日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

泥棒物語24

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:二人の秘《ひ》書《しよ》 こんなに早い時間に会社へ来たのは初めてだった。 塚原は、ビルの前でタクシーを降《お》りると、周
(单词翻译:双击或拖选)
 二人の秘《ひ》書《しよ》
 
 こんなに早い時間に会社へ来たのは初めてだった。
 塚原は、ビルの前でタクシーを降《お》りると、周囲を見回した。津村がどこかに立っているかもしれないと思ったのである。
 しかし、津村だって、久野がやって来るのを待つのなら、どこかに身を隠《かく》しているだろう。少なくとも、その辺にボケッと突《つ》っ立《た》ってはいるまい。
 塚原はビルの中へ入ろうとしたが、入口はまだシャッターが下りたままだ。
 それも当然——まだやっと七時になったところである。
 どうしようか? 塚原は迷《まよ》ったが、ともかく一《いち》応《おう》、時間外用の裏《うら》口《ぐち》の方へ回ってみることにした。
 ビルの脇《わき》をぐるっと回って、裏へ出ると、ちょうど起き出して来たらしい警《けい》備《び》員《いん》が、表に出て、大《おお》欠伸《あくび》しているところだった。
 「——何です?」
 と、不《ふ》思《し》議《ぎ》そうに塚原を見る。
 塚原も、もちろん顔は知っているが、あまり口をきいたことはない。
 「いや——あの、ちょっと急ぎの用でね」
 と、塚原は言った。
 「まだ中には入れませんよ」
 警備員は、ちょっといやな顔をした。
 「うん、そりゃ分ってるんだけど……。誰《だれ》か来なかったかね?」
 と、塚原は訊《き》いた。
 「こんな時間に? 来るわけないでしょ」
 「そう。それならいいんだけど……」
 塚原は、それでもまだためらいながら、「本当に、誰《だれ》も来なかっただろうね?」
 と、念を押《お》した。
 「来ませんよ」
 警《けい》備《び》員《いん》は渋《しぶ》い顔で、「疑《うたが》うんですか?」
 「いや、そうじゃないよ。ただ——念のために——」
 「今、ビルの中を一回りして来たところです。誰もいやしません」
 「分った。分ったよ。いや、どうもありがとう」
 塚原は、礼を言って引きさがった。
 ともかく、津村はまだここに来ていないようだ。それさえ分ればいいわけである。
 塚原は、またビルの正面に出ると、仕方なく、そこで津村がやって来るのを待つことにした。
 もちろん、津村がここへ来なければ、それに越《こ》したことはない。しかし、他《ほか》に、どこへ行くだろうか?
 塚原は、ため息をついた。——もうこれ以上、何も起ってほしくない。
 もとはといえば、二億《おく》円《えん》を盗《ぬす》み出したのが始まりである。大金を手にしたとき、塚原には——おそらく津村もだろうが——どんなことでもできそうな気がした。
 しかし、実《じつ》際《さい》には、何をやったのか? 塚原は、そう自分へ問いかけた。
 俺《おれ》は、ただ浮《うわ》気《き》をして、女《によう》房《ぼう》に逃《に》げられただけだ、と塚原は思った。
 どんな大金でも、啓子の怒《いか》りを消すことはできない。南千代子との浮気を、なかったことにはできないのである。
 そもそもが、大金を手にして何をしたい、という気持もなかった。いわば、それは「腹《はら》いせ」だったのだ。
 思い通りにならない世の中、決して住みやすいとは言えない世間への、仕返しだった……。
 それがどうだ。今は俺の方が仕返しをされている。塚原は苦い思いをかみしめながら、シャッターのおりたままのビルの前に立っていた。
 冷たく、暗く、シャッターを閉《と》ざして、入ることを拒《こば》んでいるビルは、まるで、塚原には「世の中」そのもののように見えた。
 俺は結局、世の中をう《ヽ》ま《ヽ》く《ヽ》渡《わた》って行くことのできない人間なのだ。
 それならそれなりに、幸せを手の届《とど》く所で捜《さが》しておけば良かった。いや——幸せは、啓子と明美との、平和な暮《くら》しの中にあった。
 南千代子との浮気には、快《かい》楽《らく》はあっても平和はなかった。快楽には、いつか疲《つか》れてしまうときが来る……。
 ——塚原が、沈《しず》んだ面《おも》持《も》ちで、ビルを見上げているとき、津村はどこにいたか?
 実は、津村はもうビルの中へ、入《はい》り込《こ》んでいた。
 
 「畜《ちく》生《しよう》……」
 と、津村は呟《つぶや》いた。
 切りつけられた右《みぎ》腕《うで》が痛《いた》んだ。——無理をして病院を出て来てしまったのを、少々後《こう》悔《かい》していた。
 しかし、久野のことを考えると、また腹《はら》が立って来て、やはり、けりをつけなきゃ戻《もど》れない、という気になって来る。
 津村は、社長室の中にいた。
 入るのは難《むずか》しくなかった。半分寝《ね》ぼけた警《けい》備《び》員《いん》の後をついて、やすやすと入ってしまったのである。そして、社長室の中へ素《す》早《ばや》く身を隠《かく》した。
 靴《くつ》だけ脱《ぬ》いで、手に持っていたので、足音は立てなかった。それで全然気付かれずに済《す》んだのである。
 社長室の中を、津村は見回した。
 もちろん、久野もここへ来るはずだ。秘《ひ》書《しよ》なのだし、一日の予定があるから、おそらく社長の脇《わき》元《もと》より先に姿《すがた》を見せるだろう。
 もっとも、必ずそうと決ったものでもあるまい。用心に越《こ》したことはない。
 津村は、腕の痛みをこらえながら、まず、何か、武《ぶ》器《き》を捜《さが》さなくてはならなかった。この腕では、久野を叩《たた》きのめしてやるというわけにはいかない。
 脇元の机《つくえ》の引出しを開けると、中に、銀色に光るペーパーナイフがあった。
 津村は、そのペーパーナイフを左手で取り上げた。
 刃《は》はそう切れるようになっていないが、先《せん》端《たん》は充《じゆう》分《ぶん》に尖《とが》っていて、使えそうだ。
 そうだ。殺さなくても——いや、殺したって構《かま》やしない。ともかく、体ごとぶつかれば、このナイフでも充《じゆう》分《ぶん》だろう。
 津村は、ナイフを上《うわ》衣《ぎ》のポケットに入れると、さて、どこか姿《すがた》を隠《かく》している所はないかと見回した。
 幸い、衝《つい》立《たて》がある。その向うは、小さな応《おう》接《せつ》セットが置いてあって、お茶ぐらい飲めるようになっていた。
 あそこなら、充分に隠れていられる。津村は、衝立の向う側へ行って、ソファの後ろに座《すわ》り込《こ》んだ。
 ちょっと窮《きゆう》屈《くつ》だが、我《が》慢《まん》できないというほどではない。
 「よし」
 津村は肯《うなず》いた。——まだ時間は大分早かったが、ともかく、ここで待っていれば必ず久野の奴《やつ》はやって来るのだ。
 「華子……」
 どうして久野の奴なんかと……。津村は胸《むな》苦《ぐる》しい思いで、妻《つま》の名を呟《つぶや》いてみた。
 ——津村は、病院で塚原から、久野が華子の愛人だったと聞かされただけだったので、詳《くわ》しい事《じ》情《じよう》はもちろん知らない。
 本当なら、華子と二人きりになって、ゆっくりと話したいが、しかし、ここまで来てしまった以上、もう逆《ぎやく》戻《もど》りはできないのだ。
 ともかく、久野の奴《やつ》に、借りを返してやる。その後は、その後のことだ。
 ——そんなことをしたら、警《けい》察《さつ》に捕《つか》まるとか、捕まれば、動機の追《つい》及《きゆう》から、例の二億《おく》円《えん》の件《けん》も、しゃべらざるを得《え》なくなるということまで、津村は考えていなかった。
 ただ、目《もつ》下《か》のところは、妻《つま》を奪《うば》われたという怒《いか》りだけが、津村の頭を一《いつ》杯《ぱい》にしていたのである。
 時間のたつのが、いやに遅《おく》く感じられてならない。
 右《みぎ》腕《うで》の痛《いた》みは、波が寄《よ》せては引くように、ズキズキと痛んでは、穏《おだ》やかになって、それをくり返した。
 早く来い。——早く来いよ。
 津村は、左手で、ポケットの中のナイフを何度も確《たし》かめた……。
 
 「本当に人《ひと》騒《さわ》がせなんだから」
 と、明美は言った。
 「心配かけて悪かったわ」
 と言ったのは、母親、啓子である。
 家へ戻《もど》ってみた明美は、母が、いとも安らかに布《ふ》団《とん》に入って眠っているのを見付けて、ホッとすると同時に、拍《ひよう》子《し》抜《ぬ》けでもあったのだった。
 呆《あき》れて見ていると啓子も目を覚《さ》まして、
 「あら、明美、ずいぶん早起きね」
 などと言ったのだった。
 朝になった。
 いつも、明美の起きる時間。——もちろん、ゆうべずっと寝《ね》ずに起きていたので、この時間になって、明美は眠くなって来た。
 「——少し寝たら?」
 と、啓子が言った。
 「うん。でも……」
 明美は欠伸《あくび》をした。
 「ほら、ごらん。寝た方がいいわよ」
 言われるまでもなく、明美だって眠いのである。しかし、何かが起りそうだという予《ヽ》感《ヽ》が、明美にはあった。
 「津村さんのけが、大したことないといいわねえ」
 啓子は、お茶を淹《い》れながら言った。
 明美としては、母にどこまで本当のことを話すべきか、迷《まよ》ったのだが、夫《おつと》の浮《うわ》気《き》だけでもいい加《か》減《げん》ショックを受けているはずだ。
 この上、夫《おつと》が泥《どろ》棒《ぼう》と知ったら、どうなるか見当がつかなかったので、一《いち》応《おう》、その件《けん》は伏《ふ》せておいて、津村がけがをしたこと、そして塚原がそれに付き添《そ》っているのだと説明したのである。
 ここまで気をつかう娘《むすめ》なんているかしら、と明美は自分のことに感心していた。
 「お母さん」
 「なあに?」
 「——どうして戻《もど》って来たの?」
 啓子はちょっと微《ほほ》笑《え》んで、
 「戻っちゃ悪かった?」
 「そうじゃないよ」
 明美も笑《わら》って、「でも、あんまり早く戻って来ちゃ、お父さんをこらしめることになんないじゃない」
 「そうだけどね——」
 と、啓子はお茶を一口飲んで、「どこへ行こうかって考えたら……どこもないのよ、行く所なんて」
 「そう?」
 「そりゃ、結《けつ》婚《こん》二、三年目っていうんなら、実家へ帰るってのもいいけど、もう、子《こ》供《ども》が十六にもなって、そんなわけにもいかないわ」
 「そんなもんかな」
 「お友達の所とか、色々考えたけどね、あの人の所は親と同居だからだめ、この人は子供三人と2DKだから、とても無《む》理《り》——とか考えて行くと、結局、帰って来るしかなかったのよ」
 「ふーん」
 と、明美は肯《うなず》いた。
 「もちろん、お父さんの浮《うわ》気《き》を、これで忘《わす》れる、ってわけじゃないわよ。ともかく、差し当りはあの女の子と別れてもらわないと」
 「お父さん、きっと、そういう話、持ち出すの苦《にが》手《て》よ」
 「でも、私《わたし》が代りに、ってわけにいかないでしょ。あの女の人のためにも、お父さんが自分できちんとけじめをつけてくれなきゃ」
 と、啓子は言った。
 「お父さんと離《り》婚《こん》しようとか、考えなかったの?」
 明美が訊《き》くと、啓子は、ちょっと首をかしげて、
 「そうねえ……。考えなかったわ。ともかく、腹《はら》が立って、混《こん》乱《らん》して……。このままこの人の顔を見てたら、何を言い出すか分らない、って気がしたから、出て行ったのよ」
 「やっぱり、生活のこと考えたの?」
 「お金のこと、って意味? そうじゃないわね」
 「じゃ、どうして……」
 「何て言えばいいのかしら」
 啓子は、目をちょっと宙《ちゆう》へ向けて、「浮《うわ》気《き》はもちろん腹が立つけど——でも、自分だって、どうだろう、って思うとね」
 「お母さんが?」
 明美は目を丸くした。「浮《うわ》気《き》したことあるの?」
 「ないわよ」
 と、啓子は苦《く》笑《しよう》した。「でも、それは、たまたま私《わたし》があまり外へ出ない生活をしていて、機会がなかっただけなのかもしれない、と思うのよ。もし、どこかで、若《わか》くて、ハンサムで優《やさ》しい男《だん》性《せい》に言《い》い寄《よ》られたら、絶《ぜつ》対《たい》に退《しりぞ》けるって言い切れるかしら、と考えたら……自信ないのよね」
 「へえ」
 明美にとっても、これは意外な話である。
 「だから——お父さんが会社の女の子と、ついフラッとああなっちゃったとしても——本当にね可愛《かわい》い子なのよ——まあ、無《む》理《り》ないなって気もするわけ」
 「理《り》解《かい》あるんだ」
 「そうじゃないわ。やっぱり怒《おこ》ってるわよ。でも——お父さんが、きちんとけじめをつけて、謝《あやま》ってくれたら、許《ゆる》せると思うの」
 明美は、母の、意外な心の広さに感心した。
 一《いつ》向《こう》に外へ出ない、「万年少女」かと思っていたが、やはり「年《とし》の功《こう》」というのか、人間も練れて来たんだな、と思う。
 「——明美はどうなの?」
 「私《わたし》? 私は——どうだっていいわ」
 「どうだっていい、ってことはないでしょう」
 「うん……。そりゃまあ、家の中は平和な方がいいよ」
 「お父さんも、今度のことで、大分こりたでしょ」
 大分どころか、骨《ほね》身《み》にしみてるはずだわと、明美は思った。
 「一つ心配なのはね」
 と、啓子が言った。「あの南千代子って人のこと。かなり思い詰《つ》めてたみたい」
 「お父さんのことを思い詰めるなんて、よっぽど、他《ほか》に詰める物がなかったのね」
 「引《ひつ》越《こ》し荷物じゃないのよ」
 「大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》よ。若《わか》い人は、少しすりゃ、ケロッと忘《わす》れる」
 明美はあたかも経《けい》験《けん》者《しや》の如《ごと》き口調で、言った。
 
 社長室のドアが、開いた。
 津村は、ハッとして、顔を上げた。
 つい、いつしかまどろんでいたらしい。右《みぎ》腕《うで》の痛《いた》みが、少しやわらいでいたせいもあろう。
 ドアが開く音で、目を開いた。誰《だれ》かが入って来たのだ。
 久野か?
 津村は左のポケットへ手を入れた。ナイフの柄《え》を握《にぎ》る。
 顔を出して確《たし》かめるのが難《むずか》しいので、少し様子をうかがうしかなかった。
 脇《わき》元《もと》の机《つくえ》の上を、いじっている。やはり久野だろうか?
 津村は、そろそろと体を起こし、ナイフを左手にして、飛び出して行く体勢を整えた。
 電話が鳴り出した。——うまいぞ。久野かどうか、確かめられる。
 「——はい。——おはようございます」
 津村は、その声に眉《まゆ》を寄《よ》せた。
 久野の声ではない! 誰だろう?
 もっと若《わか》い声のように、津村には聞こえた。
 「——はい、承《しよう》知《ち》しております」
 と、その若い声は言った。
 やはり脇元の秘《ひ》書《しよ》らしい。しかし、津村にはまるで心当りがなかった。
 「久野さんの件《けん》は、今日中に調べがつくと思います」
 と、その声が言った。
 「——はい、もちろん、行動を起す前に、ご報《ほう》告《こく》申《もう》し上《あ》げますので」
 久野の件? 調べ? 何のことだろう。
 しかし、ともかく、この男が久野でないことは確《たし》かだ。あわてて飛び出さなくて良かった。
 少しホッとしたときだった。
 「おい」
 突《とつ》然《ぜん》、もう一つの声が、入口の方でした。それは久野の声だった!
 「——おはようございます」
 と、若《わか》い方が、あまりあわてた様子もなく言った。
 「おはよう」
 久野はゆっくりと歩いて来た。「ここで何をしてる?」
 「社長の本日のご予定を——」
 「それは俺《おれ》の仕事だ」
 「ですが、言いつかっていますので」
 「俺の仕事だ」
 「僕《ぼく》の仕事です」
 ——しばし沈《ちん》黙《もく》があった。
 「今、『調べがつく』とか言ってたな」
 と、久野が言った。「何のことかな」
 「さあ、存《ぞん》じません」
 「隠《かく》すな!」
 突《とつ》然《ぜん》、久野が甲《かん》高《だか》い声を上げて、若《わか》い男へつかみかかったようだった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%