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泥棒物語21

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:幸運・不運 たった一日。そう、一日だけのことなのだ。 京子は、自分へそう言いきかせていた。 浅倉の帰りが、一日遅《おそ》
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 幸運・不運
 
 たった一日。——そう、一日だけのことなのだ。
 京子は、自分へそう言いきかせていた。
 浅倉の帰りが、一日遅《おそ》かったと思えば……。そんなのは、珍《めずら》しくも何ともないことだ。
 「——何を考えてるんです?」
 と、浅倉が訊《き》いた。
 京子はふっと我《われ》に返った。
 「あ、いえ——別に」
 レストランの中は、静かだった。ピアノのメロディーが、かすかに流れている。
 少し薄《うす》暗《ぐら》い照明が、余《よ》計《けい》に静けさを感じさせた。
 来てしまった。——京子は、心の中で呟《つぶや》いた。もう何十回目かの呟《つぶや》きだった。
 どうして来てしまったのだろう?
 決して会わないと、言ったのに。明美にもそう言ったのに。
 明美は、気が付いているだろうか?
 そう。——たぶん分っている。あの子は、ドライなようで、勘《かん》は鋭《するど》いのだ。
 傷《きず》つきやすい若《わか》さを、ドライなポーズで守っている。
 後ろめたい思いは、消えなかった。明美に対しても、エミに対しても。そして、自分自身に対しても。
 しかし、ここまで来た以上、引き返すわけにいかないということも、よく分っていた……。
 「エミのことですね」
 と、浅倉が言った。
 「ええ」
 京子は肯《うなず》いた。「明日《あした》、すぐに行ってあげて下さいね」
 「もちろんです。一《いつ》緒《しよ》に行ってやって下さい。エミも喜びます」
 京子は、答えずに微《ほほ》笑《え》んだ。
 今夜、浅倉と一夜を過《すご》して、明日、エミの前に顔を出せるだろうか?
 京子にも、それは分らなかった。
 浅倉の乗った飛行機が事《じ》故《こ》にあったかもしれない。——あのニュースが、京子の心を決めさせた。
 自分でも意外なほど、京子は動《どう》揺《よう》したのである。
 それだけ、寂《さび》しかったのだろうか? そうかもしれない。
 長い間、たった独《ひと》りで生活して来て、孤《こ》独《どく》にはすっかり慣れたつもりでいたが、そうでもなかったようだ。
 ——二人は、時間をかけて食事を終えた。
 心はせいているのに、わざわざゆっくりと食事をしていたような気がする。
 「行きましょうか」
 「ええ」
 「落ちつける所を捜《さが》してあります」
 と、浅倉は、立ち上って、京子を促《うなが》した。
 もう、ここまで来て、ためらうわけにはいかない。京子は、エミのことも、明美のことも、心の奥《おく》へしまい込《こ》んで、蓋《ふた》を閉《と》じた。
 浅倉は、郊《こう》外《がい》まで車を飛ばして、閑《かん》静《せい》な林の中の日本旅館へと京子を連れて行った。
 京子としては、浅倉のその気のつかいようが嬉《うれ》しかった。もし、都心のラブホテルにでも連れて行かれたら、惨《みじ》めな気持になったろう。
 若《わか》い恋《こい》人《びと》たちというならともかく、人目を忍《しの》んでの、道ならぬ恋なのだ。都会の喧《けん》噪《そう》から離《はな》れて、別世界のような静けさの中で、やっと心も体も休まるというものである。
 ——清《せい》潔《けつ》で広い和室で落ちつくと、二人は順番に風《ふ》呂《ろ》へ入って、浴衣《ゆかた》に替《か》えた。
 ほんの少し、ビールなど飲んで、隣《となり》の部屋には、もう床《とこ》が敷《し》かれている……。
 まるで、映画か小説の中のようだわ、と京子は思った。——大人《おとな》の恋。
 大人の恋、か……。
 そう、私《わたし》たちは二人とも大人なんだ。見っともなく、すがりついたり、喚《わめ》いたりはしない。
 少し落ちつくと、もう夜、十二時に近くなっていた。
 「——時差のせいかな。変なときに眠《ねむ》くなりますよ」
 と、浅倉は笑《わら》った。
 「じゃ、今は?」
 「あなたが目の前にいては、眠くなるわけがありません」
 「まあ、お上《じよう》手《ず》ね」
 と、京子は笑った。
 浅倉は、ビールのコップを置いた。
 「行きますか」
 「はい」
 京子は肯《うなず》いた。
 二人は、立ち上ると、隣《となり》の部屋へ行った。浅倉が京子を抱《だ》きしめると、そのまま京子は体中の力を抜《ぬ》いて、身を委《ゆだ》ねた……。
 
 塚《つか》原《はら》は、ぼんやりと家の中に座《すわ》っていた。
 どれくらい時間がたったのだろう?
 啓子が、機《き》嫌《げん》を直して戻《もど》って来るかもしれない。——塚原はそう思っていた。
 ちょっと考えれば、啓子だって、あれほどの仕《し》度《たく》をして出て行ったのだ。意地でもやすやすとは帰って来ないことぐらい、分りそうなものだが、ともかく、塚原としては、啓子が出て行ったということ自体が、信じられずにいたのだ。
 塚原は、若《わか》いころから、一人で暮《くら》したという経《けい》験《けん》がない。こうして取り残されてしまうと、どうしていいのか分らないのである。
 「啓子……」
 塚原はポツリと呟《つぶや》いた。
 今さらのように、自分がどんなに啓子に頼《たよ》り切って生活していたか、思い知らされた。その啓子を、俺《おれ》は裏《うら》切《ぎ》っていたのだ……。
 玄《げん》関《かん》のチャイムが鳴って、塚原は飛び上った。
 「啓子!」
 と大声で叫《さけ》んで、玄関へと駆《か》けつけた。
 塚原は、啓子が帰って来たのだとばかり思っていたから、ためらいもせずに、パッとドアを開けた。
 「——やあ」
 塚原は、目の前に立っている津《つ》村《むら》に、しばらくしてから、声をかけた。
 「すみません。突《とつ》然《ぜん》お邪《じや》魔《ま》して」
 と、津村は言った。
 「いや……構《かま》わないよ。入ってくれ」
 塚原は、津村を中へ入れた。
 そうか。考えてみれば、これがもし啓子なら、玄《げん》関《かん》は鍵《かぎ》などかかっていなかったのだから、勝手に入って来ただろう。
 「——夜分、すみません」
 津村はソファに、ちょっと疲《つか》れた様子で腰《こし》をおろした。
 「いや、いいんだ。どうした?」
 と、塚原は訊《き》いた。
 「はあ、実は、——」
 と、言いかけて、津村は、「奥《おく》様《さま》はいらっしゃらないんですか?」
 「う、うん」
 塚原はあわてて、「ちょっとね——その——親類の所へ急な用事で出かけてるんだ」
 「そうですか。いえ、その方が、僕《ぼく》はありがたいんです」
 津村は、いやにくたびれているように見えた。
 「どうした? 元気ないじゃないか」
 塚原だって、そんなことを言えた柄《がら》ではないのだが。
 「ええ。——参りました」
 津村は、深々と息をついた。
 「何か——例の件《けん》で、まずいことでもあったのかね」
 「いや……。それが関係あるとは思えないんですが」
 と、津村は首を振《ふ》る。
 「それじゃ……」
 「実は、華子に男がいるらしいんです」
 「何だって?」
 塚原の声が、思わず大きくなったのも当然と言えるだろう。
 「本人にはまだ問《と》い詰《つ》めたわけじゃないんです」
 と、津村は言った。「訊《き》くのが怖《こわ》くて。——だらしのない話ですがね」
 苦《く》笑《しよう》する津村を、塚原はじっと見つめていた。
 「相手は分ってるのかい?」
 「いいえ。——しかし、誰《だれ》かいるのは確《たし》かなんです。まさか、あいつが浮《うわ》気《き》するなんてね……」
 「それは——大変だなあ」
 と、塚原は言った。
 他《ほか》に言いようがないのだ。
 「どうしたもんでしょうね、塚原さん」
 と、津村は訊いた。「こんなときは、一気にワッと喧《けん》嘩《か》した方がいいんでしょうか?」
 塚原にも答えられない質《しつ》問《もん》だった。
 
 明美は、どうせ京子も帰らないのだし、と、のんびりパーラーで甘《あま》いものなど食べて、アパートへと戻《もど》って行った。
 途《と》中《ちゆう》、もちろん時間は早いので、結《けつ》構《こう》人通りもある。明美は口《くち》笛《ぶえ》など吹《ふ》きながら、歩いていた。
 アパートの手前、ちょっと通りから外《はず》れた薄《うす》暗《ぐら》い道へ入る。といっても、ほんの十メートルほどの距《きよ》離《り》なのだ。
 その細い道に、ライトバンが一台停《とま》っていた。
 「邪《じや》魔《ま》だなあ」
 と、明美は呟《つぶや》いた。
 車の中は、暗くて、人もいないらしい。
 仕方なく、明美はライトバンのわきを、すり抜《ぬ》けるようにして歩いて行った。
 突《とつ》然《ぜん》、前に人《ひと》影《かげ》が立った。明美はギョッとして立ちすくんだ。
 同時に、背《はい》後《ご》から、抱《だ》きつかれる。
 「キャッ!」
 と、明美は声を上げた。
 口を、布《ぬの》でふさがれた。前にいた男が、明美の両足をかかえ上げた。
 恐《きよう》怖《ふ》を覚えて、明美は身をよじった。暴《あば》れようとした。
 しかし、ガッチリと押《おさ》え込《こ》まれた手足は、動くに動かせない。
 「急げ!」
 と、声がした。
 どうやら、もう一人いるらしい。ライトバンの後ろの扉《とびら》が開いた。
 「中へかつぎ込め!」
 明美は、そのまま、車の中へとかかえ込まれた。
 「おとなしくしろ!」
 男の声がして、同時に、明美の目の前に、銀色に光るナイフが突《つ》きつけられる。
 明美も、さすがに血の気がひいた。
 「——いいか。騒《さわ》ぐと、ただじゃ済《す》まねえからな」
 男はナイフの刃《は》の先を明美の頬《ほお》に軽く当てた。「分ったか?」
 明美は、ちょっと肯《うなず》いて見せた。
 この男たちは何だろう? どうしようというんだろう?
 「OK。しっかり押えとけよ。俺《おれ》が運転するからな」
 一人が、運《うん》転《てん》席《せき》へ移る。
 残る二人が、しっかりと明美を床《ゆか》へ押《お》しつけるようにしているので、全く身動きはできなかった。
 車がブルル、と揺《ゆ》れて動き出した。
 「——ここは一方通行なんだな。よし、バックしよう」
 車が動き出した。
 しかし、運転する方も焦《あせ》っていたらしい。曲り角から後《こう》尾《び》がぐっと出たところへ、自転車がぶつかった。
 ガチャン、と派《は》手《で》な音がした。
 「畜《ちく》生《しよう》!」
 運転していた男が舌《した》打《う》ちした。
 「構《かま》わねえ! 行っちまえ!」
 と、ナイフを持った男が言った。
 だが、天は明美の味方だった。
 「おい! 降《お》りろ!」
 と、怒《ど》鳴《な》って、運《うん》転《てん》席《せき》の窓《まど》の所へ顔を出したのは——警《けい》官《かん》だったのである。
 「逃《に》げろ!」
 と、運転席の男が叫《さけ》んだ。
 ライトバンの後ろの扉《とびら》を開けて、残る二人が飛び出す。
 「待て! おい、待て!」
 警官も、突《とつ》然《ぜん》のことで、ちょっと呆《あつ》気《け》に取られていたが、あわてて三人の後を追いかけて行った……。
 
 「塚原さんも……」
 津村は、信じられない様子で、「本当に浮《うわ》気《き》してたんですか?」
 「うん。お恥《は》ずかしい」
 と、塚原は言った。「この年齢《とし》をして、若《わか》い女の子とね」
 「南千代子君か。——そうですか」
 「君の耳には入ってないか?」
 「ええ。女子社員の間だけなんでしょうね、きっと」
 「参ったよ!」
 塚原は、周囲を見回して、
 「女《によう》房《ぼう》に出て行かれて、途《と》方《ほう》にくれてたところだ」
 「驚《おどろ》いたなあ。塚原さんは、そんなことには縁《えん》のない人だと思ってたのに」
 「僕《ぼく》は意《い》志《し》の弱い男なのさ」
 と、塚原は笑《わら》った。
 「でも……どうしたもんでしょうね」
 「うん」
 二人とも、考え込《こ》んでしまった。
 もちろん、塚原も、津村も、こうして考え込んでいるだけでは、何も解《かい》決《けつ》しないのは分っているのだが、といって、どうしていいのか分らないのである。
 「——ともかく」
 と、塚原は言った。「焦《あせ》って解決しようとしてもだめだ、ってことだ」
 「そうですね」
 「僕《ぼく》は、まず南千代子と別れる。それから時間をかけて、女《によう》房《ぼう》が戻《もど》って来るように、努力するさ」
 「僕の方も……華子の奴《やつ》と、ゆっくり話し合えるように雰《ふん》囲《い》気《き》を作りますよ」
 「それもいいな」
 ——少しして、二人は、ちょっと笑《わら》った。
 「どうも男どもはだらしがないな」
 と、塚原は言った。
 「そうですね。浦《うら》田《た》さんだけかな、しっかりしてるのは」
 「うん。——そうだ、浦田君へ電話してみよう」
 塚原は、電話の方へと歩いて行った。
 塚原は、浦田京子のアパートへ、電話を入れた。
 何となく、京子に相談してみたいという気になっていたのである。
 しばらく、電話は鳴り続けた。
 「——留《る》守《す》かな」
 と、塚原が受《じゆ》話《わ》器《き》を置きかけたとき、向うが出た。
 「はい、浦田です」
 が、京子の声ではない。
 「あの——塚原ですが」
 「あ、お父さん!」
 塚原は、仰《ぎよう》天《てん》した。
 「明美! お前——」
 「お父さん……」
 しばし、沈《ちん》黙《もく》があった。
 「明美、そこにいたのか、ずっと?」
 「そんなに長くないわよ」
 「しかし——浦田君は何も言わなかった」
 「私《わたし》が、黙《だま》っててくれって頼《たの》んだのよ」
 「そうか……。元気なのか?」
 「うん」
 「それで——お前、一人か?」
 「そうよ」
 明美は、ちょっと笑《わら》って、「駈《か》け落ちは嘘《うそ》なのよ」
 「何だ、そうか……」
 塚原はホッと息をついた。
 「ねえ、お母《かあ》さんは?」
 「うん、それが——」
 「寝《ね》込《こ》んじゃったの?」
 「いや。家出した」
 明美もさすがに絶《ぜつ》句《く》した。
 話を聞いて、明美は、
 「自《じ》業《ごう》自《じ》得《とく》よ」
 と言った。
 「うん、分ってる」
 「でも、いいわ。——帰ってあげる」
 「本当か?」
 「お父さん、飢《う》え死にしちゃうでしょ、一人じゃ」
 「すまんな」
 「お母さんのことは、明日《あした》にでも心当りを捜《さが》してみましょうよ。きっと、戻《もど》って来ると思うけど」
 「そうかな」
 「そうよ。——お父さんの後《こう》悔《かい》の度《ど》合《あい》にもよるけど」
 「これ以上後悔できないくらいだよ」
 明美は笑《わら》って、
 「そこがお父さんらしいとこね」
 と言った。「でも——ねえ、迎《むか》えに来てくれる。私《わたし》、さっき襲《おそ》われかけたの」
 「何だと?」
 「私のこと、浦田さんと間《ま》違《ちが》えたのかもね。だから——」
 「鍵《かぎ》をかけてじっとしてろ! すぐ行くからな!」
 塚原は、受《じゆ》話《わ》器《き》に向って怒《ど》鳴《な》った。
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