日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

天使よ盗むなかれ07

时间: 2018-09-28    进入日语论坛
核心提示:7 古い敵「今度はずいぶん短命でしたね」 と、市川が車を運転しながら、言った。「あんなにだらしのない男だとは思わなかった
(单词翻译:双击或拖选)
 7 古い敵
 
 
「今度はずいぶん短命でしたね」
 と、市川が車を運転しながら、言った。
「あんなにだらしのない男だとは思わなかったわ」
 加津子は後ろの席でご機嫌《きげん》が悪い。「ニューヨークに着くなり、モデルの子に言い寄ったりして!」
「ま、今の若いのは、あんなもんじゃないですか」
 と、市川は肩《かた》をすくめて、「帰りの旅費なんかやることなかったんですよ」
「お金が惜《お》しいわけじゃないのよ」
 と、加津子は言った。「ただ、自分に腹が立つの。あんな男のことが見抜《みぬ》けなかったのかと思って」
 車は、屋敷の近くまで来ていた。
「ま、もう少し近い年齢《ねんれい》の男を捜《さが》した方が無難かもしれませんね」
「もう年齢《とし》なのね」
 と、加津子は、ため息をついて「考えなきゃ。——色々とね」
「もう屋敷です。まだ朝早いから」
「和代《かずよ》さんは来てないでしょ。あの人は八時からだから」
「あのいつかの娘《むすめ》はまだいるんですか」
 と、市川が訊《き》いた。
「マリちゃん? いるわよ」
「マリちゃんか。お人形ですね、まるで」
「でも、真面目《まじめ》な子よ。本当によく働くって、和代さんが言ってたくらい」
「あの人がそう言うんですか。そりゃ大したもんだ」
「犬も一緒《いつしよ》」
「——ご用心なさった方がいいですよ」
「何を?」
「あの娘です」
「まだ言ってるの?」
 と、加津子は笑った。「ずいぶん疑り深い人ね」
「よく働くっていうからです。残念なことですが、当節、人並《ひとな》み以上によく働く人間には、下心があると思った方がいいんですよ」
「なるほどね」
 加津子は、半ば呆《あき》れ、半ば感心して、肯いた。「よく憶《おぼ》えとくわ」
「あの娘、記憶《きおく》の方は?」
「一向に。——こっちも、別に訊《き》いてもみないし」
「そうですか。やっぱり——おや」
 と、市川が言った。「門が開いてます」
「こんな時間に?」
 加津子もびっくりした。
 時間に係《かか》わりなく、門は、開けてもすぐに閉めているはずだ。開け放してあれば、防犯装置が働く。
「おかしいですね。警察を呼びましょう」
「でも——あの娘《こ》が中にいるのよ」
「もし、誰《だれ》かが押し入ったのなら、もう手遅《ておく》れですよ」
 車のブレーキを踏《ふ》んで、市川は、自動車電話で警察へ連絡した。
「——五分以内に来るでしょう」
 車は門の二、三十メートル手前で、停《とま》っていた。
 加津子が、ドアを開けて、外へ出た。
「社長!」
「あの娘《こ》が心配だわ」
 加津子は、門へ向って、駆《か》け出して行く。
「待って下さい!」
 市川は、あわてて加津子を追って駆けて行った。
「——玄関《げんかん》も開いてるわ。防犯装置が役に立たなかったのね」
「しかし……。何を狙《ねら》ったんですかね」
「分らないわ。——マリちゃん!」
 中へ入って、加津子は大声で呼んだ。「マリちゃん!」
 返事はなかった。
「取りあえず、寝室《しんしつ》を見てみましょう」
 と、加津子は言った。「金目のものといえば、あそこの毛皮ぐらいよ」
 二人は階段を上って行った。
「——例の日でなくて幸いでしたね」
 と、市川は言った。
 加津子は何も言わずに、自分の寝室のドアをサッと開けた。
「社長! 気を付けて——」
 加津子は、寝室の中を見渡した。
 部屋着やドレスが散乱している。
「毛皮を持って行ったようね」
「大した被害じゃありませんな。まあ良かった」
 加津子が、ピタリと足を止めた。
「——社長、どうしました?」
「マリちゃん」
 ベッドの向う側に、白い足が覗《のぞ》いている。
 加津子は駆け寄った。——市川も覗いて、
「おやおや」
 と、首を振《ふ》った。
 マリが、気を失って倒《たお》れている。
「死んでるんですか?」
「生きてるわよ! すぐ救急車の手配」
「分りました。しかし——分りませんね、僕《ぼく》にゃ、犯人の気持が」
「早くして!」
 市川が、電話へと駆け寄る。
「——可哀《かわい》そうに」
 と加津子は呟《つぶや》いた。
 マリは、殴られたらしく、左の顎《あご》の辺りがあざになっていた。そして、パジャマが引き裂《さ》かれて、むき出しになった白い腿《もも》には、引っかいたような傷がある。
 加津子がマリを抱《だ》き起こすと、マリは目を開けた。
「もう大丈夫《だいじようぶ》よ。心配しないで」
 と、加津子は急いで言った。「今、救急車が来るからね」
「私……。泥棒《どろぼう》——泥棒《どろぼう》が!」
 と、マリが大声を出す。
「もう逃げたわ。心配ないのよ。ね、落ちついて」
 加津子がしっかり抱いてやると、マリは体を震《ふる》わせて、息を吐《は》いた。
「もう警察が来るでしょうから、外へ出ていますよ」
 と、市川は言って出て行った。
「——悪かったわね。あなたを一人でここに置いといたのが、間違《まちが》いだったわ」
「いえ……。私こそ、役に立たなくて」
 と、マリは、うつむいた。
「泥棒が入ったら、何もできやしないわよ。ともかく無事で良かった」
 無事[#「無事」に傍点]ではないかもしれないのだが……。加津子は、あえて「無事」と言ったのである。
「一人でした。泥棒は——」
「そう。後でいいわ。ゆっくり聞くから」
「手袋《てぶくろ》が——」
「手袋?」
「ベッドの上にありませんか」
 加津子は、大きなベッドの上へ目をやった。——白い、布の手袋の片方が、置かれている。
「あるわ。私のじゃないわね」
「置いて行ったんです」
「泥棒が?」
「はい……。ちゃんと警察に言えって。——〈夜の紳士《しんし》〉だ、と」
 
「〈夜の紳士〉? 何です、それ?」
 と、畑健吾は電話の相手に訊《き》き返した。「——はあ。そうですか——分りました。じゃ、謹慎《きんしん》はもう——」
 向うでガミガミ言っているのが聞こえて来て、健吾は受話器を離した。
「——分りました。急行します」
 電話を切って、健吾は、大|欠伸《あくび》をした。
 謹慎になってからは、あんまり朝早く起きる必要もないので、つい夜ふかしになっているのである。
 何のための謹慎かと、我ながら首をかしげたりしていた。
 コーヒーでも飲まなきゃ、目が覚めないよ、全く。
 台所へ入って、お湯をわかしていると、
「おい、電話か?」
 ヌッと父親が出て来て健吾はびっくりした。
「お父さん! さっき帰って来たばっかりじゃないの?」
「二時間も寝《ね》た。もうすっきりだ」
 畑健一郎はそう言って、ブルブルッと頭を振《ふ》った。
 かなわねえな、全く、と健吾はため息をついた。
「今のは僕《ぼく》にだよ。強盗《ごうとう》事件」
「そうか、じゃ、謹慎はとけたのか」
「うん。忙《いそが》しくて人手がないからって」
「よし。——今度こそ、犯人を挙《あ》げろよ」
 父親にバン、と肩《かた》を叩《たた》かれて、健吾は顔をしかめた。
「——大仕事か」
「狙《ねら》われたのは大きな屋敷《やしき》らしいよ」
 と、健吾は言った。「犯人がね、メイドに名乗って出て行ったんだって」
「フン、キザな奴《やつ》だな」
「〈夜の紳士〉だってさ。白い手袋を片方、ベッドに残して、と来るからね。きっと映画の見過ぎ——」
「おい!」
 健一郎が、もの凄《すご》い声を出して、健吾は腰《こし》が抜《ぬ》けそうになってしまった。
「お父さん! 気を確かに!」
「誰《だれ》がだ」
 と、健一郎は顔をしかめた。「お前の方がよっぽど気を確かに持たんと、犯人は挙げられんぞ」
「お父さん、知ってるの、〈夜の紳士〉って泥棒《どろぼう》を?」
「知ってるどころか……」
 畑健一郎は、そう言ってから、ゆっくりと深く呼吸した。「やっぱり生きていたんだな。あいつ……」
「生きていた、って?」
「姿を消したんだ、ある日突然な。それから——もう二十年近くになるだろう」
「へえ」
「おい、湯が沸《わ》いてるぞ。コーヒーを俺《おれ》にもいれてくれ」
「うん……」
 健吾と健一郎、二人してコーヒーを飲むというのは、珍《めずら》しいことだった。
「——こんな風に話すのは、久しぶりだな」
 と、健一郎は言った。
「そうだね」
「しかし、妙《みよう》な縁《えん》だ。あいつを二十年前に追いかけていた俺の息子が、またあいつを追うことになる」
 健一郎の言い方は、懐《なつか》しげですらあった……。
「有名な泥棒だったの?」
「一時は結構|騒《さわ》がれたもんだ。しかし、〈夜の紳士《しんし》〉って名は、いつも名乗っていた。白い手袋《てぶくろ》の片方を置いて行くのも同じだ。あのころは、まだ大|邸宅《ていたく》に現金を置く人間も多かったしな」
「今はほとんどいないよ」
「そうだ。おそらく、奴《やつ》が足を洗ったのも、その辺を見きわめたからだろう、と俺《おれ》は思っていた」
「頭のいい奴だね」
「そうだな」
 健一郎はニヤリと笑って、「やり過ぎる、ということがなかった。その点はみごとなもんだ。潮時《しおどき》を心得てたってことではな」
「じゃ、人を殺したりとか——」
「それはない。あいつは殺したり傷つけたりはしない男だ」
「でも、今度は若いメイドを襲《おそ》った、って——」
「何だと?」
 健一郎は眉《まゆ》を寄せた。「けがさせたというのか?」
「いや……。若い子らしいよ。十六、七の。でも乱暴されたらしいって……」
「それは妙《みよう》だ」
 健一郎は考え込《こ》んだ。
「——二十年もたってるから、人間も変ったんじゃないの?」
「それも考えられるが……」
「それでなきゃ、別の犯人かもね。その格好だけ真似《まね》して」
 健一郎は、立ち上った。
「俺《おれ》も行く」
「父さんが? だけど——今、かかってる事件があるんじゃないの?」
「いや、あれはもう目処《めど》がついた。俺がいなくても、どうってことはない。おい、すぐに出るんだろう」
「うん」
「のんびりしてる奴があるか!」
「分った」
 健吾は、あわててコーヒーを飲み干そうとして、むせ返った。
 ——どうしてこうも違《ちが》うのか?
 ネクタイをしめながら、健吾が階段を下りて来ると、もう父親は玄関《げんかん》で待っている。
「お前、モデルでもやってるのか?」
 と、いやみを言われる。
「これでも精一杯《せいいつぱい》——」
 と、言いかけると、電話が鳴った。「僕が出る」
 出てみると、結城江美からだった。
「やあ。実はね、今、事件で出かけるところなんだ」
「あら。それじゃ仕事に戻《もど》ったの?」
「うん、そういうことさ」
「良かったわね」
「これで、また何かへま[#「へま」に傍点]やりゃ、同じことだけどな」
「しっかりしてよ。——ね、いつかのおじさんだけど」
「ああ、池上さん、だっけ?」
「行方《ゆくえ》が分らないの。何だか心配だわ」
「でも、連絡は——」
「ええ、あったわ。だけど……。ともかく、また今度ゆっくりね」
「うん。——それじゃ」
 玄関へ戻ると、健一郎が、
「例の娘《むすめ》か」
 と、言った。
「うん。あの——」
「まあいい」
 健一郎は、ちょっと笑って、「一度|紹介《しようかい》しろ」
 と、言った。
「お父さん……。本気?」
 健吾がポカンとしていると、
「事件だ、事件! お前がボーッとしていると、俺がその娘をかっさらうぞ」
 と、健一郎がドン、と息子の背中を叩《たた》いた。
 健吾は、一瞬《いつしゆん》、息が詰《つま》って、目を白黒させたのだった……。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%