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死体は眠らない10

时间: 2018-09-14    进入日语论坛
核心提示:10 消えた刑《けい》事《じ》 「申し訳ありません」 と、池山刑事は頭をかいた。 「なあに、構いませんよ」 僕は至っておお
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 10 消えた刑《けい》事《じ》
 
 「——申し訳ありません」
 と、池山刑事は頭をかいた。
 「なあに、構いませんよ」
 僕は至っておおらかなところを見せた。ワッハッハと笑おうかと思ったが、考えてみたら、僕は今、女房を誘拐されているはずなのだ。笑うのはまずい、と気付いて、
 「ワッ」
 だけ言って、口を閉じた。
 池山刑事が詫《わ》びているのは、要するに、急いで出た電話が、株を買わないかというセールスだったからである。
 それにしても、最近のセールスマンは無精になったものだ。
 僕は居間を出ようとした。
 「失礼——」
 と、織田が伸《の》びをしながら言った。「なあ池山」
 「はい」
 「コーヒーが欲しいところだな」
 「そうですね」
 「お前、ちょっと車で行って買って来いよ」
 「コーヒーをですか?」
 「この先のドライブ・インで売ってたぜ」
 「でも……電話が……」
 「俺がついてる。任せとけよ。こんな物、一人いりゃ充分だ」
 「分りました」
 池山という若い刑事は、言われるままに、家を出て行った。車の音が遠ざかる。
 「——お座りなさいよ」
 と、織田が言った。
 「僕に話でも?」
 「もちろんですよ。でなきゃ、どうして池山を使いに出しますか」
 織田はタバコをくわえて火を点《つ》けた。「——どうです、あの智枝は」
 「彼女の名は早川祐子です」
 「ああ、そうでしたね、今は」
 織田は愉《ゆ》快《かい》そうに、「——どんな名前でも、智枝は智枝です。私にとっちゃね」
 「刑事さん」
 僕は怒《いか》りを抑えて言った。「いいですか、彼女はもう立派に立ち直っているんです。それなのに昔のことを暴き立てることはないじゃありませんか」
 この正論の前には、どんな反論もあり得ない、と僕は信じていた。——事実、反論はなかった。
 ただ、織田は声を上げて笑ったのだった。
 「いいですか」
 織田は僕を愉快そうに眺《なが》めながら、「あなたはかなり彼女にいかれておられるようですが、忠告しておきますよ。あの女は、男を手玉に取って生きて来たのです。あなたのような、金のある、単純なお人好しなどは、正に絶好のカモですよ」
 「ご心配はありがたいですが——」
 と立ち上ろうとした僕の肩《かた》を、織田はぐっと押《おさ》えた。いくら落ちぶれたとはいえ、やはり刑事だ。力はあって、僕はソファにまた座り込んだ。
 「悪いことは言いませんよ」
 と、織田は言った。「あの女と組むのはおよしなさい。あなたの命にかかわる問題ですよ」
 「大きなお世話ですよ」
 「なるほど」
 織田は肯いて、「これはかなり重症かもしれないな。もう手《て》遅《おく》れでないといいんですがね」
 織田は、僕が黙っているのを、しばらく眺めていたが、その内、僕の方へ素早く寄って来た。僕はギョッとして逃げようとした。
 「いや、ご心配なく。何もしませんよ」
 と織田は軽く笑った。
 そして、不意に真顔になって、言った。
 「奥さんはどこです?」
 僕はギョッとした。しかし、すぐに平静に戻って、
 「誘拐犯に訊いて下さいよ」
 と言ってやった。
 織田は首を振って、
 「あなたのためだ。早くしゃべっちまいなさいよ」
 「知らないものは——」
 「そうですか。せっかくあなたを助けてあげようとしたのに」
 「僕より女房を助けてやって下さいよ。仕事でしょ」
 「奥さんは……たぶん、もう死んでる」
 と、織田が独り言のように言って、「違いますか?」
 「知りませんよ」
 「誘拐されたことにして、身代金を払う。だが、もちろん受け取るのもあなただ」
 「何の話を——」
 「とぼけるのはおやめなさい」
 織田は遮った。そして、
 「何も、全部よこせと言ってるんじゃない、半々でどうです? 五千万だって、安いもんですよ、刑《けい》務《む》所《しよ》暮《ぐら》しのことを考えれば」
 僕は何も言わなかった。返事をするだけむだなような気がした。
 それに、返事をするにも、下手《へた》なことを言って足を——いや、尻《しつ》尾《ぽ》を出す心配がある。
 何といっても、考えるのは、祐子の係である。
 「まあいい」
 織田は、ニヤリと笑った。「あの女とゆっくり相談するんですな」
 しゃくにさわるくらい、こっちの考えていることが分っているのだ!
 
 二階の、美奈子の部屋へ行くと、まだ祐子が待っていた。
 「遅《おそ》かったのね。何があったの?」
 「織田って奴としゃべってたんだ」
 僕は、織田の話の中身を伝えた。
 「そう……」
 と、祐子が考え込む。
 「どう思う?」
 「少なくとも、織田は、私たちが、美奈子さんを殺したと思ってるわ。でも、証《しよう》拠《こ》は何もない。あくまで想像よ」
 「うん、それは確かだ」
 「あっちの強味は、私の秘密を握《にぎ》っていることだわ。もちろん、それだけで罪にはならないけど、あれこれ探られるし、その内には、この計画もボロが出て来る」
 「じゃ、どうしよう?」
 「取りあえず、身代金の一部をやると言って、安心させるのよ。それしかないわ」
 「どれくらい?」
 「半分でもいいけど——あんまり素直に受け容れたんじゃ、却《かえ》って怪《あや》しむわ。ここは、三分の一ぐらいで手を打つのよ」
 なるほど、彼女の言葉は実に理《り》屈《くつ》に基づいていて、説得力がある。しかし、僕はこういう交《こう》渉《しよう》の役というのは、てんで苦手なのだ。
 すぐ相手の言い分を鵜《う》呑《の》みにしてしまうくせがある。僕が交渉したんじゃ、身代金を全部、織田へ持って行かれかねない。
 「しかし、僕はちょっと……」
 と渋《しぶ》っていると、優しい彼女はすぐにそれを察して、
 「私に任せて」
 と立ち上った。「織田と話をして来るから」
 「僕もついて行こうか?」
 「いいのよ。一対一の方が話しやすいわ」
 「分った。気を付けて」
 「大丈夫よ」
 祐子は微笑んで、部屋を出て行った。
 やれやれ、これで安心だ。——全く、祐子というのは頼りになる。
 きっと織田を巧く丸め込んでしまうに違いない。祐子に任せておけば、何もかも巧く行く……。
 いささか、我ながら頼りないとは思ったが、人間、向き不向きというものがある。
 僕は、仕事や、面《めん》倒《どう》なことが嫌いなのではない。ただ、「向いていない」だけなのである。
 ——安心したら、少し眠くなって来た。
 疲れているのだ。何しろ昨日以来、僕は実に良く働いている。
 少し横になろう。——美奈子のベッドに、僕は横たわった。
 そういえば、ベッドの下に浮浪者の死体があったっけ。しかし、そんなこと、構やしないのだ。
 ともかく寝よう。
 僕は目を閉じた。羊を一つ、二つと数えたとしたら、四つと数えない内に、眠り込んでいたのに違いない。
 「——社長!」
 という凄い声で、僕はベッドにはね起きた。
 「吉野か。——何だ、一体?」
 「お電話です」
 「代りに出とけよ」
 「しかし——」
 「そのための秘書だろ」
 と僕はまた横になった。
 「ですが……誘拐犯からなんです」
 僕は起き上った。
 「どうして、それを早く言わないんだ!」
 ——居間へ降りて行くと、祐子が、受話器を持って立っていた。
 添田たちも戻って来ていた。もちろん、みんな一言もしゃべらない。
 僕は祐子から受話器を受け取った。——祐子が、いやに冷ややかな、固い表情をしているのが、ちょっと気になった。
 しかし、こんな場合である。そう愉《たの》しげな表情もしていられないだろう。
 添田が近寄って来ると送話口を手でふさいで、
 「できるだけ長びかせて下さい!」
 と囁いた。
 僕は肯いた。そして受話器を耳に当てながら、部屋の中に、あの織田の姿が見えないことに気が付いた。
 「もしもし……」
 と僕は言った。
 「やっと出たか」
 その声が言った。「時間がない。逆探知されちゃかなわんからな」
 「いや、そんなことはしてないよ」
 「分るもんか。——いいかね、一億円だぜ」
 「分ってる」
 僕は、吉野の方をチラッと見た。この電話をかけているのは、やはり吉野ではないのだ。
 「美奈子は無事か?」
 と僕は訊いた。死人のことを無事か、と訊くのは、何となく照れくさい。
 「ああ、元気だぜ」
 と向うはでたらめを言う。
 そこへ、添田刑事が、何やら紙を僕の目の前に差し出す。鼻をかめ、というのかと思ったら、〈奥さんと話をさせろと言って下さい!〉と走り書き。それにしても下手な字である。
 「あ、あの——美奈子と話をさせてくれ」
 無茶を承知で僕は言った。
 ところが、向うの男は、
 「いいとも。待ってな」
 と答えたのだ。
 これにはびっくりした。
 どうやって死人に口を開かせるのか。呆《あつ》気《け》に取られて待っていると、
 「もしもし、あなた?」
 と、女の声が伝わって来た。
 誰《だれ》の声だろう? 確かに、美奈子に似た声ではあっても、明らかに別の女だ。おおかた似た声の持主を捜《さが》したのだろう。
 「美奈子、大丈夫か?」
 「ええ、私は何ともないわ」
 「心配するなよ、落ち着いて——」
 男の声が遮る。
 「もう切るぜ。じゃ、一億円。一円たりと欠けるなよ」
 と凄んで、それで電話は切れた。
 僕は添田の方を見た。
 「——希望がありますな」
 と添田は言った。「あれだけ時間があれば……」
 もう一本、警察用に持って来た電話が鳴って、添田がすぐに出た。
 「どうだ?——そうか。仕方あるまい」
 「だめですか?」
 と、そばにいた刑事が訊く。
 「うん。——残念だが、もう一歩のところらしい。お手数でした」
 「いいえ」
 僕は、室内を見回して、「織田さんって方は?」
 「それが妙でして……」
 と、添田が頭をかいた。「無断でどこかへ行ったっきり戻らないんですよ」
 僕は祐子の方を見た。——祐子の表情は相変らず、人形のように動かなかった。
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