日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

忘れられた花嫁13

时间: 2018-09-28    进入日语论坛
核心提示:13 塀《へい》の外 「何だい、えらくふくれてるな」 と、尾形が言った。 「当り前でしょ」 と、明子はぐいとやけ酒をいや、
(单词翻译:双击或拖选)
 13 塀《へい》の外
 
 「何だい、えらくふくれてるな」
 と、尾形が言った。
 「当り前でしょ」
 と、明子はぐいとやけ酒を——いや、やけコーヒー(?)をすすった。
 いくらやけでも、アルコールに溺《おぼ》れるには早過《す》ぎる、お昼休み。大学の学生食堂である。
 「どうしてそんなにカッカしてるんだい?」
 「昨日《きのう》、屈《くつ》辱《じよく》的《てき》な出来事があったのよ」
 「へえ」
 明子は尾形をキッとにらんで、
 「恋《こい》人《びと》がひどい目に遭《あ》ったっていうのに、『へえ』で終りなの?」
 「だって、どんなことだか聞いてないよ」
 尾形は大体が、おっとりのんびり型である。
 「——頼《たよ》りない恋人ね。私が目の前で乱《らん》暴《ぼう》されてても、後の予定が詰《つま》ってないか考えてから、助けるかどうか決めるんでしょ」
 「そんなことないよ」
 と、尾形は言った。「助けを呼《よ》びに行くよ、すぐにね」
 「その間に私は哀《あわ》れ——」
 「そんなことより、本当に起ったことの方を話してくれよ」
 「あ、そうか」
 明子は、佐田千春が中松という大金持の一人娘《むすめ》と分ったこと、夫の佐田房夫を迎《むか》えに行って、中松の屋《や》敷《しき》へ戻《もど》ったことを、話した。
 「へえ! 分らないもんだね、人間は」
 と、尾形は首を振《ふ》った。
 「私もそう思ったわ」
 と、明子は言った。「千春さんなんか、見かけは本当に地味で堅《けん》実《じつ》な主《しゆ》婦《ふ》なのに。——こっちがそのつもりで見ると、そう見えるものなのよね」
 「それが人間の心理ってものだろうね」
 と、尾形は肯《うなず》いた。「それからどうしたの?」
 明子は肩《かた》をすくめた。
 「それだけ」
 「それだけ?」
 と、尾形は不思議そうに、「中松って屋敷に戻ってからはどうしたの?」
 「入れてもらえなかったの」
 「へえ」
 「もちろん、素《そ》知《し》らぬ顔して、入って行ったわよ。でも、例の、千春さんを迎《むか》えに来た男と、もう一人、運転手が私に襲《おそ》いかかって——」
 「な、何だって?」
 現《げん》実《じつ》の話となると、尾形の顔色も変る。「そ、それで大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》だったの? どこかへ連れ込《こ》まれたとか——」
 「連れ込まれりゃ良かったのよ」
 と、明子は穏《おだ》やかでないことを言い出した。「実《じつ》際《さい》は、そのまま門から表へ放り出されたの」
 「何だ。そうだったのか」
 と、尾形は胸《むね》をなでおろした。「しかし、君を放り出すとは、相当な連中だね」
 「油《ゆ》断《だん》しているところを、後ろからひねられちゃったのよ。あの運転手、柔《じゆう》道《どう》ができるんだわ、きっと」
 明子は、いまいましそうに言った。「まともにやれば、負けないのに!」
 「変なことにファイトを燃《も》やすなよ」
 と、尾形は苦《く》笑《しよう》した。「で、その後、佐田夫《ふう》婦《ふ》がどうなったのか、分らないんだね?」
 「そうなの」
 と、明子は肯《うなず》いた。「しばらく、諦《あきら》め切れなくて、塀《へい》の外をウロウロしてたんだけどね」
 「結局は——」
 「何も分らなかったの」
 明子は、ランチのホットドッグにかみついて、口中に頬《ほお》ばりながら、
 「そういえわ……ムニャ……なぬかへんの人——」
 「ちゃんと食べてからしゃべれよ」
 明子はコーヒーで、ホットドッグを流し込《こ》むと、
 「そう言えば、何か変な人に会ったのよ」
 「どこで?」
 「その塀《へい》の外を歩いてたときよ」
 「どう変なんだい?」
 
 「むだだよ」
 といきなり声がして、明子は飛び上りそうになった。
 振《ふ》り向くと、三十歳《さい》ぐらいか、ジャンパー姿《すがた》の青年が立っている。
 「何ですか?」
 と明子は訊《き》いた。
 「むだだと言ったんだよ」
 「何が?」
 「この塀は越《こ》えられない。中には、猛《もう》犬《けん》が放してあるんだ、夜になるとね」
 明子は、耳を澄《す》ました。
 なるほど、時々、庭のどこかで、犬の低い唸《うな》り声や鳴き声が聞こえている。
 「あの……」
 明子はその青年を見て、「あなたはどなた?」
 と訊《き》いた。
 「僕《ぼく》はこの家の主《あるじ》なんだ」
 青年は言った。
 「え?」
 と、明子が思わず訊き返す。
 「あるじ。主人」
 「分りますよ、それくらい」
 と、明子はムッとして言った。「でも、それ、どういう意味ですか?」
 「文字通りの意味だよ」
 と、青年は肩《かた》をすくめて、「この家や土地、総《すべ》ては、本来、僕のものなんだ」
 「はあ」
 「だから、主だって言ったんだ」
 なるほど、と明子は思った。——こりゃ、少々おかしいのに違《ちが》いない。
 「でも、私、別にここへ忍《しの》び込《こ》むつもりじゃないんですけど」
 と明子は言った。
 「ああ、そう」
 青年は大して気のない様子で、「じゃ、何してるの、こんな所で?」
 そう訊《き》かれると困《こま》ってしまう。
 「ええと……知ってる人が中にいるんですけど、それがどうなったか心配で」
 と言った。
 当らずさわらずの表《ひよう》現《げん》である。
 「でも、塀《へい》の外を歩いてたって、中のことが分るわけじゃないだろう」
 「それはまあ、そうだと思いますけど」
 「じゃ、諦《あきら》めた方がいいよ。足が疲《つか》れるだけ損《そん》だ」
 「そうですね」
 「お茶でも飲まない?」
 いきなり話が変って、明子は調子が狂《くる》ってしまった。
 「いえ、——別に——あの」
 と、口ごもっている間に、相手の男は、
 「じゃ、行こう。すぐそこに、いい味のコーヒー店があるよ」
 明子は、わけの分らない内に、十分ほど歩いたコーヒーショップに入ることとなった。
 ——なるほど、店の構《かま》えはみすぼらしいが、コーヒーは旨《うま》かった。
 これで、多少この青年を見直す気にもなった……。
 「あなたは?」
 と明子が訊《き》くと、青年は首を振《ふ》って、
 「そういうときは自分から名乗ってくれなくちゃ」
 と、うるさい。
 「私は永戸明子」
 「僕《ぼく》は中松進《しん》吾《ご》」
 「中松……」
 確かに、あの大《だい》邸《てい》宅《たく》と同じ名だが。「で、あなたは何をしてたんですか?」
 「見回りさ」
 「見回り?」
 と、明子は目をパチクリさせて、「ガードマンでもやってるんですか」
 中松進吾と名乗ったその青年は、いたくプライドを傷《きず》つけられた様子で、
 「自分の土地を視《し》察《さつ》してるんだ」
 と言って、胸《むね》をそらした。
 「あ、どうも失礼」
 と明子は舌《した》をペロリと出した。
 中松が笑《わら》い出して、
 「いや、面白い人だな」
 と言った。「永戸明子さんだったかな」
 「一度で憶《おぼ》える人って珍《めずら》しいんですよ」
 明子は、賞《ほ》めたつもりで言った。
 「知り合いが中にいるって?」
 「ええ」
 「何という人?」
 「あそこの娘《むすめ》さんとか。——千春さんというんです」
 とたんに、中松の顔がサッと青ざめた。明子はびっくりして、
 「ど、どうかしました?」
 と訊《き》いた。
 「今、千春といった?」
 「ええ……」
 「帰って来たのか!」
 今度は、中松の顔は紅《こう》潮《ちよう》した。忙《いそが》しい男だ。
 「知ってるんですか」
 「もちろん!」
 「同じ中松というと——兄《きよう》妹《だい》か何かで——」
 「いや、僕と千春は婚《こん》約《やく》してるんだ」
 今度こそ、明子は引っくり返りそうになった。
 「婚約?」
 「そう。——しかし色々な事《じ》情《じよう》があって、僕《ぼく》らの仲《なか》は裂《さ》かれ、彼女《かのじよ》は行《ゆく》方《え》をくらましてしまった」
 「それで?」
 「彼女の心は変っていない。だからこそ帰って来たんだ!」
 また明子は首をひねった。——この喜びようも、まともではない。
 それに、「彼女の心は変っていない」どころか、ちゃんと彼女は結《けつ》婚《こん》しているではないか!
 「いや、きっと帰って来てくれると信じていたんだ! ずっと信じ続け、待ち続けたか《ヽ》い《ヽ》があった」
 「あの……」
 「千春は元気だった?」
 「ええ、まあ……」
 「良かった! いや、実に嬉《うれ》しい知らせだ。ありがとう」
 「いえ、どういたしまして」
 と明子は、曖《あい》昧《まい》な気分で言った。
 千春がすでに結婚していることを、話すべきだろうか、と迷《まよ》ったのである。
 「いや、実に良かった!」
 と中松は、浮《う》かれているようで、「さあ、何でも好《す》きなものを取って下さい!」
 と言ったが、コーヒー専《せん》門《もん》店《てん》で、ステーキを頼《たの》むわけにもいかない。
 二杯《はい》コーヒーを飲んで、その場は諦《あきら》めることにしたのだが——。
 
 「どうしたの?」
 と、尾形が訊《き》いた。
 「呆《あき》れてものも言えないってのはこのことよ!」
 「どうして?」
 「その人、お金持ってなかったの。『や、忘《わす》れて来た』ですって。結局、こっちが払《はら》うはめになったのよ」
 明子は憤《ふん》然《ぜん》として言った。
 「そりゃ君は恨《うら》みに思うね」
 「当り前でしょ。何が大地主だか、聞いて呆れちゃう」
 「しかし、そんなもんかもしれないぜ」
 と、尾形は言った。「割《わり》合《あい》、お金の感覚がないというか——」
 「そうかもね。でも、どうでもいいわ」
 「本当に、その千春って人の婚《こん》約《やく》者《しや》だったのかな?」
 「それも分らないわ。でも、その後、何も話さなかったから。——金払《はら》わされて、頭に来てさっさと帰って来ちゃったの」
 「君らしいや」
 「でも、どうなってるのかしら?」
 と、明子はため息をついた。「あの、亭《てい》主《しゆ》の佐田の方を、調べてみたいんだけどね」
 「あんまり深入りすると危《あぶな》いぜ」
 「大《だい》丈《じよう》夫《ぶ》。危い目には別に——」
 と言いかけて、明子は、車にはねられそうになったことを思い出していた。
 「これから、どうするんだい?」
 と、尾形は訊《き》いた。
 「家へ帰るわ」
 「いや、事《じ》件《けん》の方さ」
 「ああ。——あの夫《ふう》婦《ふ》のアパートへ行ってみるつもり」
 「なるほど」
 「今朝《けさ》、寄《よ》ってみたけど、誰《だれ》もいないの」
 「帰ってないんだな」
 「もう帰って来ないのかも……」
 と明子は呟《つぶや》くように言った。
 しかし——あの中松という、一風変った青年。
 いやに、明子の印象に焼きついてしまっている。
 ——明子は犬が水を切るように、ブルブルッと頭を勢い良く振《ふ》った。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%