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死体は眠らない08

时间: 2018-09-14    进入日语论坛
核心提示:8 悲しい星の下に 「誰かが、私たちのやっていることを、どこかから見ているのよ」 と祐子は言った。 さすがに、祐子も途《
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 8 悲しい星の下に
 
 「誰かが、私たちのやっていることを、どこかから見ているのよ」
 と祐子は言った。
 さすがに、祐子も途《と》方《ほう》にくれている様子である。それはそうだろう。現に地下室にあるはずの浮浪者の死体が、二階へ上って来ているのだから。
 しかも、ベッドの下にだ。ベッドこそ別だが、美奈子の死体を隠したのも、ベッドの下だったことを考えると、これをやった奴は、美奈子の一件の方も知っていると考えるべきだろう。
 「ねえ、落ち着いて考えましょう」
 と祐子は言った。「確かにこの死体は地下室にあったわよね」
 「間違いないよ。君も見たじゃないか」
 「ええ。それがいつの間にかここへ移って来ている。誰かが運んだはずだわ。死体が自分で歩くはずはないんだから」
 「うん」
 「ということは……私たちが計画を立て、奥さんの死体を地下へ運んで、その後、誰かがこれをやったのよ。やっぱりそうよ。——分るでしょ?」
 「なるほど」
 と僕は肯いた。「よく分らない」
 「吉野さんよ! 他にこんなことをする人が考えられる?」
 「吉野が……」
 「だってそうでしょ? 私の力じゃ、とてもこんな重い死体を運んじゃ来られないもの」
 「まさか君がやるわけないよ」
 「そうなると、もう吉野さんしかいないじゃないの」
 なるほど。彼女の説明は実に論理的で、明快で、僕のように非論理的な人間にも、容易に理解できた。
 要するに悪いのは吉野の奴なのだ!
 「吉野をクビにしよう」
 と僕は言った。
 「すぐに経営者的な発想をするのね。それがいけないのよ」
 と、祐子は手厳しく言った。
 しかし、同じ手厳しさでも、美奈子と祐子では、こうも違うのである。美奈子の場合は殺意を呼び起こしたが、祐子の場合は、抱《だ》いてキスしたくなるのだった。僕はちょっとおかしいのかな?
 「吉野さんがなぜそんなことをしたのか、そして目的は何なのか、知る必要があるわ。たぶんお金だと思うけど」
 「給料を倍にしてやるか」
 と僕はまた経営者的発想になってしまう。
 「たぶん、吉野さんは真相を感づいてるのね。だって、浮浪者の死体を見付けたってことは、奥さんの死体も見付けたってことでしょう。だから、あなたの計画を手伝うふりをして、口止め料として身代金をせしめるつもりなんだわ。この死体をわざわざ運んで来たのも、きっと私たちに、何もかも知ってるんだぞ、って分らせるためなのよ」
 「そうか。——恩知らずめ! 成敗してくれる!」
 今度はTV時代劇の影《えい》響《きよう》だ。どうも、僕の繊《せん》細《さい》な感受性は、すぐに影響を受けてしまうらしい。高感度アンテナみたいなものだ。
 「だめよ! 気付かないふりをして、出方を見るの。分った?」
 「しかし……」
 裏切り者と分っている男に、今まで通り、笑顔を見せていられるほど、僕はす《ヽ》れ《ヽ》て《ヽ》いない。純情なのだ。自分で言うのもなんだけど。
 「ね、分った?」
 祐子が微《ほほ》笑《え》みながら、僕にキスした。これで分らないと答えるほど、僕はひねくれてはいない。素直なのだ。
 「分った」
 と、答えて、もう一度祐子にキスをした。
 そのとき、
 「やってますな、ご両人」
 と、声がした。
 ハッとして振り向くと、いつの間にかドアが開いていて、背広姿の男が、ニヤニヤ笑いながら立っていたのである。
 
 「いや、どうぞ私に構わず続けて下さい」
 男は入って来ると、ドアを閉めた。
 「あなた、刑事さんね」
 と、祐子が言った。
 そうか。どこかで見た顔だと思った。添田刑事の部下の一人だ。ちょっと人相の悪い刑事だった。
 「ドアを開けるときはノックぐらいするもんですよ」
 僕は、他に何も思い付かないので、多少この際、的外れかなと思ったが、一応文句を言うことにした。
 「これは失礼」
 刑事の方は、一向に申し訳ながっているようには見えなかった。「しかし、人に見られたくないことをやるのなら、ドアに鍵《かぎ》をかけるとか、気を付けるべきですな」
 なるほど、それももっともだ。いや、感心している場合ではない。この男は、僕と祐子がキスしているのを見てしまったのだ。
 それはつまり、僕と祐子が恋《こい》人《びと》同士であるということを知られたのと同じである。
 日本では、恋人か夫婦以外の男女がキスすることは、商売上必要な俳優などを除けば、あまりないのだから、仕方ない。
 そうなると、美奈子を誘拐したのも、実は僕と祐子ではないかと疑われることにもなりかねない。もちろん僕は美奈子を誘拐してはいない。殺しただけだ。しかし、それで警察が納得してくれるとは思えなかった。
 「ええと……刑事さん」
 何を言うか考えてもいなかったが、ともかく口を開いた。だが、刑事の方は僕のことは気にもしていない様子で、
 「やあ、見違えたぜ」
 と、失礼なことに、なれなれしく祐子へ声をかけた。
 「え?」
 「忘れたのかな。それとも忘れたふりをしてるのか、智《ち》枝《え》」
 祐子が、ハッと息を呑《の》んだ。
 「あなたは……織《お》田《だ》……」
 「そう、あの頃は制服を着てたからな。思い出したか?」
 何とも感じの悪い男だ。彼女のことをチエとか何とか、漫《まん》画《が》の主人公みたいな名で呼びやがって。
 「下で見たときに、どこかで見た顔だと思ったんだよ。ずっと考えて、やっと分った。いや、何とも取り澄《す》ました顔をしてるじゃないか」
 織田とかいうらしい、その刑事は、いかにもその下劣な品性を思わせるにふさわしい、いやな笑い方をした。
 「あなたも出世したようね」
 「多少はね」
 織田は肩をすくめ、「しかし、こちらの人のように、億って金をポンと出せるところまでは、とてもとても……」
 と僕の方を顎《あご》でしゃくった。
 全く、礼儀を知らない奴だ!
 「ところで今は早川祐子って名乗ってるようだな。何を企んでるんだ?」
 と、厚かましく彼女の顎を指でヒョイと引っかけた。
 「やめてよ! 私は何も——」
 「いい子ぶったってだめさ。偽《ぎ》名《めい》を使って、しかも雇主と恋仲で、その奥さんは誘拐されている。——偶《ぐう》然《ぜん》とは思えないね」
 祐子は黙って唇をかんだ。
 「だが、俺《おれ》も昔よりは少々話が分るようになったんだ」
 と、織田は言った。「人生は金だ、ってことも身にしみて分ったし、条件次第じゃ、多少のことには目をつぶるのが利口な生き方だってこともね。お前のことも、すぐには添田さんへ報告したりしない。そっちにも色々事情があるだろうからな」
 「ありがたい話だわ」
 と、祐子は言った。
 「じゃ、失礼するよ。ゆっくり相談するといい」
 織田という刑事は、およそTVの悪代官役にぴったりの笑い顔を見せて出て行った。
 「——何だい今の男は? 税金で食ってるくせに、感じの悪い奴だなあ」
 祐子は、と見ると、ちょっと青ざめた顔で、ベッドに腰をかけると、じっと顔を伏せた。
 「どうしたんだ?」
 と僕は声をかけた。「気分でも悪いの?」
 「——もうおしまいだわ」
 と、祐子は呟くように言った。
 「おしまい? 何が?」
 「私たちのこと。——もうお会いできないわ、私」
 「何を言ってるんだ?」
 「あの男が言った通り……早川祐子というのは、偽名なの」
 「ギメイというと……氏名のニセモノのこと?」
 ちょっとややこしい説明だったが、祐子はゆっくり肯いた。
 「じゃ本当の名前は?」
 「水《みず》野《の》智枝というの」
 恋人の名前が急に変るというのは、どうも妙《みよう》な気分である。——水野智枝、水野智枝、水野智枝。せっせと頭へ叩《たた》き込む。
 「で、あの男は……」
 「私、昔、非行少女だったの」
 「非行?」
 「父は大酒飲みで女遊びがひどくて、母は病気。——私は家がいやで、家出してぐれていたの」
 「そう……。でも、それは社会が悪いんだよ」
 「そう言ってくれると、余計に辛《つら》いわ。私……補導されて、そのときあの織田という男が担当だったのよ」
 「君の過去を知ってるってわけだね」
 「そうなの。——でも、私、改心して、それからは何も悪いことなんかしていないわ、本当よ」
 「もちろん信じてるよ!」
 「でも、もし私が偽名を使ってることが分ったら、私が疑われるわ」
 「そんなこと——」
 「絶対よ! あなたにまで迷《めい》惑《わく》がかかるわ。別れましょう」
 「何を言ってるんだ! 僕は君なしじゃ、何もできないんだよ」
 これは正に本音だ。「あの織田って刑事に、君がもう悪いことなんかしていないと納得させりゃいいんだろう?」
 「そう簡単じゃないわ。あの言い草を聞いたでしょ? 『人生は金次第だ』とか、『物分りが良くなった』とか。——要するに金をよこせば黙《だま》っててやるって意味なのよ」
 「刑事が?——そいつはけしからんじゃないか!」
 こっちも人殺しをやっているのだから、あまり威《い》張《ば》れないが、やはり、刑事が口止め料をよこせとは、許せない話である。
 「仕方ないわ。こっちは弱味を握《にぎ》られてるんだし」
 「どうする?」
 祐子は——いや、水野智枝は、しばらく考え込んでいたが、やがて僕を真直ぐに見つめて言った。
 「あの人にも死んでもらうしかないわ」
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