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死体は眠らない32

时间: 2018-09-14    进入日语论坛
核心提示:32 消えた鞄《かばん》 「心にもないこと、ってどういう?」 「たとえば、あなたは凄いケチだとか、意地汚《きたな》いとかね
(单词翻译:双击或拖选)
 32 消えた鞄《かばん》
 
 「心にもないこと、って……どういう?」
 「たとえば、あなたは凄いケチだとか、意地汚《きたな》いとかね」
 「君は本当に——」
 「やめてよ。吉野さんの仮面をはぐのには、それしかないのよ」
 「うん。でも……」
 「ねえ、許してくれる?」
 僕は訴えかけてくる祐子の目をじっと見つめた。——この目が嘘《うそ》をつくはずがない!
 そりゃあ、嘘をつくのは普通、口だから。目だけじゃ分らないが、その汚《けが》れのない、澄んだ眼は、やはり真実に溢《あふ》れているのだ。
 僕は力強く、祐子を抱きしめた。
 ああ、やはり祐子は祐子だ!
 ここで、オペラだと「愛の二重唱」が始まるところだ。
 しかし、その「調和」の中へ、突《とつ》如《じよ》として不協和音が侵《しん》入《にゆう》して来た。
 「や、こちらでしたか」
 と、添田が入って来たのである。「お邪《じや》魔《ま》でしたかな。フフ」
 何ともいやな笑い方をする。
 「何ですか?」
 「ああ、そうだ。お電話ですよ」
 「僕に?」
 「ええ」
 と添田は肯いて、「例の誘拐犯です」
 「どうしてすぐそう言わないんですか!」
 「電話代は向う持ちですよ」
 変なところで経済観念が発達しているのである。
 僕は電話に出た。
 「もしもし」
 「やあ、度々悪いな」
 と、何だか機《き》嫌《げん》のいい声である。
 「それより何の用だ!」
 「お礼を言おうと思ってね」
 「礼?」
 「ああ、一億円のさ」
 僕は面食らった。
 「礼ったって、まだ取りに来ないじゃないか!」
 「もういただいたぜ」
 「何だって?」
 「領収書を出そうか」
 「ふざけないでくれ。僕は——」
 「じゃ、ともかくお礼まで」
 「待ってくれよ!——おい!」
 僕は受話器をゆっくりと戻した。
 「どうしたんですの?」
 と、祐子がそばへやって来る。
 「金を——受け取ったというんだ!」
 「まさか!」
 「本当にそう言ったんだよ」
 添田も、さすがに少し真面目になっていた。
 「確かめてみましょう」
 「いいですよ」
 僕は先に立って、二階へと上った。
 寝室へ入ると、僕はアッと声を上げた。
 ——金庫! 金庫の扉が開いているのだ!
 「そんな馬鹿な!」
 僕は金庫に駆け寄った。
 あの誘拐犯も嘘つきではなかった。本当に、金の鞄は消えていたのだ。
 「いつの間に——」
 と、添田はポカンとしている。
 あ、そうか、と僕は思った。これは盗まれて当然なのだ。これで、正に吉野が金を持ち逃げしたということが立証されたのである。
 見張っていれば良かった、と僕は思った。
 しかし、いくら吉野でも、その金をかかえて逃げるのは大変だろう。
 どこかにいるはずだ。
 「——どうなっているんだ?」
 添田が頭でも痛そうに、寝室から出て行った。あいつも人間なのだ。
 「吉野を見付けたいよ」
 と、僕は言った。
 「そうね。ともかくその戸棚の中に——」
 と、祐子が扉を開く。
 そして——祐子が短く悲鳴を上げた。
 戸棚の中に吉野はいた。
 吉野は座っていた。——何も、そんな窮《きゆう》屈《くつ》な所に座ってなくたっていいじゃないか、と思ったが、彼としても決して好んでそこに座っていたわけでないことは、一目で分った。
 吉野は、ぐるぐる巻きに縛《しば》り上げられていたのだ。手も足も頭も。——いや、頭は縛られていなかった。
 しかし、猿《さる》ぐつわをかまされている。
 どうやら気を失っているらしく、ガクンと頭を垂れて動かない。
 「どうしたんだろう?」
 僕は近寄って、「頭を殴られてるみたいだよ」
 と言った。
 「殴られて?」
 と、祐子が目を見開いた。
 「うん。——ほら」
 僕は、吉野の後頭部を撫《な》でて、その手を見せてやった。——べっとりと赤く塗《ぬ》れている!
 祐子が、大きく口を開けて、
 「ああ! 何てことを——」
 と叫ぶと、吉野に抱きついた。「しっかりして! 何があったの!」
 ——僕は、何とも複雑な想いで、その様子を見ていた。
 祐子が、初めて、生身の「女」に戻《もど》った、一《いつ》瞬《しゆん》だった。いくら鈍《にぶ》い僕でも、こんな場面を見せられては、祐子の愛しているのが、僕でなく、吉野の奴だと納得せざるを得なかったのである。
 「早く——早くお医者を——」
 と、祐子は、まるでいつもの彼女とは別人のようにうろたえている。
 「落ち着いた方がいいよ」
 と、僕は言った。
 「だって、死んじゃうかもしれないわ!」
 と、祐子は叫ぶように言った。
 「静かに。刑事が駆けつけて来ちまうよ」
 「構やしないわ! この人を死なせるわけにはいかないのよ!」
 「死にゃしないよ」
 「そんなこと、どうして分るの?」
 祐子の目は、怒《いか》りで燃えるようだった。「あなたは何も分ってないのよ! あなたなんか何一つ分りゃしない、能なしなんだわ!」
 僕は腹も立たなかった。ただ、哀しかったのだ。
 いつも冷静で、落ち着き払《はら》っている人が、取り乱している光景は、却って見ている方が辛いものである。
 「大丈夫」
 と僕は言った。「軽く殴《なぐ》っただけだよ」
 「あなたが!」
 祐子は、顔を真っ赤にして立ち上った。
 「ねえ、落ち着いて」
 と、僕はあわてて後ずさりした。
 僕の方にも、妻を殺したという弱味があるとはいえ、決して祐子に責められるべき立場ではないと思うのだが、そこは僕の生来の気の弱さである。
 「軽く殴っただけで、そんなに血だらけになるはずがないでしょう!」
 「血じゃないんだよ」
 と、僕は手を見せた。「ほら。——よく見て。ケチャップだよ。さっき台所に行ったとき、手についちまったんだ」
 祐子はじっと僕の手を見ていたが、やがて、体の力が抜《ぬ》けてしまったようで、よろけながら、床にストンと腰をおろしてしまった。
 「——ごめんよ」
 と、僕はハンカチを出して、手のケチャップを拭《ぬぐ》った。
 すると——祐子が笑い出した。
 いや、もちろん、今までだって、祐子は笑っていた。天使のような微《ほほ》笑《え》みも、娼《しよう》婦《ふ》のような色っぽい笑いもあった。
 しかし——この笑いは違っていた。
 お腹《なか》の底からおかしそうで、それでいて、どこか哀しいところのある笑いだった。
 声を上げてはいたが、決して高笑いではなく、といって自《じ》嘲《ちよう》気味の笑いというのとも、違っている。
 そんじょそこらの「笑い」の辞典(そんなものあるのかな)にも、出てはいないだろう、という、妙《みよう》に明るく、それでいて哀しい笑いだったのである。
 「——私としたことがね」
 笑いがおさまると、祐子は首を振《ふ》りながら言った。「あなたにこんな頭があるなんて……。思ってもみなかった」
 「頭というか——君たちの話を聞いたんだよ」
 「そう。やっぱりね」
 と、祐子は肯《うなず》いた。「様子がおかしかったから、そんなことじゃないかと思ってたんだけど」
 「君は頭がいいなあ」
 と僕は心から感心しながら言った。
 「あなたは、そういうことを本気で言ってるのよね」
 祐子は、ちょっと苦笑した。——やっぱり可愛《かわい》い!
 僕も、床にペタンと座り込んだ。
 戸棚の中の吉野と共に、これで三人とも座り込んだわけである。
 もちろん座ったからって、特別、事態が変るわけじゃないが。
 「さあ」
 と、祐子が言った。「これから、どうする?」
 「そうだなあ……」
 僕は、未来をどうこう考えるというのは苦手である。どっちかというと、過去のことを思い出す方が好きだ。
 別に、メランコリックになっているわけではなくて、その方が楽だからなのである。
 「ともかく、どういうことだったのか、話してくれないか」
 と僕は言った。
 「いいわ」
 祐子は肩をすくめた。「あんまり色んなことがあり過ぎたわね。どこから話す?——ともかく、あなたが奥《おく》さんを殺した、そこへ私が来合せた。そこから総《すべ》てが始まったんだわ」
 「そうだったね」
 何だか、ずいぶん昔のことだったような気がする。「君は——前から、この吉野の奴と?」
 「この人も、私にとっては動かす駒《こま》でしかないのよ」
 と、祐子は軽い口調で言った。
 でも、その言い方には無理があった。強がっているのだ。
 「私は、あなたの奥さんの座を狙っていたのよ。最初はね」
 「今は?」
 「あなたと結婚すれば、そりゃぜいたくはできるでしょうけど、やっぱり窮屈だわ。それもいやだな、と思い始めていたの。——ただ、あなたの身辺のことは色々知っておく必要があった。だから、吉野さんにも近づいていたのよ」
 「なるほどね」
 「そんなときに、ここへ来て、奥さんが殺されたのを見付けたわ。——私が内心どんなにあわてたか、分る?」
 「そう? そんな風には、全然見えなかったよ」
 「でも、あわてたのよ。いくら何でも、あなたが奥さんを殺せるとは思っていなかったけど、それをやってしまったという驚《おどろ》き。それだけじゃないわ。奥さんを殺したりすれば、どうせすぐにばれて捕《つか》まるに決ってるってことを、あなたは、まるで分ってなかった」
 「そりゃまあ……」
 「あなたが殺人犯ってことになったら、私が妻になる夢《ゆめ》どころか、恋《こい》人《びと》でいて、お金をもらうことだって不可能になるわ。で、手っ取り早く、現金を手に入れることを考えたわけ」
 「それで、美奈子の誘《ゆう》拐《かい》騒《さわ》ぎをでっち上げることにしたのか」
 「そう。あなたのことだもの、きっとすぐ乗って来ると思ったわ」
 実際、僕はすぐ乗ってしまったわけである。
 「じゃ、吉野の奴には?」
 「吉野さんには、あなたが眠っている間に連《れん》絡《らく》したわ。もちろん私の言う通りにすると言ったけど、そこへ、奥さんのお父さんが亡くなったという知らせが入ったの。——これこそ、吉野さんがここへやって来るのに絶好のチャンスだったわ」
 「知らせが入った?」
 「ここへ、ね、あなた、グーグー寝《ね》てたわ」
 そういわれてみれば、妻の父親が死んで、その知らせが、僕の所へ来ないというのは妙な話だ。
 「じゃあ、君は吉野と二人で、身《みの》代《しろ》金《きん》をせしめようと計画したんだね」
 「そんなところね」
 「しかし——あの誘拐犯の電話は? 吉野の声じゃなかったよ」
 「あれは、吉野さんが急いで探し出した役者の卵なの。お金次第で、何でもやる、っていうのをたまたま吉野さんが知っていて」
 「なるほど、巧《うま》いわけだ」
 と僕は肯いた。「じゃ、女の方も?」
 「あなたの奥さんに似た声の女性を探してもらったのよ。彼女には、ちょっとした冗《じよう》談《だん》だってことにして、出てもらったわけ」
 「そうか……」
 「こっちにとって予定外だったのは、あの添田っていう馬鹿みたいな刑事」
 「みたいな、じゃない。あいつは馬鹿だよ」
 「本当ね」
 僕と祐子は一緒に笑った。——ああ、彼女と一緒に笑うってのは、何てすばらしいことなんだろう!
 「あの人は、チョロチョロ動いて目ざわりだったわ」
 「でも、殺さなかった。——織田刑事みたいにはね」
 「織田の場合は仕方なかったわ」
 と、祐子は首を振った。「あの人は、少々のお金で我《が》慢《まん》してる男じゃない。いつまでもつきまとって来るに決ってるわ。殺すしかなかったのよ」
 「なるほどね」
 僕はため息をついた。
 「もう一つの飛び入りは、大倉よ」
 「大倉のことは、君も知らなかったの?」
 「ええ。あの人の言う通り、奥さんがあなたを殺すために雇ったのよ」
 「そうか……」
 改めて、美奈子ってのは、ひどい奴《やつ》だな、と思った。殺しちまった僕の方はもっとひどいかもしれないが、不思議なのは、祐子のことをひどいとは一向に思わなかったことだ……。
 「ところが、やって来て、忍び込んでみると、私とあなたが、奥さんの死体を前にあれこれやってたわけ」
 「そんな所から見てたのか!」
 すると、大倉の奴、僕と祐子の「個人的対話」も盗み見ていたのか! 失礼な奴だ!
 「そこで考えたのね。あなたを殺しても、もう一文にもならない。あなたをゆすって金を出させるか、どうしようかと思って様子を見ていると、私が吉野さんと打ち合せを始めた……」
 「それで、君と組もうということになったのか」
 「でも、怖《こわ》かったわ」
 と、祐子は言って、首を振った。「あの男、やっぱり異常なところがあったのよ。それが、話していても感じられたわ」
 祐子は敏《びん》感《かん》だから、感じたのだろう。
 「で、大倉は何をやったんだい?」
 「もちろん、死体を運んだのよ」
 と、祐子は言った。「最初は大変だったわ。広い家だし、暗いし、あなたに気付かれないように、奥さんの死体と、あの浮《ふ》浪《ろう》者《しや》の死体を運ぶのに一苦労。とんでもない所へ運んで行って、あわてて隠したり、ね」
 「それで死体があちこち動いたんだね」
 「奥さんの死体は、ともかく運び出したの。見付かったら大変ですものね。計画は水の泡《あわ》だわ」
 「じゃ、例の車で見られた女っていうのは——」
 「そう。マスクをさせて、顔を隠していたのが、奥さんの死体よ」
 「見られたとは思わなかったのかな」
 「まさか、店の女の子が、そんなによく顔を憶えてるとは思わなかったのよ。あれは誤算だったわね」
 僕は、ちょっと間を置いて、訊いた。
 「——美奈子の死体は?」
 「どこかに埋《う》めたはずよ。大倉と吉野さんの二人で」
 そうか。——僕は、車にもう一人、男が乗っていたことを思い出した。
 言われなきゃ思い出さないのだから、これでは探《たん》偵《てい》役《やく》はつとまらない。
 「——ちょっと待ってくれよ」
 と僕は言った。「大倉が、添田を人質にして逃げようとしたとき、どうして君が邪《じや》魔《ま》したんだい?」
 「逃げられっこないからよ」
 と、祐子は言った。「大倉はカーッとなると、もうどうにもならなくなるの。だから、あのままいったら、きっと、警官たちと撃《う》ち合って、死んじゃってたでしょうね。でも、まだあの男は必要だったの。だから、わざと止めたのよ」
 「だけど……」
 「大倉なら、簡単に逃げ出せるって分ってたのよ。実際、あの男は逃げ出したわ。ところが……」
 祐子は肩《かた》をすくめた。「大倉はもう手がつけられなくなってたわ。——私が話しに行っても、まるで受け付けないの」
 「あの、君が囮《おとり》になるといって……」
 「そう、あのときよ」
 「で、どうなったの?」
 祐子はため息をついた。
 「大倉の奴、私を殴って気絶させたのよ」
 「何だって?」
 僕は頭へ来て、大倉を殺してやろうと——いや、もう大倉は死んでいるんだった!
 それにしても、まだ僕は祐子を愛しているのだ!
 この純情はどうだろう! 感動してもらいたいくらいだ。
 「その後はあなたの方がよく知ってるでしょ?」
 例の水責めだ。
 「でも——大倉を殺したのは君だろ?」
 「そうよ。何とかして止《や》めさせないと、あなたを殺しちゃうと思ったから。あなたが死んだら、お金も手に入らないし」
 僕にとっては、わびしいセリフだった。
 「でも、あのあと、池山をどうして殺したんだい?」
 「あれは吉野さんなのよ」
 「吉野が?」
 僕はびっくりして訊き返した。
 「表に待たせておいたの。もし、私が殺す前に、大倉が出てくるようなことがあったら撃てってね。——吉野さん、緊《きん》張《ちよう》しすぎて、ともかく、出て来た人を撃っちゃったのね。可哀そうなことしたわ」
 あのあと殴られた僕も可哀そうだ。
 「それで——」
 と僕は言った。「これから、どうするんだい?」
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