日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

天使と悪魔07

时间: 2018-09-14    进入日语论坛
核心提示:6 恋人の義務とは「誰ですって?」 と、林一恵は訊《き》き返した。「あの私は、マリアというんですけど」「マリア様?」 一
(单词翻译:双击或拖选)
 6 恋人の義務とは
 
 
「誰ですって?」
 と、林一恵は訊《き》き返した。
「あの——私は、マリアというんですけど」
「マリア様?」
 一恵は、受話器をよっぽど置いてしまおうかと思った。
「ええ。でも、何だか気がひけるんです。少しえらい名前すぎて。だからただマリ[#「マリ」に傍点]にしようかと——」
「あのね」
 と、一恵は遮《さえぎ》って、「何か売りつけようっていうの?」
「そ、そうじゃありません。あの、頼まれて電話してるんです。吉原さんに」
「——誰に?」
「吉原さんです。あの——ご存知ありません?」
「吉原って……。知ってるけど、でも——」
 一恵は、あわてて周りを見回した。「どうしたの? どこに……」
「けがしてるんです。で、困ってて。服も血がついてるし。——助けていただきたいんですけど」
 一恵は、少し黙ってしまった。——あまりに突然の話だ。
「——もしもし?」
 と、向うが言った。
「聞いてるわ。あのね——私だって、新聞ぐらい見るのよ」
「ええ。でも、吉原さんがあんなことしないってこと、ご存知でしょ?」
 一恵も、そう言われると詰ってしまった。
 確かに、あのお風呂《ふろ》の一件では頭に来ていたのだが、吉原とは短い付合いではない。人殺しなどする男でないことは、分っている。
「そりゃね……。でも、私に何ができるの?」
「吉原さん、自分の力で、本当の犯人を捕まえると言ってるんです。手伝ってあげて下さい。恋人でしょ?」
「ええ……。まあ、そんなもんね。でも——」
「私、あなたをびっくりさせた女の子です」
 一恵は目を丸くして、
「じゃ、お風呂《ふろ》に入ってた——」
「でも、誓います! 決して、吉原さんと何かあったわけじゃないんです。ただ、たまたま、あそこへ落っこちただけなんです」
「何だかよく分らないけど……」
 一恵は、ため息をついて、「ともかくね、私だって困るわ。一緒に捕まっちゃったらどうするの?」
「それが恋人でしょ」
 一恵には、その一言が応《こた》えた。——それが恋人。
「信じてないんですか、吉原さんのこと」
「そりゃ信じてるけど……」
「だったら、助けてあげて下さい。愛してるんでしょ?」
 普通、人からこうもまともに、訊《き》かれることはないものだ。
 一恵は、ためらっていたが、
「——いいわ」
 と、肯《うなず》いて、「どうすればいいの?」
 と、訊いた。
「良かった! きっと助けてくれると思ってました」
 その言い方は、本当に嬉《うれ》しそうだった。一恵は、つい笑顔になっていた……。
「——それじゃ、ともかく何か着る物を用意して行けばいいのね。他には?」
「吉原さん、けがしてるんです」
「あ、そうだったわね」
 頼《たよ》りない恋人である。「じゃ、オキシフルでも?」
「あの——割とひどいけがなんです。包帯とか色々、必要だと思いますけど」
「そんなに?」
 一恵もさすがに青くなった。まだ未亡人になりたくない!——あ、結婚してなかったんだっけ。
「病院に行かなくても大丈夫なのかしら?」
「本人は平気だと言ってますけど……。でも具合によっては」
「そうね。分ったわ。ともかく、私が行って見てみるから」
 一恵だって、人のけがのことなんか、分りゃしないのだが。「で、どこで会いましょうか?」
「それもご相談しようと思ったんです。どこか、身を隠す所、思い当りませんか?」
「そう言われてもねえ……。私も不動産屋じゃないから」
「今は、倉庫にいるんです」
「倉庫? じゃ、寒いでしょう」
「ええ。あんまり居心地は良くありません」
「待って!」
 一恵は、少し考えて、「もしかしたら、何とかなるかもしれないわ。だめでもともと、当ってみるわ」
「お願いします! やっぱり恋してると、女の人って強いんですね」
 照れるようなことを、よく大真面目《おおまじめ》に言う子だわ、と一恵はおかしくなってしまった。
「吉原さんが、彼女はもとから強いんだ、って言ってましたけど」
「まあ、あの人、そんなことを?」
 一恵は笑って、「けがした所を思い切りつねってやろう」
「きっと喜びますよ」
「じゃ、これから出て、必要な物を買うわ。その倉庫って、どこなの?」
「あ、いえ——ここはだめです。警察の人が沢山《たくさん》いるから。ええと……何とか運び出しますから。どこか人目につかない所で待ち合せたいんですけど」
「人目につかない所、ねえ」
 簡単に言われても、すぐには——。「そうだわ」
「どこか、ありました?」
「吉原さんに訊《き》いて。あの[#「あの」に傍点]場所で待ってるからって」
「あの場所じゃ分りませんよ」
「分るわよ。あの——初めてキスした所、って言ってくれれば」
 言いながら、一恵の方も照れて赤くなった。
「そんな……そんなこと言えないわ! 恥ずかしい」
 どうやら、向うはもっと赤くなっているらしい。「何か……他に言い方ってないんですか?」
「そうねえ……。でも、それが一番分りやすいと思うのよ」
「分りました……。ともかく話してみます」
 と、情ない声を出す。
「ね、言いにくければ、紙に書いて渡したら?」
「それがいいですね! 一恵さんって頭がいいんですね」
「それほどでもないけど」
 と、一恵は咳払《せきばら》いした。「じゃ——そうね、今からだと……二時間もあれば」
「二時間ですね。分りました。何とか吉原さんを連れて行きます」
「ねえ……」
「何ですか? 何か伝えること、あります?」
「いえ、そうじゃなくて。——あなた、どうして、彼のこと、そんなにしてまで助けたいの?」
「それは……。成り行きです」
「でも、もし捕まったら、あなたも罪になるわよ」
「分ってます。でも、人間を幸せにするのが、天使の仕事ですから。じゃ、待ってますね!」
 電話は切れた。
 一恵は、ちょっとポカンとしていたが、やがて、受話器を戻《もど》して、
「天使の仕事? そう言ったのかしら?」
 面白い子だわ。もちろん、彼の部屋のお風呂《ふろ》にどうして入っていたのかは気になるけど……。
 まあ、吉原も男ではあるけれど、あんな若い子と二股《ふたまた》かけるなんてことのできるタイプじゃない。大体、そんなにもてないものね。
 けがしてる、か。——TVのニュースじゃ、警官に撃たれて、腕をけがしたらしい。
 撃たれる、って、痛いんだろうな。
 一恵は、電話のある廊下から、居間へと入って行って、
「キャッ!」
 と、声を上げた。
「母親を見て、どうして悲鳴を上げてるの?」
 一恵の母、林|久江《ひさえ》が、目の前に立っていたのだ。一瞬、一恵は、母が電話を聞いていたのかしら、と思った。
「いいえ……。だって、びっくりしたのよ。いきなり目の前に——」
「いちいち大声出して歩けませんよ」
 と、久江は言った。「誰から電話だったの?」
「友だちよ。ほら、春日《かすが》さんって、前、同じ会社にいた人」
 結婚して、目下ハネムーン中の同僚の名を出しておいた。
「そう。——一恵、座りなさい」
 久江は、それ以上電話のことは言わなかった。どうやら、立ち聞きしていたわけではないようだ。
 一恵は、
「何なの? ちょっと出かけるんだけど」
 と、言った。
「すぐ終るわ。ともかくかけて」
「はい」
 一恵は、肩をすくめて、ソファに座った。
「何かお説教?」
「簡単な用件よ」
 と、久江が、取り出したのは、大判の封筒……。
 一恵にも見憶《みおぼ》えのあるサイズだった。
「お母さん……。またお見合写真?」
「そうよ。あなた、いくつだと思ってるの? もう二十六よ。私はあなたの年齢《とし》にはもうあなたを生んでいたのよ。それでも遅いくらいだったわ」
「今は、みんな遅くなってるわよ」
「そんなことはありません。——あなた!」
 一恵はびっくりした。振り向くと、父親が居間へ入りかけて、ためらっているところだった。
「何してるの?」
 と、久江が、まるでいたずらを見付けた小学校の先生のような口調で言った。
「うん……。TVを見ようかと思ったんだが……。何だか大事な話らしいから、後にするよ」
 と、行きかける。
 そうか、と一恵は初めて、思い当った。今日は日曜日だったんだ。
「あなたも座って」
 と、久江が、一恵に言うのと全く同じ調子で言った。
「しかし……」
「娘の話なのよ。父親だって、責任のあることなんですからね」
「うん」
 林|邦和《くにかず》は、ソファの端の方に、ちょこんと腰をおろした。
 つい、自然と端の方に座ってしまうというのが、林邦和の、この家の中における位置を象徴《しようちよう》していた。
 林邦和は養子である。妻の久江の父親が、オーナーだった会社で、邦和は課長のポストにいた。
 もう林邦和も五十五歳だから、課長より上にいてもいいのだが、何といっても、林はおとなしい性格で、人と競ったりするタイプではない。
 一恵は、どうして母のような気の強い女性が、父を結婚相手に選んだのか、今になってもよく分らない。
 高校生のころだったろうか、友だちが家に遊びに来て、父と母を見ると、一目で、
「お父さん、養子でしょ」
 と、見抜いて言ったことがある。
 その夜、一恵は母の久江に、
「どうしてお父さんと結婚したの?」
 と訊《き》いた。
 久江は一言、
「誤解よ」
 と、だけ答えたのだった。
 未《いま》だに、一恵にはあの意味がよく分らずにいる……。
「——一恵の結婚相手のことよ」
 と、久江は言った。「いいお話だわ。これで進めようと思うの」
「お母さん! 待ってよ。私のことじゃないの」
「言う通りにすれば、間違いないのよ」
 と、久江は写真を見せた。「どう? 見た目も悪くないわ」
 一目見て、一恵は嫌悪《けんお》感を覚えた。——どう見ても、どこかの成金のぐうたら息子。
 ボサッとした顔には、およそ「鋭さ」のかけらもない。
「あなた、どう思う?」
 と、久江が夫の方へほこ先[#「ほこ先」に傍点]を向けた。
「うん……。まず、そりゃ一恵が決めることじゃないのか。一恵が結婚するんだからな」
 と、林はメガネを直して、言った。
「そんな甘いことで、どうするの!」
 久江の甲高い声は、居間のシャンデリアをブルブル震わせるほどだった。
「し、しかし……」
「本人に任せておいたら、どう? 人殺しの逃亡犯よ。一恵なんかに、男を見る目はないわ」
「お母さん——」
「何? あの男でしょ? 愛人を殺した男。ちゃんと分ってるの。これであなたにもよく分ったはずよ」
「何が?」
「自分で男を選ぶのは無理だってこと」
「ちょっと、そんな——」
「よく考えなさい。もしかしたら、殺されたのは、あなたかもしれなかったのよ」
 と、久江はかぶせるように言って、「殺されて、トランクにでも詰められて、それでも幸せだ、って言うつもり?」
 いけない、カッとなっちゃ。——一恵は自分に言い聞かせた。
 今は、早くこの場を切り上げて、吉原に必要な物を買って来なくてはいけないのだ。——母と言い合っていたら、何時になるか分らない。
「そりゃあ……あの人のことは見る目がなかった、と思ってるわ」
 と、一恵はふくれながら、「でも、会いもしないうちに、結婚しろ、って言われるんじゃいやよ」
「誰もそんなこと、言ってやしないでしょ」
 と、久江は苦笑した。「来週、一度、この方とお会いしなさい。——父親は会社を四つも持ってる実業家、母親は元華族の家柄《いえがら》よ」
 元華族!——何十年前の言葉かしら、と一恵は思った。今でもそんな言葉が通じると思っているんだから、お母さんは!
「分ったわ」
 と、一恵は肩をすくめて、「問題は当人だものね。ともかく、会ってみればいいんでしょ」
「そう。じゃ、いいのね? そう先方へご報告しておくから」
「ええ」
 一恵は、それほどいやでもないような顔をして、「この手の人って好みなの」
 とまで言ってのけた!
「じゃ、来週はあけておいてよ。分ったわね?」
 久江は立って、さっさと居間を出て行く。
「——ああ、参った」
 と一恵が呟《つぶや》くと、
「母さんは相変らずだな」
「え、ええ。——そうね」
 一恵はあわてて言った。つい、父がいるのを忘れてしまうのである。それほど存在感が薄いということでもあろうか。
 存在感と髪の毛が、何か関係があるのかどうか、一恵の知っている限り、父の頭は相当昔から薄かった……。
「しかし、びっくりしたなあ、あの事件には」
 と、林が言った。「一度、町でバッタリ出くわしたことがあっただろう」
「え?——ああ、吉原さんのこと? そうだったわね。まだ私が勤めてたころ」
 一恵は今は「家事手伝い」の身だが、一応はOL生活を二年ほど経験している。
 久江は、就職などさせずに、即結婚へと持って行きたかったらしいが、ちょうどそのころには、
「いい出物がなかった」
 ——とは久江自身の説明である。
 しかし、OL生活の中で、一恵は吉原と知り合い、恋に落ちた。いや、正確に言うと、吉原に惚《ほ》れられたのである。
 一恵は、男性から本気で惚れられるという快さを、初めて味わったのだった……。
「しかし、意外だな」
 と、林が言った。
「え?」
「いや、あの男さ。私に会った時はペコペコ頭を下げて、照れまくっていたじゃないか。少し頼りない感じはしたが、人は良さそうに思ったよ」
 林の言葉に、一恵は微笑《ほほえ》んだ。ホッとしたのだ。
「あの人じゃないわよ。いえ、きっと違うと思うわ」
 と、一恵は言った。
「しかし、新聞じゃ——」
「間違えることだってあるわ。そうじゃない?」
「うん……。そりゃそうだな」
「あの人、人殺しなんかできないわよ」
 一恵は立ち上って、「出かけて来るわ」
「遅くなるのか?」
「さあ。——もう私、二十六よ。子供じゃないんだから、心配しないで」
「ああ。——お前を信じとるよ」
 林が、優しく微笑んで肯《うなず》いた。
 一恵は、居間を出ると二階へ上り、急いで出かける仕度をした。
 買物はカードがあるから大丈夫だ。ともかく、急がないと。
 一恵は、五分で仕度を終えると、家を飛び出して行った。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%