日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

失われた少女14

时间: 2018-09-10    进入日语论坛
核心提示:14 二人の女 「心《しん》臓《ぞう》が止るかと思ったよ」 伊波は胸《むね》を撫《な》でおろした。 「いい気味だわ」 少女
(单词翻译:双击或拖选)
 14 二人の女
 
 
 「心《しん》臓《ぞう》が止るかと思ったよ」
 伊波は胸《むね》を撫《な》でおろした。
 「いい気味だわ」
 少女が、包《ほう》丁《ちよう》を、コートの下へしまいこむ。
 「危《あぶ》ないよ、そんなもの持ってちゃ」
 「いいの。どうせ死ぬんだって、私《わたし》だけじゃないから」
 少女の言い方は、冗《じよう》談《だん》とも本気ともつかなかった。しかし、わざわざ雪の中をここまでやって来たのだ。冗談ではないのだろう。
 雪をかぶったのか、着ているコートは、かなり濡《ぬ》れていた。そういえば顔色も青い。
 「大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》か? 寒いだろう」
 「一人で残されている方が、ずっと寒い」
 と、少女は言った。
 「分ったよ」
 「分ってないわ」
 と、少女は言い返した。
 それから、声を低くして、
 「分ってない」
 と、くり返した。「あの女の人、誰《だれ》なの?」
 伊波は、ちょっと間を置いて、言った。
 「見たのか」
 「もちろんよ」
 伊波は、仕事で、人に会うから、とこの少女に言って、出て来たのである。しかし、そうでないことを、この少女はよく分っていたようだ。
 「——昔《むかし》の友だちだ」
 「恋《こい》人《びと》、でしょ」
 「うん。——まあ、そうだ」
 少女は、急によろけて、傍《そば》の壁《かべ》によりかかった。伊波はびっくりした。
 「おい! どうした? 大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》か?」
 「放っといてよ!」
 と、少女は身をよじった。「あんたなんか——大《だい》嫌《きら》い!」
 「なあ、気分が悪いのなら、どこかで休んで行かないと——」
 「平気よ! 歩いて帰るわ」
 少女は二、三歩進んで、その場に、崩《くず》れるように倒《たお》れた。
 「おい! しっかりしろ」
 伊波が駆《か》け寄《よ》って抱《かか》え上げたが、少女は、どうやら意《い》識《しき》を失っている様子だった。
 「——参ったな」
 伊波は、しばし、どうしていいものやら分らず、ただキョロキョロと左右を見回していた。
 誰か来てくれないか、と思いつつ、一方では、誰かに見られたらどうしよう、と、矛《む》盾《じゆん》した思いだった……。
 
 パトカーがホテルの正面について、村上が降《お》りて来るのが見えた。
 律子も、じっとしてはいられない。テラスを出て、ロビーを歩いて行った。
 村上が、ホテルのフロントで、何やら話をしている。
 ホテルの側では、責《せき》任《にん》者《しや》らしい男が出て、やけに固苦しい顔をして、村上の話を聞いていた。
 ——何があったのだろう?
 伊波が戻《もど》って来るのではないか、と気にしながら、律子は、フロントの手前で立っていた。
 「じゃ、よろしく——」
 と、村上が言って振《ふ》り向く。「ああ、奥《おく》さん」
 「何かありましたの?」
 と、律子は訊《き》いた。
 「伊波は?」
 「今、手洗いに行っています」
 「こちらへ」
 村上は、律子を促《うなが》して、ロビーの奥へと入って行った。
 「何か分ったんですの?」
 「いや、全く申《もう》し訳《わけ》ない話です」
 と、村上は頭をかいた。
 「え?」
 「伊波の所へ行く直前、殺《さつ》人《じん》事《じ》件《けん》がありましてね。犯《はん》人《にん》が逃《とう》亡《ぼう》中《ちゆう》なので、緊《きん》急《きゆう》手《て》配《はい》ということになったのです」
 「まあ」
 律子は目を見《み》張《は》った。
 「トラックの運転手が殺されたんです。犯人はこの付近に潜《ひそ》んでいるらしい」
 「こんな雪の中で、ですか」
 「そこが奇《き》妙《みよう》です。——いや、実を言うと、私も現《げん》場《ば》をまだ見ていません。これから行かなくてはならんのです」
 「じゃ、伊波さんの方は——」
 「申し訳ないのですが、後回しにせざるを得《え》ません。何しろ、公式の捜《そう》査《さ》ではないので……」
 村上は息をついて、「いや、あなたに、すっかりご迷《めい》惑《わく》をかけてしまって」
 「いいえ、そんなことはありません」
 律子は、むしろホッとしていた。
 「では、伊波が戻《もど》って来るといけない。私はこれで——」
 村上は歩きかけて振《ふ》り返り、「もう東京へお帰りですね?」
 と訊《き》いた。
 律子は、一《いつ》瞬《しゆん》ためらった。
 「ええ……たぶん」
 と、曖《あい》昧《まい》に答える。
 「ご主人へ、くれぐれもよろしくお伝え下さい」
 村上は、丁《てい》寧《ねい》に言って、ロビーを抜《ぬ》けて出て行った。
 ——どうしたのだろう?
 突《とつ》発《ぱつ》事《じ》件《けん》で、結局村上の依《い》頼《らい》も、なかったのと同じことになった。
 律子は何となく気が楽になっていた。これで、伊波と、後ろめたさを感じないで、話ができる。
 パトカーの赤い灯《ひ》が、ホテルから遠ざかって行く。
 ——律子は、それを見送って、しばらく立っていたが……。
 「あら」
 伊波はどうしたのだろう? いやに遅《おそ》いけど。
 律子も、手洗いに行こうと、廊《ろう》下《か》を歩いて行った。部屋へ戻《もど》るのも面《めん》倒《どう》だ。
 角をヒョイと曲って、誰かにぶつかりそうになり、アッと声を上げた。
 「君か!」
 伊波だった。
 「何してるの? 誰、その女の子?」
 伊波は、眠《ねむ》っているのか、ぐったりした一人の少女を、背《せ》負《お》って、立っていたのだ。
 「いや——実は、ちょっとね——困《こま》ってるんだ」
 伊波が口ごもった。
 律子には分った。——この子なのだ。
 やはり、本当に「女」はいた。でも、「少女」と呼《よ》んだ方が似《に》合《あ》いそうだった。
 「どう言えばいいかな……」
 伊波は当《とう》惑《わく》していた。
 「それはいいわ。ともかく——具合でも悪いの?」
 「うん、雪の中を歩いて来たらしい。体が熱っぽいんだ」
 「そう」
 一《いつ》瞬《しゆん》の間に、決《けつ》断《だん》していた。「私の部屋へ運びましょう」
 「いいのかい?」
 「大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》。ツインルームだから、ベッドが余《あま》ってるの。——運んで行ける?」
 「ああ、何とかね」
 「じゃ、そっちの階《かい》段《だん》から行きましょう。人目につかなくて済《す》むわ」
 と、律子は指さした。
 「分った。じゃ、案内してくれ」
 伊波は言って、少女の体を、かかえ直した。
 ——幸い、誰にも見られなかった。
 律子が、鍵《かぎ》を開けて、中の明りを点《つ》けると、伊波は、少女をベッドまで運んで、おろした。そして、床《ゆか》に座《すわ》り込《こ》んでしまった。
 「ああ、参ったよ!」
 ハアハア息を切らしている。
 律子は笑《わら》って、
 「だめねえ、一人になって、少しはペンより重い物を持ってるかと思ったのに」
 とからかった。
 「いや——それにしたって、重すぎるよ!」
 と、喘《あえ》いでいる。
 「ねえ、後は任《まか》せて。その子を寝《ね》かせて、熱でも測《はか》ってみるわ。もし必要なら医者を頼《たの》まないと」
 「しかし、君にそんなことまで……」
 「いいのよ。あなたの知ってる子なんでしょ?」
 「うん、まあ……」
 と、伊波は頭をかく。「ちょっと、手短には話せないんだ」
 「分ったわ。じゃ、後で、ゆっくり聞くから。——ともかく、服を脱《ぬ》がさないと。濡《ぬ》れてるんじゃ、冷え切ってるわ、きっと」
 「じゃ、頼むよ」
 と、伊波は部屋を出ようとして、「僕《ぼく》は下にいるから」
 と言った。
 「待って!」
 律子が言った。
 「何だい?」
 「あなたも泊《とま》ったら?」
 「ここへ?」
 「そう。——だって、もうずいぶん遅《おそ》いし、この子の様子も、気になるでしょ?」
 伊波はちょっと迷《まよ》っていたが、
 「それしかないな」
 と肯《うなず》いた。「じゃ、フロントで、申《もう》し込《こ》んでくるよ」
 「大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》。そう混《こ》んでる時期じゃないわ」
 「分った。それじゃ、よろしく頼《たの》む。部屋が決ったら、電話するよ」
 伊波が出て行くと、律子は、フッと息をついた。
 手早く着《き》替《が》えをして、セーターとスラックスの軽《けい》装《そう》になる。
 少女をベッドに真っ直ぐに寝《ね》かせ、額《ひたい》に手を当ててみる。——熱がある。かなり高いようだ。
 やっぱり医者を呼《よ》ばないと無《む》理《り》かしら、と律子は思った。
 まず、コートから脱《ぬ》がしにかかった。——コトン、と何かが床《ゆか》に落ちる。
 律子は目を見《み》張《は》った。小さな包《ほう》丁《ちよう》である。
 「こんなもの……」
 と呟《つぶや》いて、少女の顔を眺《なが》めた。
 可愛《かわい》い少女である。——十七か八。おそらく、そんなところだろう。
 恋《こい》人《びと》にしては、ちょっと若《わか》すぎる気もするわね、と思った。
 よく、作家の所へ、「恋人志《し》願《がん》」の女の子がやって来ることがある。この少女も、その口かもしれない。
 しかし、ちゃんとした大人《おとな》の女《じよ》性《せい》ならともかく、こんな少女を置いておくなんて……。下手《へた》をすれば、犯《はん》罪《ざい》になる。
 そういう点、慎《しん》重《ちよう》な伊波としては、奇《き》妙《みよう》なことだ、と思った。
 でも、この包《ほう》丁《ちよう》といい、雪の中、こんな所までやって来たことといい、伊波とこの少女は、ただの知り合い、というようなものではないようだ。
 ——ともかく、そんなことは後回しだわ。
 律子は、少女の服を脱《ぬ》がせて行った。
 
 「うん、一泊《ぱく》でいい。——ああ、どうもありがとう」
 と、伊波は、キーを受け取って肯《うなず》いた。
 「この近くにお住いですね」
 と、フロントの男が言った。
 「よく知ってるね」
 「時々、あの山小屋風の喫《きつ》茶《さ》店《てん》でお見かけします」
 「そうか。——いや、ちょっと知人と夕食をとってね、もう遅《おそ》いから、一晩《ばん》泊《とま》って行こうかと思って」
 「今夜はお出にならない方がよろしいと思います」
 「そう? まあ、かなり積ってはいるけどね」
 「いえ、実は、さっき県《けん》警《けい》の方がみえまして——」
 「警察?」
 「人殺しがあったそうです。トラックの運ちゃんが殺されて、犯人はこの付近を逃《とう》亡《ぼう》中《ちゆう》ということで」
 「人殺し! それは……」
 伊波は、思わず表へ目を向けた。
 この雪の中で?——誰が一体逃《に》げられるというのか。
 ふと、伊波は、あの少女が、包《ほう》丁《ちよう》を持っていたことを思い出した。——まさか!
 「強《ごう》盗《とう》か何かなのかね」
 と、伊波は言ってみた。
 「さあ、分りませんが。——ともかく、怪《あや》しい客が来たら知らせろ、と言われておりましてね」
 「僕は怪しくない方に入れてもらえたわけだね」
 フロントの男は、伊波の言葉に笑《わら》った。
 伊波の方も、微《ほほ》笑《え》んではいたが、内心、とても笑える気分ではなかった……。
 「カフェテラスはまだ開いてるのかい?」
 「はい。あと三十分ほどでしたらどうぞ」
 「ありがとう」
 ——またカフェテラスへ戻《もど》った。今度は、ホテルの泊《とま》り客として、である。
 コーヒーを頼《たの》んで、まだ雪の降《ふ》りしきる戸外を眺《なが》める。
 殺人か——俺《おれ》には何の関係もないことだ。
 伊波は、自分にそう言い聞かせた。
 そっと天《てん》井《じよう》の方へ目を向ける。——律子は、あの少女を見て、どう思っただろう?
 あまり驚《おどろ》いた様子もないのが、ちょっと伊波には意外だったが……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(1)
100%
踩一下
(0)
0%