と思いましてね。四人、ですな」
「ええ」
「男性一人は離れて座っているし、どうも、あまりファーストクラスに慣れていない方のようだ」
「ボディガードです」
「なるほど」
 と、その紳士は大げさに肯いて、「ではVIPのご旅行というわけですな」
「いえ、別に……。私も初めてです。ファーストクラスどころか、セカンドもサードも、乗ったことなくて」
 野球と間違えられそうである。
「あなたはあの若いお二人の先生といったところですかな」
「先生?」
 ちょっとショックである。美貴は二十四か五になっているのだ。私、まだ二十歳よ!
「いえ——ただの知人で」
「そうですか。いや、あの二人が、何だかあなたのことを頼りにしておられるように見えたのでね」
「そ、そうですか。まあ、多少頼られることもありますけど」
 そう答えて、はて、この人はどうしてそんなことを訊くんだろう、と思った。
 もちろん、単なる好奇心ってこともあるだろうが……。
 こりゃ用心した方がいいかもしれない。何といっても、用心棒ではないまでも、奈々子は美貴のことを助けるためにやって来ているのだから。
 相手が何か他のことを訊《き》いて来る前に、
「失礼ですけど、何をなさってらっしゃるんですか?」
 と、奈々子は訊いてみた。
「私ですか? いやまあ……。何といいますかね。暇を持て余してる人間、とでも申し上げておきましょうか」
「まあ、羨《うらやま》しい。そんな方もいらっしゃるんですね。——やっぱりドイツへ?」
「ええ」
「どちらへ行かれるんですか?」
「まあ……取りあえずはフランクフルトに泊って、それからゆっくり決めたいと思っています」
「もう何度も行かれてるんでしょうね」
「そうですね。もう二、三十回は——」
「二、三十回! 凄《すご》い!」
 と、奈々子はオーバーに驚いて見せた。「凄いお金持なんですねえ」
「いやいや……」
 何だか相手も、奈々子からこれ以上訊かれても困ると思ったらしい。立ち上って、
「お邪魔しましたな」
「いいえ。とんでもない」
「では、また……」
 歩いて行く紳士の後ろ姿を見送っていると、
「おい」
 と、いきなり肩を叩《たた》かれ、びっくりした。
「何よ、気楽に触んないで」
 と、奈々子は森田をにらんだ。
「心配して、声をかけてやったんだぞ」
 と、森田はふくれている。
「あんた用心棒でしょ。少し怪しい客はいないか、とか調べたらどう?」
「何の話だ?」
「今、ここにいた人よ。ファーストクラスの客だけど、何だかいやに私たちのこと、詳しく訊きたがってたわ」
「ふーん。物好きなんだろ、お前に話しかけるぐらいだから」
「もう一回言ってみな」
 と、拳《こぶし》を固めて突き出して見せる。
「それでも病人か。——よし、ちょっと後を尾《つ》けてみよう」
「もう遅いわよ」
 と、奈々子は言ってやったのだった。
 ——飛行機に戻《もど》ると、あの紳士は先に席について、イヤホンで、音楽を聞いて目を閉じていた。
「あの人、見たことあります?」
 と、奈々子は美貴に、そっと訊いてみた。
「どの人?——あの方? いいえ、全然知らない」
「やっぱりね……」
「何かあったの?」
「そうじゃありませんけど、要注意ですね」
 奈々子はそう言って、いつの間にやら、胸や胃の、気持の悪さがすっかり治ってしまっていることに気付いたのだった……。
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