日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

天使と悪魔09

时间: 2018-09-14    进入日语论坛
核心提示:8 証 人「だから、女なんて信じちゃいけないのさ」 と、ポチが言った。「でも」 マリは、考え込んでいる。「その女が密告し
(单词翻译:双击或拖选)
 8 証 人
 
 
「だから、女なんて信じちゃいけないのさ」
 と、ポチが言った。
「でも……」
 マリは、考え込んでいる。
「その女が密告したに決っているよ。でなきゃそんなにすぐ来るわけがないじゃないか、警察が」
「うん……。でも、あの女《ひと》の表情、本当にびっくりしていたわ」
「芝居《しばい》さ、芝居」
 と、ポチは体を長くのばして、「女は芝居がうまいからね」
「でも、その後で、泣きながら帰って行ったのよ」
「女の涙は、適当に出したり止めたりできるんだぜ」
「水道じゃあるまいし」
「そういうことなら、俺《おれ》の方が詳しい。裏切りは悪魔の専売特許だからな」
 マリは、ため息をついた。
「いい人だと思ったのになあ……」
 ポチの目が、キラッと輝いた。——何かを期待している、という目である。
 しかし、マリは、ウーンと伸びをすると、
「ま、いいや! くよくよしてたって始まらない! これからどうするか、考えましょ」
 と、明るい声で言った。
 ポチが、がっかりしたように鼻を鳴らした。
 ——二人は、いや、三宅良子を加えて三人[#「三人」に傍点]は、また吉原のマンションの地下室に戻《もど》っていた。
 もう夕方で、冷えて来るかと思ったのだが、実際には暖房のパイプが天井を這《は》っていて、そこから出る熱で、結構、あったかいのだった。
 良子は、段ボールの箱にもたれて、スヤスヤと眠っていた。
「——どうするったって」
 と、ポチが欠伸《あくび》をして、「どうにもなんないだろ、もう捕まっちまったんだぜ」
「分ってるわ。でも、何も解決していないのよ、この子の母親のことだって」
「どうしようってんだい? まさかあの刑事を脱獄させるわけにもいかないし」
「暴力はいけないわ。——私たち、頭と心で事件を解決すればいいのよ」
「甘いこと言ってら」
 マリはムッとして、
「あんたに手伝ってくれなんて言わないでしょ」
 と、言い返した。「大体、何でいつまでも私にくっついてるの? どこかに行けば?」
「俺《おれ》の勝手だろ。ここは天国じゃないんだからな」
「だったら、おとなしく言うことをききなさいよ。この世界じゃ、犬は人間の言うことをきくものなんだからね」
 フン、とポチは不服そうに鼻を鳴らした。
「どうしようってんだよ」
「ともかく、事件について、整理してみるのよ」
「勝手にやってくれ。俺は寝てるよ」
 と、ポチが目をつぶる。
「ちょっと、あんた」
「何だよ、腹をけとばすなよ」
「殴っただけよ」
「悪魔を虐待《ぎやくたい》したって、訴えてやるぞ」
「あのね、小説読んだって、名探偵にはいつもくっついて話を聞く馬鹿がいるのよ」
「知るか」
「どうせあんたはマンガしか読んでないんでしょ」
「お前だって少女漫画ばっかり立ち読みしてるくせに」
 呑気《のんき》にやり合っていると、良子が、
「うるさいなあ」
 と、呟《つぶや》いて、寝返りを打った。
「——そうよ。静かにしましょ。あんたの声は犬が吠《ほ》えているとしか聞こえないんだから」
「そっちだろ、うるさいのは」
「何よ!」
 と、言いかけて、マリは、エヘンと咳払《せきばら》いした。「低い声で。——私、あの吉原さんから、詳しい話を聞いたのよ。だから、推理の材料はあるわけだわ」
「何も分るもんか」
「あら。自分の部屋から一歩も出ないで、推理だけで事件を解決する人を、『安楽椅子探偵《あんらくいすたんてい》』っていうのよ」
「そんなもん、どこにあるんだよ」
「——そうね」
 と、マリも見回して、安楽椅子がここに見当らないことには同意せざるを得なかった。
「じゃ、いいわ。段ボール探偵」
「パッとしねえな」
「いいのよ!」
 マリも、文字通り、段ボールの上に寝転がった。「二人の人が殺されたわ。男と女。まず、その二つの事件が、どんな風に係り合っているのか。共通点は?」
「人口が二人減ったよ」
「まぜっ返さないで。——三宅吉司は、奥さんに殺されたと思われてる」
「本当にやったのかもしれないぜ」
「まさか。だったらどうして彼女が何者かにさらわれたりするの?」
「そりゃそうだけどな」
 と、ポチは渋々認めた。
「その現場へ吉原さんは出向いた。刑事としてね。三宅のことは全く知らなかったわけだから」
「嘘《うそ》をついてるのかも」
「人を信じないのね。——いいわ、私、信じてる。目がきれいだわ、あの人」
「甘い甘い」
「何とでも言いなさいよ。その現場を最初に見付けたのが、小川育江という女。本当の名前かどうか分らないけど」
「その女が——」
「待って。その女を、得体《えたい》の知れない男が、父親だと言って連れ去った」
「そしてその女の死体が、刑事の部屋で見付かった」
「そう。——でも、なぜ吉原さんの寝室で? 分らないわ」
「要するに分らないんじゃないか」
「だけど、何が分らないかを考えるのが、第一でしょ」
 と、マリは強引な言い方で、「それに、おかしな点は他にもあるわ。三宅の部屋の電話に盗聴装置《とうちようそうち》が仕掛けてあったこと。あんな貧しい家に、盗聴装置なんて、どう考えてもおかしいわ」
「三宅ってのが、意外に大物なのかもしれないぜ」
「そうは見えなかったけどね。あの部屋を見る限り」
「見かけだけで判断しちゃいけないよ」
 マリは、ふっと笑って、
「あんたもたまにはいいこと言うじゃない」
 と、言ってやった。「——待ってよ」
「何だよ」
「隣の[#「隣の」に傍点]部屋よ!」
「隣がどうした?」
「吉原さんが言ってたわ。小川育江って名乗った女は、警官が行くまで、隣の部屋にいたのよ」
「だから?」
「隣の人は、彼女が小川育江と名乗るのを聞いてるはずだわ。つまり、彼女が吉原さんの恋人なんかじゃないことも分るんだわ」
「何だ。それなら早いとこそう言やいいのに」
「吉原さんも、警官を殴ったり、撃たれたりして、そこまで頭が回らなかったのよ」
「人間ってのも、抜けてるもんだ」
「そうよ。抜けてるから人間よ。だから、人間ってのはあったかいんだからね」
「へえ」
 ポチは顔を上げた。「お前、あの刑事が好きなのか」
「馬鹿言わないでよ!」
 マリは真赤になった。
「天使は嘘《うそ》つくのが下手《へた》だな」
 と、ポチは笑った。
 犬が笑うというのも、何となく無気味である。
「でも、警察で事情を話せば、必ず思い出すわ! 行って来る」
「警察へ?」
「違うわよ。あのアパート。隣の家に、必ず刑事が話を聞きに来るわ」
「ふーん。この娘《こ》はどうするんだ?」
「あんたが見てれば?」
「いやだよ。そんな退屈な仕事。——俺《おれ》も行くよ」
 と、ポチはウーンと伸びをした。
 もちろん、前肢《まえあし》を上げて伸びをしたわけではなく、至って、「犬らしい」伸びの仕方だったのである。
「どうして私について歩くの?」
「悪いか?」
「そういうわけじゃないけど……。ま、いいわ。この子もここで寝てれば大丈夫だろうしね」
「よし。じゃ出かけよう」
 と、ポチが言った。
 ——正直なところ(というのも、悪魔としてはおかしいかもしれないが)、ポチはヒヤリとしたのである。
 どうしてついて歩くのか、って? ま、深く考えるなよ、可愛《かわい》い天使さん。
 天使ってのは大体がお人好で、すぐ他人を信用する。そうでなきゃ、イメージ上も困るわけだが。
 しかしな、人間って奴《やつ》は、そう単純じゃないぜ。尽くしてやっても裏切られる。愛しても苦しめられる。俺にゃ、ちゃんと分ってるんだ。
 地獄で、あんまり怠けていたので、こうして追ん出されて来てしまったが、俺が地獄へ戻《もど》るには、天使を一人、地獄へ道連れにして帰らなきゃならないんだ。
 ちょうどうまい具合に「地上研修」に来る、この天使と一緒になって、しめた、と思ったのだ。
 こいつがもし、人間に失望して、
「人間なんて、信じられない!」
 と、叫んだら、それは天使の役目を放棄したことになって、俺はこいつを地獄へ連れて行ける。
 そのためにゃ、ピッタリはりついてるしかない。
 こうして、殺人事件なんてのに出くわしたのはラッキーだった。一番、人間の醜《みにく》い面を覗《のぞ》けるに違いないからだ。
 箱入り娘(?)の天使にとっちゃ、ショックだろう。つい、人間が信じられなくなる可能性だって、高いってもんさ。
 ——いいとも。名探偵のお供だ。どこまでだって、ついて行ってやる。
 その代り……一旦《いつたん》地獄へ落ちたら、永久に、俺《おれ》がお前の主人だぞ。
「何してんの。行くわよ」
「待ってくれ。今、行くよ」
 と、ポチはマリの後からついて、トコトコと歩き出した……。
 
「——失礼」
 と、村田が声をかける。「警察の者ですがね。ちょっとお話を」
 ドアチェーンをかけたまま、細く開けて覗いていた宮田|昭次《あきつぐ》は、村田の後ろに立っている制服の警官と、吉原の顔を見て、
「ちょっと待って下さい」
 と、肯《うなず》いた。
 ドアが開くと、村田は、吉原を促して、宮田の部屋へ入った。
「どうも……」
 と、吉原は言った。「僕のこと、憶《おぼ》えてますか」
「ええ! もちろん」
 と、塾の教師、宮田は即座に答えた。「三宅さんが殺された事件でここへ来た刑事さんでしょ」
「そうです」
 吉原はホッとした。「あなたの証言がぜひいただきたくてね」
「知ってることは、あの時、全部、しゃべりましたがね」
「いや——」
「ちょっと待て」
 と、村田が吉原を制して、「俺《おれ》が訊《き》く。お前は黙ってろ」
「はあ……」
 吉原は、不服そうだったが、おとなしく引っ込んだ。いくら不服でも、手錠こそかけられていないが、警官に両脇《りようわき》をがっちり固められているのだ。
 これじゃ、逆らうわけにもいかない。
「三宅さんの奥さんは見付かったんですか?」
 と、宮田は訊いた。
「いや。まだです」
 と、村田が答える。
「そうですか。しかし、あの奥さんはいい人でしたからね。大した罪にならないといいけどな」
「実は、今夜うかがったのは——」
 と、村田が言った。「三宅さんが殺されたのを発見した女性がいましたね」
「ええ。私がここに置いていた人ですね」
「そうです。小川育江と名乗っていたわけですが……。どうもそれは怪しいらしい、ということになったのです」
「怪しい?」
「その女性を、よく憶《おぼ》えていますか?」
「よく、と言われてもねえ」
 と、宮田は、眉を寄せた。「そりゃ、写真でも見りゃ思い出せますよ、きっと。しかし、どんな顔か説明してみろ、と言われたら、きっと——」
「いや、そんなことは言いませんよ」
 村田は、写真を一枚取り出して、宮田の前に置いた。「これを見て、その女性だと分りますか」
 その写真を手に取った宮田は、まじまじと眺めていたが、
「さて……。もう少し若かったんじゃないかな。こんな不細工なおばさんじゃなかったようですがね」
「あ、失礼」
 と、村田はその写真を取り戻《もど》して、「これは私の家内の写真でした」
 宮田は、さすがに、少し焦《あせ》ったのか、
「いや——しかし、よく見ると、なかなか愛嬌《あいきよう》のある顔ですよ。それに面白くて、見飽きないし」
 これじゃ、ますます悪い。
「見ていただきたいのは、こっちの写真でした」
 と、村田が差し出した写真を見て、宮田は目を丸くした。
「この女性——死んでるんですか?」
「そうなんです。で、この死体が間違いなくあなたの見た女性だったかどうか、確認していただこうと思いましてね」
「そうですか」
 宮田は、まじまじとその写真を見ていた。吉原は、村田の方を、どうです、というように見ていた。——村田はポーカーフェイスのままだ。
 宮田は、写真を村田の方へ差し出しながら、
「違いますよ、この女性は」
 と、言った。
 吉原が、愕然《がくぜん》とした。
「そんな——そんなことはない! よく見て下さいよ」
「確かですか」
 と、村田が言った。
「ええ。顔の輪郭《りんかく》、それに眉《まゆ》の形も全然違いますね。そう、髪もこんな風にはしていなかったと思うな。はっきりは憶《おぼ》えていませんが」
「そんな馬鹿な!」
「おい吉原、諦《あきら》めろ。お前の話とは大分違うじゃないか」
「どうかしたんですか?」
 と、宮田が不思議そうに言った。
「いや、何でもありません」
 と、村田は首を振って、「こちらで、ちょっとした意見の食い違いがあっただけなんです。——失礼しました」
「いやいや」
 と、宮田は至って愛想良く、「こんなことぐらい、当然の市民の義務ですからね」
「もう一度、よく考えてみて下さい!」
 と、吉原が食い下る。「父親だと名乗った男が迎えに来て、連れて行った、あの女ですよ!」
「ええ、そのことは憶えてますよ。でも、この女《ひと》じゃなかった」
 吉原はがっくり来た様子で、ふらっとよろけた。
「おい! しっかりしろ」
 と、村田が叱《しか》りつけた。「それでも捜査一課の刑事か」
 村田は、もう一度、宮田に、
「どうもお騒がせしましたな」
 と言った。
「いや。——しかし、お隣の荷物は、どなたか引き取って行かれたんですか? ずいぶん手早い仕事でしたよ」
 宮田の言葉に、村田は眉《まゆ》を寄せて、
「引き取った、ですって?」
「ええ。今日の昼間、ドタバタしてましたからね。男が四、五人来て」
 村田は、警官の一人に、
「おい、中を覗《のぞ》いてみろ!」
 と、命じた。
「はっ!」
 警官は、三宅の部屋へと急いで入って行った。
 そして、すぐに出て来ると、
「何もありません」
 と、言った。
「何も?」
 村田が飛び込んで行く。吉原も、警官に腕を取られながらだが、ついて行った。
「——何だ、こりゃ?」
 村田が呆《あき》れたような声を出した。
 部屋の中には、何も[#「何も」に傍点]なかった。家具やガスコンロなどはもちろん、押入れも、扉がなくなっている。そして何より——畳がなくなってしまったのだ!
 床板がもろにむき出しになってしまっている。
「こりゃ凄《すご》いや」
 と、吉原も、一瞬|呆然《ぼうぜん》としていた。
「いくら引越しでも、ここまではやらんぞ。どうなってるんだ?」
「だから言ったじゃないですか」
 と、吉原がかみつく。「三宅殺しには裏があるんです。女房のやったことじゃありませんよ」
「それはこっちで調べる」
 と、村田は素気なく言った。「お前は、ともかく自分の部屋で死んだ女のことを説明するんだな」
「二つの事件は関係があるんです。分らないんですか」
「俺《おれ》に分ってるのはな、死体が二つあって、犯人を挙げなきゃならんってことだけだ。——行くぞ」
「この部屋は?」
「誰が一切|合財《がつさい》、持って行ったのか、当らせる。ともかくお前には関係ないことだ。パトカーへ戻《もど》るぞ」
 吉原は、諦《あきら》めたように肩をすくめた。
 警官に腕を取られて、
「痛い! 気を付けろよ。そっちはけがしてる方だ」
 と、文句をつける。
「あ、失礼」
 と、警官があわてて、吉原の腕を持ちかえる。
 その瞬間、吉原はドン、と警官に体当りを食らわした。
「ワッ!」
 警官が弾みで引っくり返る。吉原は一気に駆け出した。
「待て!」
 と、村田が怒鳴《どな》る。「追いかけろ!」
 パトカーのそばに待っていた警官が、吉原の行く手を遮《さえぎ》るように立って、拳銃《けんじゆう》を抜いた。
「止れ!」
 その時、黒い塊がパッと宙へ飛んで、警官の頬《ほお》に飛びかかった。
「いてっ!」
 警官が泡食って、よろける。同時に銃が火を吹いていた。
「こっちよ!」
 マリの声がした。吉原はその暗がりの方へと駆けた。
「これ、乗れる?」
 マリが、オートバイを指さした。
「乗れるとも。キーが差してあるな」
「この近くで拝借したの。急いで!」
「後ろに乗れ!」
 吉原がまたがってエンジンをかけると、マリはあわてて、後ろに飛び乗った。
「ポチ! 行くわよ!」
 タタッと足音がして、黒い犬が、マリの背中に取りつく。
「重いわねえ!」
「我慢《がまん》しろい」
 と、ポチは吠《ほ》えた。
 オートバイが走り出した。
「待て! 吉原!」
 村田の声が、たちまち遠去かる。
「——よし! この分なら大丈夫だ」
 吉原は、細い道を選んで、オートバイを走らせた。
「けがの方は?」
「ああ、大丈夫だ」
 と、吉原は肯《うなず》いて見せた。
「——どこへ行く?」
「そうだな……。ともかく、人のいない所でないと」
 吉原は首を振って、「ぜいたくは言ってられない。——よし、あそこにしよう」
「どこ?」
「高級ホテル、とはいかないがね」
 と、吉原は言った。「何だか少し軽くなったみたいだ」
「ええ」
 と、マリが言った。「ポチが落っこちたわ」
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%