日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

殺意はさりげなく08

时间: 2018-09-10    进入日语论坛
核心提示:7 失《な》くした時計「マチ子さん」 と、神《かみ》山《やま》絹《きぬ》代《よ》は声をかけた。「もう二時よ。旦那様は、ま
(单词翻译:双击或拖选)
 7 失《な》くした時計
 
 
「マチ子さん」
 と、神《かみ》山《やま》絹《きぬ》代《よ》は声をかけた。「もう二時よ。旦那様は、まだおやすみ?」
「はい」
 マチ子は、廊下に掃除機をかけていた。
「そう……。もうお起しした方がいいんじゃないかしら」
 と、神山絹代は言って、「ちょっと、声をかけてみるわ」
 階段を上りかけた絹代へ、マチ子は掃除機のスイッチを切ると、
「起すなと、おっしゃいました」
 と、言った。
 絹代は振り向いて、
「旦那様が?」
「はい。——疲れたから、起きて来るまでは、放っておいてくれ、と」
「そう……」
 絹代は、肯いたが、「でも、もしお具合でも悪いようだと大変。いいわ。叱《しか》られたら、その時に謝ればいいのよ。ちょっと覗いてみるわ」
 と、また階段を上って行こうとした。
「でも、起すなとおっしゃったんです!」
 マチ子の言葉は、ほとんど叫ぶような激しさだった。
 絹代は足を止め、戸惑って、
「どうしたの? マチ子さん、何だか変ね、あなた」
「何も……。ただ、旦那様がおっしゃった通りを言ったんです」
 マチ子は、目をそらしていた。
「旦那様がそうおっしゃったのね」
「そうです」
「いつ?」
「おやすみになる時です」
 絹代は、少し間を置いて、
「おやすみになったのは、いつごろ?」
 と、訊いた。
「五時ごろでした」
「朝の五時?」
「そうです」
 絹代は、しばらくマチ子を見ていたが、やがて、階段を下りて来ると、
「分ったわ。それじゃ、もっとおやすみになりたいでしょうね」
 と、言った。「法子さんのお部屋にお友だちがみえてるわ」
「はい」
「紅茶か何かお出ししたら?」
「そうします」
 マチ子は、掃除機を置いて、台所へと入って行った。
 ——神山絹代は、もうこの松永家に二十年も通って来ている。松永のことは、家族同様によく分っているつもりだった。
 朝の五時。——そんな時間に寝るというのは、普通ではなかった。
 特に、年齢《とし》を取ってから、松永は睡眠を規則的に取るようにしていたのだ。それなのに……。
 マチ子が、それを知《ヽ》っ《ヽ》て《ヽ》い《ヽ》た《ヽ》、ということも、気になった。
 もちろん、六十過ぎとはいえ、松永は男で、マチ子は女だ。しかし、いくら何でも……。
 だが、今日のマチ子の様子は、明らかにおかしい。
 居間へ入って、絹代は、出ていた新聞を片付け始めた。——門のインタホンが鳴った。
 誰だろう? 絹代は急いでインタホンに出た。
「はい、どちら様でしょう?」
「警察の者ですが」
 と、若い男の声が言った。
 絹代は、緊張した。——警察が何の用だろう。
「ご用件は?」
「松永——彰三さんは、いらっしゃいますか」
「まだおやすみです」
「そうですか。申し訳ありませんが、ちょっとお話を伺いたいので、取り次いでいただきたいのですが」
 絹代はためらった。しかし、相手の言葉はていねいだが、引き退《さ》がるようではない。
 警察の用となれば、仕方がないだろう。
「どうぞ、お入り下さい」
 絹代はロックを外した。「——マチ子さん」
「はい」
 マチ子が台所から出て来た。
「警察の人が、旦那様に、と。お起しして来るわ。応接へ通しておいて」
 絹代が歩き出すと、マチ子は突然階段へと駆けて行き、
「私が起します!」
 と、言って、駆け上って行った。
 絹代は呆《あつ》気《け》に取られて、それを見送っていたが……。
 おそらく……。そうだ。旦那様は、マチ子に、手《ヽ》を《ヽ》つ《ヽ》け《ヽ》た《ヽ》。
 何てことだろう!
 玄関のドアをノックする音がして、絹代は足早に玄関へと向った。
 
「おやすみのところ、恐縮です」
 と、年長の方の刑事が言った。「林田と申します。こちらはこの町の水口刑事です」
 水口刑事は、若いせいもあるだろうが、大分緊張していた。
「お待たせして」
 と、松永は言った。「——で、用件というのは?」
 マチ子が、お茶を運んで来た。
「この時計ですが」
 と、林田がテーブルに、ビニールの袋に入れた腕時計を置いた。「見憶えはありますか」
 松永は、ちょっと眉を寄せて、
「私のものと同じ型ではないかな」
 と、言った。
「実は、松永さんのお名前が裏に入っていまして」
 と、水口が口を挟んだ。「それで、こうして伺ったわけです」
 林田がチラッと水口を見た。余計な口を出されて、迷惑している様子だ。
「そうでしたか、いや……」
 松永は首をかしげた。
 マチ子は、二人の刑事へ、
「どうぞ」
 と、お茶を出した。
「恐縮です」
 と、林田は言って、一口お茶を飲んだ。
「——苦かったでしょうか」
 と、マチ子は、林田がちょっと顔をしかめるのを見て、言った。
「いや……。目が覚めて結構」
 と、林田は息をついた。「それで——」
「旦那様」
 と、マチ子が言った。
「うん?」
「この間、どこだかで失くしたとおっしゃっていたのが、この時計じゃございませんでしたか?」
 松永は、ちょっと時計を見つめて、
「——うん、そうらしいな。いや、沢山持っていますので、大して気にもしていなかったんですが」
「失くした、と?」
「失くしたのか、盗《と》られたのか……。ともかく、いつの間にか、失くなっていたんですよ」
 と、肩をすくめる。
「どこで失くされたんですか?」
 と、林田が訊いた。
「さて……。いつの間にやら、なかった、というわけでね」
「しかし、六十歳の祝いにと、名前まで入っているんですよ」
「六十歳の時には、確か置時計が三つ、腕時計が五つぐらい来たような気がしますな」
「大したもんですね」
 と、水口が呆《あき》れたように言った。
「どこで見付かったんですか?」
「いや、ちょっとある事件がありましてね——」
 と、林田はためらった。「その場所に、これが落ちていた、というわけです」
「事件? 泥棒とか、空巣とか?」
「女の子を待ち伏せして襲おうとした奴がいましてね」
 と、水口が言った。
「何と……。うちにも十六の孫娘がいます。そういう卑劣な奴は、早く逮捕していただきたい」
「もちろん同感です」
 と、林田は肯いた。「しかし手がかりはこれだけでしてね。これを、いつ、どこで失くされたか、思い出していただけませんかね」
「さあ……」
 松永は腕を組んで、「マチ子。君は憶えてるか」
「いえ……」
「そうか。——ほとんど無意識に時計を選んでつけていますのでね。たぶん外で失くしたんだとは思うが」
「そうですか」
 林田は息をつくと、「——何か思い出されたらご連絡を」
「ああ、もちろんです」
 と、松永は肯いた。
「どうもお手間を取らせて」
 水口は、しきりに恐縮していた。
 林田は立ち上ると、
「まだおやすみだったそうで、すみませんでした」
 と、言った。
「ああ、いや。そちらもお仕事ですからな」
「いつも、夜は遅くやすまれるんですか」
「そうとも限りません。気楽な仕事ですからね。気ままにやっていますよ」
「それは羨《うらや》ましい。——ゆうべは何時ごろおやすみに?」
「二時か……三時か。寝つけずに、本を読んでいましてね」
「お出かけというわけではなかったんですか」
 松永はちょっと笑って、
「夜遊びをする年齢《とし》でもありませんよ」
 と、言った。
 ——刑事たちが帰って行く。
 マチ子は、玄関まで送って、応接間へ戻って来ると、茶碗を片付けた。
 松永はソファに座ったままだ。
「マチ子——」
「あの時計は失くされたんです」
 と、マチ子は言った。「そうですね?」
「ああ。そうだ」
「私なら、時計一つ失くしたら、大騒ぎしますわ」
 マチ子はそう言って、笑った。
 松永は手を伸ばして、マチ子の腰の丸みをさすった。マチ子は少し離れて、
「仕事があります」
 と、言った。
「そうか」
 マチ子は、ドアを開けようとした。松永は、「今夜も行っていいか」
 と、言った。
 マチ子は答えずに、応接間を出た。電話が鳴り出していた。
「——お待たせしました。松永でございます」
 と、マチ子は電話に出て言った。「——はい、小百合さんでしたら、今、うちに。——え?」
 マチ子はあわてて、メモを取った。
「——分りました。すぐそちらへ。——はい」
 マチ子は、メモを手に、ドタドタと階段を駆け上った。
 法子の部屋のドアを叩くと、
「どうぞ」
 と、法子の声がした。
「あの——」
 とドアを開けると、
「やっぱりマチ子さんか。ドタドタ、凄い音がしたから、きっとマチ子さんだ、って言ってたのよ」
 と、法子が言った。「何なの?」
 法子がカーペットに膝を立てて座り、小百合は腹《はら》這《ば》いになって、雑誌を広げていた。
「あの——今、病院から電話で」
「病院、どこか悪いの、マチ子さん?」
「そうじゃなくて! 小百合さん、すぐ病院へ行って下さい!」
「私?」
 小百合は起き上って「どうしてですか」
「おじいさんが、オートバイとぶつかったんですって」
 小百合はポカンとしていた。
「いやだ……。ぶつかるなんて、おじいさん——」
「頭を打って、病院へ運ばれたって。すぐに——」
「分りました……。じゃ、法子、悪いけど私——」
「マチ子さん、タクシー呼んで」
 と、法子がパッと立ち上って、「小百合、しっかりして。ついて行くから」
「いいよ。悪いし……」
「何言ってるの! マチ子さん、早く」
「はい!」
 マチ子は、またドタドタと足音をたてながら行ってしまう。
「おじいさんたら、ぼんやりしてたのかなあ」
「小百合。鞄とか、忘れないで。きっと大したことないわ。大丈夫よ」
「うん……」
 小百合は、まだ実感がない様子だった。
 法子もコートをはおって、財布を手に、玄関へ来ると、マチ子が外から戻って来た。
「ちょうど近くにいたのが、今、来ましたよ」
「ありがとう。——電話するわ」
「分りました。大したことないといいですね」
「どうも、すみません」
 と、小百合は頭を下げて、玄関を出た。
「小百合、病院のメモは?」
「うん、ここ」
「貸して。——さ、急ごう」
 と、法子がせかせる。
 二人はタクシーに乗った。
 小百合は、ふと思い出した。——六時。
 あのスーパーの前。
 関谷征人が来るんだ。それなのに……。
 小百合は、ギュッと鞄を抱きしめた。
「しっかりしてね」
 と、法子が言った。「オートバイぐらいなら、大したけがしないと思うよ」
 そうではないのだ。小百合は、祖父のことを怒っているのだった。
 よりによって、こんな日に!
 おじいさんの馬鹿!
 ——会いたい。関谷征人に会いたいんだ。
 小百合は目をつぶった。
 どうか——どうか、六時にあそこへ行けますように。
 行けますように?
 そうじゃない! 行くんだ!
 何があっても。——たとえ、おじいさんが死にそうだって、構うもんか。
 小百合は、タクシーの座席に、身じろぎもせずに、座っていた……。
 
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%