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失われた少女26

时间: 2018-09-10    进入日语论坛
核心提示:26 侵《しん》入《にゆう》者《しや》 伊波と小池は、喘《あえ》ぎ喘ぎ、別《べつ》荘《そう》へ辿《たど》りついた。 「いや
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 26 侵《しん》入《にゆう》者《しや》
 
 
 伊波と小池は、喘《あえ》ぎ喘ぎ、別《べつ》荘《そう》へ辿《たど》りついた。
 「いや、雪の中を歩くのは大変だな!」
 小池が、玄《げん》関《かん》のドアを開けながら言った。
 「開けっ放しか。物《ぶつ》騒《そう》だな。——律子。どこだ?」
 伊波は続いて入って来ると、
 「変ですね」
 と眉《まゆ》を寄《よ》せた。「——おい! どこにいるんだ?」
 返事はなかった。小池と伊波は顔を見合せた。
 「どうもおかしい。捜《さが》してみましょう」
 と、小池は言った。
 二人は左右へ別れて、手早く部屋を覗《のぞ》いて回った。続いて二階へ。
 「——何だか冷たいな空気が」
 と、伊波が言った。「窓《まど》でも開いているようだ」
 だが、どの部屋にも、二人の姿《すがた》はない。
 「——こんな雪の中へ出て行くなんて、考えられない!」
 小池は息を弾《はず》ませて言った。
 伊波は、少女の寝《ね》ていた部屋へ入って、中を見回した。
 どこへ行ったんだろう? 出て行くはずがないが……。
 ふと、目が窓《まど》の下へ行った。歩み寄《よ》って、かがみ込《こ》む。
 「どうかしましたか」
 と、小池がやって来た。
 「湿《しめ》ってるんです、カーペットが」
 「ほう」
 「雪が降《ふ》り込《こ》んでいたんじゃないかな。きっとここが開いていたんだ」
 「どうして?」
 「分りません」
 伊波は首を振《ふ》った。「——困《こま》りましたね。どうしますか?」
 「こうなったら、律子を——律子と、あの女の子を捜《さが》すのが先決です。例の雪男は後回しだ」
 そう言って、小池はハッとした。「まさか、あの男がここに……」
 「そんな——」
 伊波は目を見《み》張《は》った。「しかし、もしそうだとして、その雪男の目的は何です?」
 小池は、黙《だま》って首を振《ふ》った。
 あの少女が、柴田徳子の娘——確《たし》か侑《ゆう》子《こ》といった——であることは間《ま》違《ちが》いない、と思っていた。
 小池には、伊波がそれを知っていて黙《だま》っているのか、それとも知らずにいるのか、判《はん》断《だん》できなかった。
 「電話は通じないかな」
 小池は呟《つぶや》いて、少女の部屋を出た。
 二人が居《い》間《ま》へ降《お》りて行く。——電話は不通のままだった。
 「参ったな!」
 小池は呟《つぶや》いた。
 表面は、いかにも職《しよく》業《ぎよう》的《てき》な冷静さを装《よそお》っているが、内心、かなり焦《あせ》っていた。
 律子が、大男の手で絞《し》め殺《ころ》されて、雪の中に横たわっている光景が目に浮《う》かんだ。
 「捜《さが》しに出ますか」
 と、伊波は言った。
 「いや。——無理でしょう、この雪では」
 小池は、少し考えて、「私《わたし》がこの近くを調べて来ます。あなたはここにいて下さい」
 と言った。
 「一人じゃ危《あぶ》ないですよ」
 「私は刑《けい》事《じ》ですからね」
 小池はこわばった微《び》笑《しよう》を浮かべた。
 「しかし、私の方がこの近くは慣《な》れていますよ」
 「大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》。この建物が見える範《はん》囲《い》から出ないようにします。もし、誰《だれ》かに連《つ》れ去《さ》られたりしたのなら、何か痕《こん》跡《せき》があるでしょう」
 「しかし……」
 「戻《もど》って来たとき、またここに誰もいなかったら、心配しますよ。すぐ戻りますから」
 「分りました」
 と、伊波はため息をついた。「では、ともかく、あまり長く外にいない方がいい。体力も消《しよう》耗《もう》しますからね」
 「分りました」
 小池が出て行くと、一《いつ》瞬《しゆん》、冷気が居《い》間《ま》の方にまで、吹《ふ》きつけて来た。
 伊波は、ソファに腰《こし》をおろした。
 あの子と律子。——二人して、ここを出て行く理由があるだろうか?
 といって、もし例の雪男がやって来たのなら、もう少し、荒《あ》らされているとか、何かしているはずではないか。
 分らない。——柴田徳子という女も、なぜここへ向ったのか?
 この雪の中だ。よほどのことがなければ、出るはずがない。伊波もあの女を、Mホテルで見るまでは知らなかった。
 ただの愛読者などではないはずだ。何かあるのだ。
 「分らん……」
 と、伊波は呟《つぶや》いた。
 律子のことも、あの少女のことも、気になる。
 そうか。もしかしたら、柴田徳子がやって来たというのは——。
 「あの子はどこです?」
 突《とつ》然《ぜん》、声がして、伊波は仰《ぎよう》天《てん》した。
 居《い》間《ま》の入口に、柴田徳子が立っていた。
 「——どこから入ったんです?」
 と、伊波は訊《き》いていた。
 どうでもいいようなことが、つい口から出て来る。
 「あの子はどこです!」
 徳子が進み出て来る。「あなたと一《いつ》緒《しよ》に車で出るのを見たんですよ!」
 「あの子……。あの女の子のことですか」
 「どこにいます?」
 そうか。この女の娘《むすめ》なのか。
 「僕《ぼく》も知りませんよ。心配しているんです」
 と、伊波は言った。「あなたの娘《むすめ》さんなんですか?」
 徳子は、ちょっと息をついて、自分を落ちつかせているようだった。
 「——私の娘です。侑《ゆう》子《こ》といいます」
 「ゆう子、ですか」
 と、伊波はくり返した。
 あの少女に名前がつくと、それはそれで妙《みよう》な感じだった。
 「行方《ゆくえ》不《ふ》明《めい》になっていたんです、もう五年になります」
 徳子は、じっと伊波を見つめた。「あの子がなぜ、あなたの所に?」
 「僕にも分りません。ただ、ある日突《とつ》然《ぜん》やって来たんです。そして居《い》ついてしまって……。名前を訊《き》いても、忘《わす》れた、と言って——」
 「それを信じたんですか?」
 「追い出すわけにも行かなくてね」
 と、伊波は肩《かた》をすくめた。「ああ、誓《ちか》って言いますが、あの子には指一本触《ふ》れていません。本当ですよ」
 「それはともかく——私は娘が戻《もど》れば、それでいいんです」
 「何か事《じ》情《じよう》がおありのようですね」
 徳子は、ちょっとキッとなって、
 「先生には関係のないことでしょう」
 と言った。
 「確《たし》かに。しかし、差し当りは、発見しなくてはなりません。小池という刑《けい》事《じ》の奥《おく》さんも姿《すがた》が見えないんです。今、ご主人が捜《さが》しに出ていますが——」
 伊波はふと眉《まゆ》を寄《よ》せて、「奥さん、どうやってここへおいでになったんです?」
 と訊《き》いた。
 徳子は、ちょっとためらった。
 「車です。ホテルで借りて」
 「嘘《うそ》はいけませんよ」
 と、首を振《ふ》る。「私と小池さんで、この付近を散々捜したんです。それに、この雪では、もう車でも来られない。それなのに、少しも雪で濡《ぬ》れていませんね」
 徳子は、じっと伊波を見《み》据《す》えていた。
 それから、徳子はフッと笑《え》顔《がお》になった。伊波はギクリとした。徳子が、まるで別人になったかのような気がしたのである。
 「さすがに作家の方はよく分ってらっしゃいますね」
 と、徳子は言った。
 「どうやってここへ来たんですか?」
 もう一度、伊波は訊いた。
 「この人に連れて来てもらったんです」
 徳子は、居《い》間《ま》から顔を出して、肯《うなず》いて見せた。
 伊波は顔から血の引くのを感じた。
 まるで居間の出入口をふさぐように、その男が現《あら》われた。腕《うで》にかかえられているのは、律子だ。
 「彼女《かのじよ》をどうした!」
 と、伊波は恐《きよう》怖《ふ》も忘《わす》れて叫《さけ》んだ。
 「誤《ご》解《かい》しないで下さい」
 と、徳子は言った。「この女の人は、勝手に雪の中を歩いて来て、この人にぶつかったんです。気を失っているだけですわ」
 「ソファに寝《ね》かせてやって下さい」
 と、伊波は言った。
 徳子が、大男の方へ肯いて見せる。大男は、のっそり入って来た。
 何だか居間が狭《せま》くなったような気がした。
 ソファに横たえられた律子の方へ、伊波はかがみ込《こ》んだ。青白い顔をしているが、脈《みやく》拍《はく》はきちんと打っている。
 寒い所にいて、指先がかじかんでいる。
 「この人は、武井といいますの」
 と、徳子が言った。「ずっと以前、うちで働いていてくれたのです」
 「あなたの所で?」
 「そうです。私には忠《ちゆう》実《じつ》な召《めし》使《つかい》でした」
 と、徳子は言った。「——さあ、後は、何とかして、侑子を見付けなくては」
 大男が、じっと伊波を見つめた。
 「——おい、やめてくれ!」
 伊波はあわてて言った。「僕は本当に何も知らないんだ!」
 「訊《き》いてみてごらん」
 と、徳子が言った。
 逃《に》げる間もない。大きな手が、まるで鋼《こう》鉄《てつ》のような強さで伊波の肩《かた》をぐっとつかんだと思うと、伊波は五十センチも持ち上げられていた。
 「やめてくれ! 離《はな》せ! おい!」
 伊波が手足をばたつかせても、まるで効《こう》果《か》はない。
 大男が、ヒョイと伊波を放り出した。——したたかに床《ゆか》に打ちつけられて、伊波は呻《うめ》いた。
 こいつは化《ばけ》物《もの》だ!
 「侑子はどこです?」
 と、徳子が訊く。
 「知りませんよ!——本当だ!」
 「信じられませんね。あの子がどこへ行くというんです?」
 「僕が知るもんか!」
 伊波は起き上った。
 「この人に殺させるのは簡《かん》単《たん》ですよ」
 と、徳子は言った。「私にはあの子が必要なんです!」
 そのとき、居《い》間《ま》の入口で声がした。
 「分ってるわ」
 ——誰もが、振《ふ》り向《む》いて、凍《こお》りついたように動かなかった。
 少女が——侑子が、立っていたのだ。
 
 もうだめだ。
 小池は、激《はげ》しく喘《あえ》いだ。——諦《あきら》めよう。
 何か、予期しなかった出来事で、律子がホテルへでも戻《もど》ったのか。そうならいいのだが。
 大分、別《べつ》荘《そう》から遠くへ来てしまった。
 辛《かろ》うじて、木々の間に灯《ひ》が見える。これ以上遠くへ行くと、戻れなくなりそうだ。
 仕方ない、戻るか。
 小池は、歩いて来た足《あし》跡《あと》を辿《たど》って、戻って行った。少しは楽なのである。
 体が凍《こお》り始めたんじゃないかと思うほど、寒い。——雪は、小《こ》降《ぶ》りになっていた。
 正直な話、律子がいなくなって、こんなに我《われ》を忘《わす》れるとは、思ってもいなかった。俺《おれ》にとって、あいつはかけがえのない女なんだ、と思った。
 最悪の事《じ》態《たい》のことは考えまい、とした。あいつが死ぬわけはない!
 そうだとも。——子《こ》供《ども》を作って、育てて、総《すべ》てはこれからだ。こんなときに、死なれてたまるか!
 やっと別荘の前まで来て、小池はハッとした。——足跡。
 もちろん、伊波や、小池自身のものはある。しかし——この大きなのは?
 とてつもない、大きな足だ。
 小池は、手を激《はげ》しくこすり合せ、拳《けん》銃《じゆう》を抜《ぬ》いた。かじかんで、力が入らない。
 小池は、別荘のわきに回った。
 居《い》間《ま》の窓《まど》が明るい。カーテンは引いてあるが、端《はし》から、少しは中の様子が分るはずである。
 そっと窓に顔を近付けた。
 いきなり——そいつが目に入った。
 間《ま》違《ちが》いない! あの「雪男」だ。
 なぜここにいるのか、それは分らないが、ともかく、問題は今、どうするか、ということだった。
 向うは、もう何人も殺している。
 しかし、スーパーマンじゃないのだ。油《ゆ》断《だん》しなければ大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》だ。
 小池は、玄《げん》関《かん》の方へと戻《もど》った。——一気に中へ入るしかない。
 そっと入ろうとしても、音と、冷たい風とで気付かれるに違いないからだ。
 ゆっくりと、右手の指を曲げては伸《の》ばした。少し、感覚が戻って来る。
 よし、行くぞ。
 小池は、拳《けん》銃《じゆう》をしっかりと握《にぎ》りしめ、玄《げん》関《かん》のドアを開けた。
 一気に居《い》間《ま》へ飛び込《こ》んで、両手で握った拳銃を、大男へ向ける。
 「動くな! 撃《う》つぞ!」
 伊波が息を呑《の》んだ。
 大男は、低く唸《うな》った。——小池の目が、ソファに横たえられた律子へと吸《す》い寄《よ》せられる。
 大男の手が、椅子《いす》をつかんでいた。小池に向って、真っ直ぐに椅子が飛ぶ。同時に拳銃が発《はつ》射《しや》されていた。
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