日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

南十字星31

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:31 炎が照らす顔 二時間は、アッという間に過ぎてしまっていた。 奈々子は、ベッドに腰をかけて、迷っていた。 約束は約束。
(单词翻译:双击或拖选)
 31 炎が照らす顔
 
 
 二時間は、アッという間に過ぎてしまっていた。
 ——奈々子は、ベッドに腰をかけて、迷っていた。
 約束は約束。たとえ、あんな男との約束でも、守らなきゃいけない、という気持がある。
 一方で、自分の身を守る権利ってものがあるのも確かである。しかし——どうやって?
 そろそろ時間だ。
 正直に、言われた通り、食事をして、お風呂にも入っているのが、奈々子らしいところだ。
 足音がした。——来た!
 ガチャリと鍵《かぎ》が回り、ドアが開く。
 すると、そこに立っていたのは、奈々子を助けに来たペーターだった!
 てなことはないか……。やっぱり、そこには神原が立っていたのである。
「ほう」
 神原は、早くも目をギラつかせて、息づかいも荒くなっていた。「——仕《し》度《たく》を終えて、待っておられたようですな」
「別に、待っちゃいませんけど」
 と、奈々子は呟《つぶや》いた。
「では、早速」
 と、神原は上衣を脱いだ。「——奥さん」
「は?」
「私はね、正直なところ、もっとお上品ぶった、面白味のない女を想像していたんですよ」
「そうですか」
「しかし、あなたは、ユニークな人だ」
 悪かったわね、と奈々子は心の中で言ってやった。
「私はね、あなたのような女が好みなんですよ」
 と、神原はネクタイを外した。
 あんたなんか好みじゃないよ、と言ってやりたかった。
「実に楽しみだ! どんな味がするか……。さ、力を抜いて、私に任《まか》せて下さい」
 と、神原は近寄って来た。
 さすがに、奈々子も体をつい固くして、よけてしまう。
「怖がることはありません」
 本当に怖がらなきゃいけないのは、むしろ神原の方なのだが。「——私にすべて、任せておけば、天国へ行く気分ですよ」
「あなたは地獄ね」
「面白い方だ」
 と、神原は言った。「約束を忘れないで下さいね」
「分ってます」
「決して逆らわない、というお約束ですからね……」
 神原が奈々子の肩を抱く。
 まだ奈々子は迷っていた。——約束か。
 どうしたらいいんだろう? 十円玉を投げて決めようか?
 でも、その時間もなかった。神原は、いきなり奈々子を抱いてキスしようとしたのだ。「あ、あの——もう少しゆっくり——」
「男は力強さ、強《ごう》引《いん》さです!」
「それは——誤解ですよ。女は乱暴にされるのが嫌いなんです!」
 神原が奈々子をベッドへ押し倒す。身もだえしたが、神原の方はもう夢中で——。
 ズシン、という音と共に、家が揺れた。
「何だ?」
 と、神原が顔を上げる。「地震かな」
「NHKの地震速報、見たら?」
 と、奈々子は言った。
 すると、また家がぐらぐらと揺れた。
「ワッ!」
 飛び上ったのは神原である。「地震だ! 助けて!」
 奈々子のことなど忘れてしまったように、床にしゃがみ込むと、頭をかかえて震えている。
 奈々子は呆《あき》れて、
「地震、弱いの?」
 と、訊《き》いた。
「当り前だ! 地面が割れて、のみ込まれてしまうんだ! 神様!」
 と、神原は金切り声を上げている。
「そんな大地震じゃないわよ」
「だめなんだ……。昔、子供のころ、『十戒』って映画で、悪い奴が地割れに落ちるのを見てから……」
「ああ、あれ。私、リバイバルで見た」
 と、呑《のん》気《き》なことを言っていると、ドアが凄《すご》い勢いで開いた。
「——リヒャルト!」
 奈々子は仰天した。
 包帯をグルグルお腹に巻いた上にシャツを引っかけている。そして手には機関銃。
「大丈夫なの? 動いたら、出血するんじゃない?」
 と、奈々子が心配する。
 リヒャルトは、神原がポカンとしているのを見て、銃口を向けた。
「よせ!」
 と、神原が飛び上る。「助けてくれ!」
「ドイツ語で言えば?」
 と、奈々子はアドバイスしてやった。
 機関銃がバリバリ音をたてて火を吹いた。
 床の板が砕けて木片が飛び散る。神原は、
「キャッ!」
 と、飛びはねて、そのまま後ろへ引っくり返り、のびてしまった。
 弾丸が当ったわけじゃない。気絶してしまったのである。
「リヒャルト——」
 駆け寄って来たリヒャルトが、奈々子の手を取ると、その甲にキスした。
「——そうか。誰かから聞いたのね、私と神原のこと」
 奈々子も嬉《うれ》しかった。「でも、あんたが助かって良かったわ」
 奈々子は、リヒャルトの額にチュッとキスしてやった。
 リヒャルトが奈々子の手を引いて、急いで部屋を出る。
 一階では、神原の手下が二人、完全にのびていた。
 外へ出て、奈々子は、
「これが地震だったのね」
 と目を丸くした。
 大きなトラクターが、山荘の外壁に鼻先を突っ込んでいた。柱が折れて、このまま突き進んだら、山荘が潰《つぶ》れてしまいそうだ。
 リヒャルトに促《うなが》されて、奈々子はトラクターに乗った。
 そして、リヒャルトも乗ろうとしたが……。
 リヒャルトが振り向いた。
「車の音だわ」
 ずっと遠くだが、車の灯が、いくつか並んでやって来る。
 リヒャルトが、奈々子の手を取って、トラクターからおろした。この車じゃ、とても逃げられまい。
「隠れましょ」
 幸い、山荘の裏手は林である。二人して、その中へと入って行き、身をひそめた。
 やがて車がやって来る。——四台も。
 山荘の前に停ると、男たちが出て来た。手に手に、銃を持っている。
 誰かしら?——みんなドイツ人らしい。
 二番目の車に、誰かが乗っているらしく、声がした。——日本人かしら、と奈々子は思った。
 ドイツ語ではあるが、発音や、声の感じが日本人のようだ。
 男たちが、山荘の中へと入って行った。
 ドタドタと中を歩き回る足音が聞こえて来る。——しばらくして、一人が戻《もど》って来ると、二番目の車の男に、話しかけた。
 短い返事。二言三言、会話があって、男はまた山荘の中へ戻って行った。
 どうなってるんだろう?
 奈々子は、息を殺して、その光景を見つめていた。二番目の車には、誰が乗っているのか?
 突然、山荘の中から銃声が聞こえた。五回六回。——そして銃声が止んだ。
 奈々子の顔から、血の気が引いた。
 神原と、下の二人の男……。きっと殺されたのだ!
 男たちが出て来る。そして——少し間があって、奈々子は山荘の窓から、煙がゆっくりと立ち上るのに気付いた。
 火が山荘の窓から吹き出す。
 車が少し後退して、山荘が燃え上るのを見物しているようだ。
 ——奈々子の体が震えた。
 何てひどいことを……。
 木造の山荘は、たちまち炎に包まれて、火はあのトラクターにも燃え移った。
 山荘が炎の中に崩れ落ちる。辺りは、真昼のように明るくなった。
 そして、二番目の車のドアが開くと、一人の男が、降り立った。
 白っぽいスーツの男。日本人だ。
 葉巻をくわえて、楽しげに、燃え落ちる山荘を眺めているのだ。
 その顔が、炎に照らされて、はっきりと見えた。
 奈々子は息が止るかと思った。
 それは、美貴が見せてくれた写真で知っている顔——三枝成正に違いなかったのだ。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%