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殺人はそよ風のように10

时间: 2018-09-06    进入日语论坛
核心提示:9 素《しろ》人《うと》探《たん》偵《てい》、動き出す 「これでいい?」 と、夏美が振《ふ》り向くと、千絵が笑い出してし
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 9 素《しろ》人《うと》探《たん》偵《てい》、動き出す
 
 「これでいい?」
 と、夏美が振《ふ》り向くと、千絵が笑い出してしまった。
 髪《かみ》型《がた》をわざと野《や》暮《ぼ》ったく引っつめ、化《け》粧《しよう》っ気を完全になくして、眉《まゆ》を少し剃《そ》って形を変える。そしてメガネ。
 これで完成!——どう見ても、アイドルという顔ではない。
 どこにでもいる、ちょっとガリ勉タイプの高校生というところだ。服が千絵のものなので、かなり幼い感じに見える。
 年《ねん》齢《れい》は一つしか違《ちが》わないが、千絵のほうがずっと「可愛《かわい》い」感じなのである。
 「いやだ、笑わないで」
 と、夏美のほうも笑っている。「そんなにおかしい?」
 「いいえ、そうじゃないの。ただ——あんまり別人みたいで……。お兄さん! 入っていいぞよ」
 「やっと、かい?」
 部《へ》屋《や》の外で待ちくたびれていた克彦が入って来る。そして、夏美の変身ぶりに目を丸くした。
 「まるで別人だな!」
 兄と妹で、言《こと》葉《ば》づかいもよく似ている。
 「じゃあ、出かけようよ」
 と、千絵が言った。「お母さんは?」
 「さっき出かけたよ。『今日はどこ?』って訊《き》いたら、ちょっと考えて、『歩きながら思い出すわ』だって」
 夏美がクスクス笑いながら、
 「お母さんも、ユニークな方ね」
 「ユニークすぎるき《ヽ》ら《ヽ》い《ヽ》はあるけど」
 と、千絵は言った。「でも、だから私とか兄さんみたいなのが生まれたんだしね」
 「どういう意味だ、それ?」
 克彦はちょっと顔をしかめた。「さあ、どこかで朝飯を食いながら、今日の作《ヽ》戦《ヽ》を練《ね》ろうじゃないか」
 「お兄さんは、食べるほうだ《ヽ》け《ヽ》に、興味があるんじゃないの?」
 と、千絵が冷やかした。
 三人は、揃《そろ》って家を出ると、近くのハンバーガーショップへ入った。
 コーラとハンバーガーという取り合わせ。最初はちょっと奇《き》妙《みよう》でも、慣れというのは恐《おそ》ろしい。
 今は、ごく当たり前にコーラでハンバーガーを流し込《こ》むのだ。
 店は、朝食には遅《おそ》いし、昼食には早いという中《ちゆう》途《と》半《はん》端《ぱ》な時間のせいか、ガラ空《あ》きだった。三人は隅《すみ》のテーブルを囲んで座った。
 食べていると、店の女の子たちが、
 「ねえ、星沢夏美、どこに行っちゃったのかしら?」
 「人殺して逃《に》げてんでしょ?」
 「でも、手配されてないみたいよ」
 「そう?」
 「男と駆《か》け落ちしたって噂《うわさ》もあるのよ」
 などと話をしている。
 その当人が、まさかここにいるとは思わないだろうな、と考えて、克彦は妙《みよう》な気分だった。
 「さて、まず手始めにどこを調べる?」
 と克彦が言うと、千絵が押《おさ》えて、
 「待って。その前に、一つ訊《き》いていい?」
 「ええ、どうぞ」
 と、夏美が肯《うなず》いた。
 「夏美さんが病院から逃《に》げ出して来たときの事情を聞きたいの」
 「ああ、そうね。肝《かん》心《じん》のことを話してなかったんだ」
 と、夏美は、ゆっくりコーラを飲みながら言った。「ごめんなさい。うっかりしてたわ」
 「でも、もし話したくなければ——」
 と、克彦が言いかける。
 「いえ、それははっきりしておかないと、今日、これからの行動も決められないの」
 夏美は、ちょっと考えてから、口を開いた。
 「私、うとうとしてたのね、ベッドの中で……。そのとき、廊《ろう》下《か》でちょっとした騒《さわ》ぎがあって、フッと目を覚ましたわ——」
 
 何か、金属の物を落っことしたような、派手な音だった。
 夏美は目を開いた。——病室は薄《うす》暗《ぐら》い。
 誰《だれ》もいない。
 別に心細いことはなかった。一人でいることには慣れている。
 朱子にも、あまりそばについていてもらうのは申し訳がない。
 それにしても——何の音だろう?
 でも、大《だい》体《たい》、病院という所は、色々と音がする。決して静かな所ではないのだ。
 足音が、廊《ろう》下《か》をやって来た。
 「どうしたの?」
 もう一つ、逆《ぎやく》のほうから足音がした。少し偉《えら》い看護婦さんらしい。
 「分かりません。凄《すご》い音がしたんで、来てみたんです」
 「誰《だれ》かが倒《たお》したの? たぶん、患《かん》者《じや》さんでしょ」
 こんな時間に、一体誰が廊下を歩いているんだろう、と夏美は思った。
 でも、いずれにせよ、どうということはないだろう。
 夏美は、大して気にもとめなかった。
 「ちゃんと片付けてね」
 と、声がして、「——ここの人は?」
 と、どうやら、夏美のことを言っているらしかった。
 「さっきは眠《ねむ》ってました」
 「付き添《そ》いの人は?」
 「今、どこかへ行ってるみたいですけど」
 「そう。——分かったわ」
 廊《ろう》下《か》は、また静かになった。
 ——一《いつ》旦《たん》、目が覚めてしまうと寝《ね》つけなくなる。
 夏美も、いやに目が冴《さ》えてしまって、何度も目をつぶったが、とうとう諦《あきら》めて、目を見開いたまま、自然に眠くなるのを待つことにした。
 その内、ベッドから起き出して、窓のほうへと歩いて行く。
 手首の痛みは、大分おさまっていた。
 すっかり大《おお》騒《さわ》ぎになって……。
 夏美は、カーテンの端《はし》をそっと細くからげて、表を眺《なが》めた。
 何しろ、最近は高感度フィルムで、病室を狙《ねら》っているカメラマンがいるのだ。うっかり外へ顔も出せない。
 何台かの車が見える。たぶん、どれもが、新聞や週刊誌や、TV局の車だろう。
 「ご苦労さま」
 と、夏美は呟《つぶや》いた。
 朱子さんはどこに行ったのかしら? 何だか、少し顔がべとついている。
 ちょっとためらってから、夏美はドアをそっと開けた。
 廊《ろう》下《か》には、人《ひと》気《け》がない。
 夏美は、あまりスリッパの音を立てないように気を付けながら、廊下を歩いて行った。
 病院は、いつも誰《だれ》かが起きているような気配がある。咳《せき》込《こ》む音、何かのきしむ音。
 歩いていても、何だか落ちつかないのである。
 夏美は、洗面所に行って、顔を洗《あら》った。少しぬるめのお湯で洗うと、べとついた感じがなくなって、さっぱりする。
 余計に目が覚めちゃった、と夏美は苦笑した。——でも、眠《ねむ》れない、という、苛《いら》々《いら》した感じではなく、頭がスッキリした、という快さがあった。
 そうだ。——外の風にでも当たろうかしら。
 不意にそう思った。なぜなのか、自分でもよく分からない。
 といって——病室の窓なんか、開けようものなら、何事かと記者が駆《か》けつけて来るに違《ちが》いない。
 そう、屋《おく》上《じよう》しかないわ、と夏美は思った。
 ちょっとためらいがあったのは、もし朱子でも戻《もど》って来て、ベッドにも洗面所にもいないと知ったら心配するのではないか、ということだった。
 でも、すぐ戻って来ればいいわ……。
 そう自分に言って、夏美は、エレベーターのほうへ歩いて行った。
 一番上の階で降りると、夏美は、階段を上がって行った。
 屋上に、出られるかしら?
 病院によっては、夜は出られないようにしている所もあるけれど……。
 ドアを押《お》してみると、軽く開いた。
 風が吹いて来る。その強さに、一《いつ》瞬《しゆん》迷《まよ》った。
 でも、せっかく来たのだから——。
 一旦外へ出てみると、風は大して吹いていなかった。
 ほとんどそよ風、といっていいような緩《ゆる》やかさだ。
 快い涼《すず》しさだった。
 屋上は、もちろん暗かったが、ずっと張ってある、何本もの洗《せん》濯《たく》物《もの》を干すビニールの紐《ひも》が、風に波打っているのが、見ていて、何だか面《おも》白《しろ》い光景だった。
 誰《だれ》かが、シーツを干したままにしている。入れ忘れたのか。いや、もしかしたら——亡《な》くなったのだろうか?
 夏美は頭を振《ふ》った。
 「変なこと、考えないで!」
 と、呟《つぶや》く。
 夏美は、胸より少し高い手すりに両手をかけて、遠くを眺《なが》めた。
 もう、残っている灯《ひ》は、数えるほどである。
 ふと、夏美の目に涙《なみだ》が浮《う》かんで来た。
 こんな寂《さび》しい夜景などを見ると、無《む》性《しよう》に恋しくなって来ることがある。
 「疲《つか》れてるのかな」
 と、ポツリと言ってみた。
 風の音ではないようだった。——背後に、サッ、サッと、こすれるような足音が聞こえたと思うと、何かがスッポリと夏美の頭からかぶせられた。
 「いや! 何よ!」
 夏美は、手を振《ふ》り回した。大きな布が、腕にからみついて、動きが思うようにならない。
 誰かが、ぐいと体を押《お》して来る。夏美は、手すりに押し付けられた。
 そして、夏美は、足をかかえ上げられそうになった。——突《つ》き落とされる!
 はっきりした殺意を感じて、夏美はゾッとした。誰がやっているのか、そんなことを考えている暇《ひま》はなかった。
 必死で足をばたつかせる。
 手が、手すりに触《ふ》れたので、しっかりと握《にぎ》りしめた。
 左の手首が痛い。しかし、それでも、両手で、必死に手すりをつかんでいた。
 突《とつ》然《ぜん》、相手の手が離《はな》れた。諦《あきら》めたらしい。タッタッと走り去る足音。
 夏美は、頭にかぶせられた布を、はぎ取った。さっき見た白いシーツだ。
 肩《かた》で、激《はげ》しく喘《あえ》ぎつつ、その場にしゃがみ込《こ》んでしまった。
 誰《だれ》だろう? 一体誰が——。
 夏美は、そっと屋《おく》上《じよう》の暗がりを見回した。足音は、どこかへ去っていた。おそらく、もう屋上には、誰も残っていないだろう。
 しかし——夏美は、今になって、突然、激しい恐《きよう》怖《ふ》に襲《おそ》われた。
 病室へ——早く病室へ戻《もど》ろう。
 思いもかけないことだった。自分を殺そうとした人間がいる。
 なぜ? 何のために?
 それは、あまりにも思いがけない不意打ちだった。
 
 「もちろん、私がここへ来るまでには——」
 と、夏美は言いかけて、言《こと》葉《ば》を切り、克彦と千絵を見た。「つまり、こういう風な、スターになるまでは、ってことね」
 「うん、分かるよ」
 と、克彦は肯《うなず》いた。
 「それまでには、色々なことがあったわ」
 夏美はコーラを一口飲んで、続けた。「途《と》中《ちゆう》、人に恨《うら》まれたことだって、あるかもしれない。でも、たいていのことは、私の意志じゃなく、プロダクションが決めているんだけど、それでも、表に出てあれこれ言われるのは、私ですものね。ただ……殺されるような——命を狙《ねら》われるようなことなんて、まるで思い浮《う》かばないのよ。何も思い当たらないのに、殺されそうになるなんて、そんな怖《こわ》いことってないわ」
 「なるほどね」
 と、千絵が肯く。
 「それで——ともかく、私、急いで病室に戻《もど》ったの。病室の前には、人もいなくて、ちょっと辺《あた》りを見回してから、ドアを開けたわ。中は暗かった。そして——一歩中へ入ったとき、いきなり後ろから突《つ》き飛ばされたの」
 「誰《だれ》に?」
 「分からないわ。誰かが、ドアの陰《かげ》に隠《かく》れていたのよ。そして私を突き飛ばした。私は、床《ゆか》にうつ伏《ぶ》せに倒《たお》れたの。誰かが廊《ろう》下《か》へ出て、走って行った……」
 「あなたを、屋《おく》上《じよう》で襲《おそ》ったのとは別の人間かしらね」
 と、千絵が言った。
 「たぶんね。でも、そのときは、そんなこと、考える間もなかった。ドアが開いていて、廊下の明りが部《へ》屋《や》の中を照らしていたわ。そして、私、起き上がろうとして、ふっと横を見ると……」
 夏美が、軽く目を閉じて、首を振《ふ》った。「永原さんが死んでいるのが見えたのよ」
 少し間があった。——夏美は、ちょっと目を天《てん》井《じよう》の照明のほうへ向けて、
 「びっくりしたわ。もう、何がどうなっているのか分からなくて……。そんなはずないのに、きっと永原さんは私の代りに、私と間《ま》違《ちが》って殺されたんだと思ったの」
 「そりゃ無理ないわよ」
 「それで、ともかく、私、逃げ出そうとしたの。犯人は病《ヽ》院《ヽ》の《ヽ》中《ヽ》に《ヽ》、平気で入って来ているんですもの。このまま中にいたら殺される、とそう思ったのよ」
 「それで病院を脱《ぬ》け出したんだね」
 「でもよく出られたわね」
 と、千絵が言った。
 「看護婦さんの白衣をはおったの。——ちょうど、一階へ降りて行ったら、椅子《いす》に引っかけてあったのよ」
 「椅子に?」
 「患《かん》者《じや》さんたちが待っている長椅子があるでしょ? あの背にかけてあったの」
 千絵は、眉《まゆ》を寄せて、
 「ちょっとおかしいわ」
 と言った。「看護婦さんが、そんなことするかしら?」
 「じゃあ……」
 夏美は、ハッとしたように言った。「もしかして犯人が?」
 「その可能性あると思うわ。お兄さん、どう思う?」
 「そうだなあ……。犯人が病院の中を歩き回ろうとしたら、白衣姿が一番、目につかないだろうな」
 「じゃ、私、犯人が着てた白衣をはおって、外へ出たのかしら? いやだわ!」
 夏美は首を振《ふ》った。
 「その白衣は?」
 「コートの上からはおってたから、外へ出たら、そのまま植《うえ》込《こ》みの辺《あた》りへ捨てちゃったわ」
 「でも、待てよ」
 と、克彦が言った。「そうなると、犯人は女だってことになるぜ」
 「そうだって、悪いことないわ。少なくとも、永原って人を殺したのは女かもしれない」
 「私を屋《おく》上《じよう》から落とそうとしたのは……」
 「そうね。男でも女でも、やれないことはないわ」
 「でも、永原を殺した犯人は別だとすると……」
 と、克彦は腕《うで》組《ぐ》みをして考え込んだ。
 「お兄さんたら、分かってるの?」
 と、千絵が冷やかすように言った。
 「何が、だよ」
 「お兄さんには、名探《たん》偵《てい》は似合わないわ」
 「大きなお世話だ」
 と、克彦は渋《しぶ》い顔で言った。
 「ともかく、まず、永原さんの奥《おく》さんに会ってみたいわ」
 と、夏美は言った。「ご主人を殺した人の見当がつくかどうか」
 「それは、でも警察が調べてんじゃない?」
 「でも、警察に話せることと、話せないことがあると思うの」
 夏美は、何か知っていることがある様子だった。
 「OK。じゃ、こいつを片付けたら、出かけよう」
 克彦が、ハンバーガーの最後の一口を口の中へ投げ入れながら、言った。
 「一人だけ、電話しておきたい人がいるの」
 と、夏美が言った。
 「誰《だれ》、それ?」
 「朱子さん。大内朱子っていって、私の付《つき》人《びと》なの」
 「ああ、見たことあるよ、何度か」
 と、克彦が言った。「いつもそばにいる、ちょっと男っぽい感じの人だろ」
 「ええ。あの人は、本当に親身になって、私のことを心配してくれるの。だから、一応、無《ぶ》事《じ》だってことだけ、知らせておくわ」
 店を出て、夏美は、表の電話ボックスに入った。——マンションへかける。
 「はい」
 すぐに朱子が出た。
 「もしもし、私、夏美よ」
 ちょっと間があって、
 「——びっくりした! 待ってたけど、びっくりしたわ」
 と、朱子がため息をつくのが聞こえて来る。
 「ごめんなさい。あんな風に姿を消したくなかったんだけど」
 「元気なの? 傷《きず》の具合、大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》?」
 夏美は、どこにいるのかも訊《き》かず、まず体のことを心配してくれる朱子の気持が嬉《うれ》しかった。
 「ええ、大丈夫よ。——ね、警察のほうはどう?」
 「よく分からないの。あなたのことも、もちろんあれこれ訊かれたけど……」
 「私、何とか自分の力で、犯人を見付けたいわ。たぶん——永原さんも、私のせいで殺されたんだろうし」
 「そうとは限らないわ。あんまり考え込《こ》まないほうがいいわよ」
 と、朱子は言って、「——ね、ともかくマンションは、報《ほう》道《どう》陣《じん》や警察に見られてるから、危いわ。どこかで会えない?」
 「でも、あなただって、見張られてるでしょう?」
 「その点は大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》。いつも人目を逃《のが》れる工《く》夫《ふう》をしてるじゃないの」
 「それもそうね。でも——」
 「ちょっと話したいことがあるの。電話じゃ無理だわ」
 「そう。——いいわ。それじゃ、どこで?」
 朱子が、代《よ》々《よ》木《ぎ》公園の一角を説明した。以前、二人で散歩に出たことがある。
 「分かったわ。じゃ、一時間後に?——そうね」
 電話を切ると、夏美は、また十円玉を何枚か入れて、永原の家へかけた。
 しばらく鳴らしていると、やっと向こうが出る。
 「はい、永原です」
 「あ——私、夏美ですけど」
 「あら! どこにいるの?」
 「ちょっと、お話がしたくて」
 「いいわよ。やっと、うるさい連中も帰ったしね。じゃ、家へ来る?」
 「構いませんか?」
 「こっちはね。——ああ、あなたのことは黙《だま》ってるから、大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》よ」
 「じゃ、今から——三十分ぐらいしたら、うかがいます」
 「近くへ来たら、電話して」
 ——夏美はボックスを出た。
 「永原さんの奥《おく》さんの所へ行きましょう。その後で、朱子さんと会うことにするから」
 「行動開始ね!」
 千絵は、至って楽しげだった。
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