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南十字星16

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:16 押し倒されて 外国で、男性から話しかけられて、言葉も分らないのに、何となくニヤニヤして、「ヤアヤア」 とか言ったりす
(单词翻译:双击或拖选)
 16 押し倒されて
 
 
 外国で、男性から話しかけられて、言葉も分らないのに、何となくニヤニヤして、
「ヤアヤア」
 とか言ったりするのが、日本の女の子の悪いくせ。
 などと、ガイドブックとか、女性週刊誌の〈海外旅行で被害にあわないために!〉なんて特集によくのっている。
 それは奈々子とて知らないわけではなかった。しかし、頭で分った通りに行動できりゃ、人間誰も苦労しないのである。
 ルミ子はハンスと相変らず元気に踊っていて、美貴はちょっとトイレに立っていた。そこへ——。
 ペラペラペラ、と何やらドイツ話で話しかけられて、テーブルに残っていた奈々子は焦った。いや、果してそれがドイツ話であったかどうかも、定かではないが、日本語以外なら、何語だって同じことである。
 そうそう。テーブルにはもう一人、あの森田という頼りないボディガードが座っていたのだが、時差ボケに、ここでワインなど飲んだせいか、コックリコックリ居眠りをしていたのだ。
 従って、奈々子は一人きりでいるのと同じだったわけで、そこへ、
「ペラペラ」
 と、話しかけられてしまったのである。
 いや、その若い男は、もちろん「ペラペラ」と言ったのではない。何か言ったのだろうが、奈々子にはさっぱり分らない。
 ここで、奈々子は、「絶対にやってはいけないこと」をやってしまった。相手がにこやかに微《ほほ》笑《え》んでいるので、やはりこっちも笑わなきゃいけない、と思った。
 日独の親善のために——というのはオーバーだが——奈々子は、つい、ニコニコ笑いながら、
「ヤアヤア」
 と、言ってしまった。
 そしたら、その若い男にいきなりギュッと腕をつかまれて、ぐいと引張られた。
「ワッ! 危《あぶな》いじゃないの! 転んだらどうすんのよ!」
 と、奈々子は抗議したが、全然相手には通じない。
 何だかわけの分らない内に、フロアの真中へ引張り出されてしまった。
 ともかく、一緒に踊ろう、と誘われたらしいのだ。しかし、奈々子としては、こんな所まで来て、恥をさらしたくはなかった。
 将来、もしハネムーンにフランクフルトへ来ることがあって、このディスコで、
「ちょっとおかしな日本の女が、ここで珍妙な民族舞踊を披《ひ》露《ろう》した」
 なんてのが語りぐさになっていたりしたら、見っともないではないか!
 で——奈々子は、フロアの中央に、頑《がん》として突っ立って動かずにいたのだった。
 すると——さっき見かけた、あの金髪の男が、不意に目の前に現われた。
 さっきは、すぐ人の間に紛《まぎ》れて、見失ってしまったのだが、今度は目の前に立っているのだ。
 チャンス、と思った。それに、近くで見ると、確かにあの時の男のように見える。
 その男は、誰かを捜している様子だった。
 踊っている人の間をかき分けて、右へ左へ、忙しく頭をめぐらせている。
 奈々子は、その男の腕をつかんだ。相手がびっくりして、奈々子を見る。
「捕まえた! ちょっと来てよ! あんたに話があるんだから」
 もちろん、こっちの言ってることなんて分らないだろうが、構やしない。奈々子は、その男を、自分たちのテーブルへ引張って行こうとした。
 すると——。
「何するんだ!」
 と、その金髪の男が、日本語で言った。
 これには奈々子も仰天した。
 何するんだ、というドイツ語があるのかしら?
「あの——あんたドイツ人じゃないの?」
 と、奈々子は訊《き》いた。
「ドイツ人だって、日本語をしゃべる人間はいる」
 と、その男は、もっともなことを言った……。
「じゃ、ちょうどいいわ。ちょっと来てよ」
 と、奈々子が引張ろうとすると、
「僕は忙しいんだ! 火遊びの相手がほしいんなら、他のにしてくれ」
 いくらかは外国人ぽいアクセントだが、実にさまになった日本語だった。
「あのね——」
 と、奈々子は言った。「…………」
 ちゃんと奈々子はしゃべったのである。
 しかし、それまでは比較的静かな音楽が流れていたフロアに、いきなり、耳をつんざく大音響が鳴り渡って、何を怒《ど》鳴《な》ろうと、全く聞こえなくなってしまった。
 その男も怒鳴り返したが、奈々子には全然聞こえない。それに向って、また奈々子が怒鳴る。
 ——二人は実に虚《むな》しいやりとりをくり返していた。
 その内、相手の男も、うんざりしたように天井へ目をやると、いきなり奈々子の手を引いて、どんどん歩き始めた。
「ちょっと!——私のテーブルはあっちよ! あっち!」
 と、抗議したが、もちろん相手の耳には届かない。
 どうも、今夜は強引にどこかへ引張られる夜のようだ。
 結局、奈々子は店の外まで連れ出されてしまった。
「——あんた、何よ、かよわい女の子を」
 自分で言うセリフにしては、少々妙なものだった。
 男は、やっと手を離すと、奈々子と向い合って、
「君の相手をしてるヒマはない! それが分れば、とっとと帰れ!」
 ——このころになると、その男が、空港であの老紳士のバッグを奪《うば》った男だという奈々子の確信は、揺ぎ始めていた。
 何となく、あっちはもう少し若かったような気がする。
 ま、こっちも、もちろん若い。しかし、身なりはもう少しきちんとしていて、ヘアスタイルも、ちょっと違ってるみたいだし……。
「あのね」
 と、奈々子は言った。「変な誤解しないでよ」
「誤解?」
「私はね、あんたに、ちょっと確かめたいことがあっただけ」
「何だ、一体?」
「あの——私とぶつからなかった?」
「君と?」
「空港で——その——私と」
「空港? いつの話だ?」
「いえ、別に……。違ってりゃいいの」
 奈々子は、どうもここは引っ込んだ方がいい、と判断した。
「待てよ。空港でぶつかった、なんて、まるで僕がスリかかっぱらいみたいじゃないか!」
「当り」
「え?」
「本当にそうなの?」
「冗談じゃない、僕は——」
 と、言いかけて、その男は、言葉を切った。
「あのね、やっぱり人違いだったみたい。失礼しました」
「動かないで」
「え?」
「じっとして」
「何よ、忙しいとか言っといて——」
 突然、奈々子は、その男に抱きかかえられて、地面に押し倒された。
 いきなり、こんな所で!——外国の男って、何てせっかちなんだ! このエッチ!
 だが、それは奈々子の誤解だった。
 バン、バン、という音が夜の街に響いて、ガラスの砕ける音がした。
 続いて、車の音。猛スピードで、車が走り去って行く。
「——やれやれ」
 と、男は起き上って、「びっくりしただろう」
「何事?」
 と、奈々子はキョトンとしている。
「銃で撃たれるところだったんだ」
「撃たれる?」
 奈々子は、立ち上った。——すぐそばに停《とま》っていた車の窓が、粉《こな》々《ごな》に砕けている。
「これが——?」
「誰かが、拳《けん》銃《じゆう》で狙った。君は、何か憶《おぼ》えが?」
「私? まさか! こんな——」
「かよわい女の子を、か」
 金髪の男は、愉快そうに笑った。「いや、面白い子だな、君は」
「あんた、どうしてそんなに日本語がうまいの?」
「日本の大学に通ってたからだ。君は東京から?」
「そうよ」
 と、奈々子が肯《うなず》く。「だけど——」
「奈々子さん」
 と、店から出て来たのは、ルミ子だった。
 ハンスも一緒だ。
「良かった! ここだったのね。姿が見えないから、お姉さんが心配して——。この人、どなた?」
 と、その金髪の男を眺める。
「知らない」
「じゃ、僕は失礼」
 と、日本語で言って、その男がさっさと歩いて行ったので、ルミ子はびっくりした。
「——驚いた! 奈々子さん、それじゃあの人と、どこかへ行くつもりだったの?」
「どこか、って?」
「どこか……。恋を語るとか」
「よしてよ!」
 と、奈々子は言った。「ここで押し倒されただけ」
 ルミ子が目を丸くする。
 と、あの男、少し行ってから、クルッと振り向くと、トコトコ戻《もど》って来た。
「な、何よ。文句あんの?」
 と、奈々子は強がって見せた。
 何しろこっちは三人である。
「僕はペーター。君は?」
「私?——奈々子」
「そうか」
 で——そのまま、また行っちゃったのである。
「あれ、何?」
 と、ルミ子がキョトンとして見送っている。
「さあ」
 と、奈々子は首をかしげた。
 しかし——本当に今の男、ペーターとかいったが、あの空港の、かっぱらいとは別人だろうか?
 奈々子には、よく分らなかった。
「——あら、いたのね」
 と、美貴が店から出て来た。「良かったわ!」
「ご心配かけて」
「いいえ。何でもなかったのなら、いいんだけど……」
「大したことないんです」
 と、奈々子は言った。「何だか、ペーターとかいう男に押し倒されて」
「え?」
「それと、ピストルで撃たれそうになったんです。それだけ」
 自分で言ってから、奈々子は、結構大変なことだったのかもしれないわ、と思ったのだった。
 ともあれ、フランクフルトの夜は、何とか死人も出ずに終り——ただ、ホテルへ引き上げてから、みんなは気付いたのだった。
 あのディスコに忘れものをして来たことに。
 ——森田が一人で、店に残っていたのである……。
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