日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 赤川次郎 » 正文

霧の夜にご用心15

时间: 2018-09-28    进入日语论坛
核心提示:松尾の死 松尾は、気分が悪いせいか、背《はい》後《ご》から近付く私に、全く気付いていなかった。 私の手には、血を吸《す》
(单词翻译:双击或拖选)
 松尾の死
 
 松尾は、気分が悪いせいか、背《はい》後《ご》から近付く私に、全く気付いていなかった。
 私の手には、血を吸《す》うのを待ち焦《こ》がれているナイフがあり、目の前には松尾の背中がある。その間は、もう一メートルとはなかった。
 今だ! 私はナイフを握った手を、ゆっくりと振《ふ》り上げた。
 「——いやだって言ってるじゃないのよ!」
 女の声が、突《とつ》然《ぜん》すぐ近くで聞こえた。私は素早くナイフを握った手をコートのポケットに入れ、振り向いた。
 「なあ、何だよ、今さら!」
 と男の声。
 霧《きり》で多少見にくいが、どう見ても二十歳《さい》そこそこの若《わか》い男と女である。どっちも少し酔っているようだ。
 私は舌打ちした。松尾が声を聞いて振り向くと、まともに顔を合わせることになる。
 一《いつ》旦《たん》姿を隠《かく》さなくてはならない。——私は素早く暗がりへと移動した。
 松尾は、気分が良くならないのか、少し歩いて、街《がい》灯《とう》にもたれると、そのままじっと動かない。
 「——いやなもんはいやなのよ!」
 「そりゃねえだろ、ここまで来たのによお」
 若い男女はまだもめている。
 「ここまで来たって、あんたが連れて来たんでしょ」
 「お前がついて来たんじゃねえか」
 「何もしないって言うからよ」
 「あそこまで来て、何もすんななんて、冗《じよう》談《だん》きついぜ」
 ——どうやら、男が、恋《こい》人《びと》をホテルか個室喫《きつ》茶《さ》か、その手の所まで連れて行ったのに、いざとなったら、女のほうが逃《に》げ出したというところらしい。よくある話だ。
 「約《やく》束《そく》したでしょ。あんた、キスだけだって」
 「そんなのねえよ。散々金使ってんだぜ」
 ——畜生、と私は苛《いら》々《いら》しながら、靴《くつ》で小石をけった。どっちでもいいから、とっとと姿を消してくれ!
 「お金が何よ! ケチくさいこと言わないでよ」
 「ケチたあ何だよ!」
 「ケチだからケチって言ったのよ!」
 「お前こそ何だ、いつも飯食っちゃ逃げちまうくせして。食い逃げめ!」
 「言ったわね……」
 女はカッとしたらしく、男の頬《ほお》をいきなり平手でひっぱたいた。バシッと景気のいい音が響《ひび》いて、
 「この野《や》郎《ろう》……」
 男のほうも頭に血が上ったと見える。女の髪《かみ》をわしづかみにして引っ張った。
 「痛《いた》い! 何すんのよ! この気《き》狂《ちが》い!」
 女が手にしたハンドバッグを振り回す。
 こうなると、もう乱《らん》闘《とう》だ。——私は、ため息をついた。
 もちろん、かの〈切り裂きジャック〉だって、バッキンガム宮《きゆう》殿《でん》の中で犯行に及《およ》んだわけではない。色々と邪《じや》魔《ま》も入ったに違《ちが》いない。
 しかし、こんな騒《さわ》ぎに出くわしたのでは……。
 私はすっかりやる気を失ってしまった。
 「てめえ、金返せよ!」
 「何すんの、泥《どろ》棒《ぼう》!」
 ——恋人たちもこうなっては終りだな、と私は苦《く》笑《しよう》した。男が女のバッグを引ったくって、中身を道路へぶちまけた。
 そして、財《さい》布《ふ》をひっつかむと、
 「返してよ! 泥棒!」
 と食ってかかる女を突《つ》き飛ばした。
 女は路上に転《てん》倒《とう》して、ちょうど街灯にもたれている松尾の足下に転がった。
 「ねえ、あいつを捕《つか》まえてよ! 泥棒なのよ!」
 と、女は松尾の足をつかんで叫《さけ》んだ。
 もちろん、まさかそれが本物の刑《けい》事《じ》だとは思ってもいないだろうが。
 「うん……? 何だ、一体?」
 松尾が、物《もの》憂《う》い様子で顔を上げた。
 「あいつが、私の財布を盗《と》ったのよ!」
 と女が、若い男のほうを指さす。
 「勝手言いやがって! そいつに電車賃でも借りて帰るんだな!」
 と、男のほうは言い捨《す》てて歩き出す。
 突然、松尾が職業意識に目ざめたのか、
 「待て!」
 と、怒《ど》鳴《な》った。「逃げるな!」
 「何だよ」
 男は振り向いて、「引っ込《こ》んでろい! 関係ねえだろう!」
 「それを返せ」
 松尾は、ちょっとよろけながら、相手のほうへと近付いて行った。
 「大きなお世話だ、引っ込んでろ!」
 「財布を返してやれ!」
 松尾のほうも、酔《よ》っているせいか、言葉が荒《あら》々《あら》しい。「逮《たい》捕《ほ》するぞ!」
 「笑わせるない、この酔っ払いが!」
 男にドンと胸《むね》を突かれて、松尾はよろけると尻《しり》もちをついた。男はゲラゲラと笑いながら、
 「ざまあ見ろ! 悔《くや》しかったら、逮捕でも何でもしてみろよ」
 松尾が、よろけつつ立ち上がる。
 ——私は松尾の顔つきが変っているのに気付いた。
 私を尋《じん》問《もん》していたときの、あの凶《きよう》悪《あく》そのもののような顔になっている。こいつはただでは済まないぞ、と思った。
 「お、まだやる気かよ」
 相手はニヤニヤ笑っている。何も分っていないのだ。
 「謝《あやま》れ」
 と松尾は低い声で言った。
 「何だと?」
 「手をついて謝れ」
 「ふざけるない! てめえこそ——」
 松尾が男の腕《うで》をぐいとつかむと体を沈《しず》めた。男の体がみごとに一回転して、道路に叩《たた》きつけられる。
 「いてて……」
 「さあ、謝れ」
 「誰《だれ》が謝るもんか!」
 起き上がった男は拳《こぶし》を固めて松尾に向って行った。だが、松尾の手のほうが、鍛《きた》えられている。手刀が水平に男の首を打って、男は苦しげに喘《あえ》ぎつつ倒《たお》れた。
 「分ったか! 俺《おれ》を馬《ば》鹿《か》にした奴《やつ》は、容《よう》赦《しや》しないんだ」
 松尾は、靴で、思い切り相手の腹《はら》をけった。ウッと呻《うめ》いて、体を折る。
 「フン、ゴキブリ野郎!」
 と、松尾は吐《は》き捨てるように言った。
 それから、少し離《はな》れて、二人の争いを見ていた女のほうへ、
 「さあ、財布を取り返せよ」
 と言った。
 だが、女のほうは、さっきの勢いはどこへやら、すっかり怯《おび》えてしまっていた。
 「もう……いいの」
 「何がいいんだ! こいつは泥棒なんだぞ」
 松尾は大声で喚《わめ》いた。
 「あの……どうせ大して入ってないから……」
 と女はこわごわ言った。
 「何を震《ふる》えてるんだ?——俺が怖《こわ》いのか?」
 松尾は声を上げて笑った。「俺は刑事だぞ! 何も怖いことなんかないんだ」
 「分ったわ……。ありがとう、もういいの」
 「いや、よかないぜ。財布をちゃんと取り戻《もど》さなきゃな」
 松尾は、倒れている男のほうへ歩み寄った。
 「ズボンのポケットだな……」
 と男の上にかがみ込んで、「あ……」
 と呟《つぶや》くように言った。
 おかしいぞ、と私は思った。
 私の位置からはよく見えないのだが、何かあったのだ。
 松尾が、そろそろと体を起こすと、二、三歩後ずさりして、振り向いた。——女が悲鳴を上げた。
 街灯の光で、松尾の腹の辺りが、赤く染《そ》まっているのが分る。——倒れていた男が、上体を起こした。
 あの若い男がナイフを持っているとは、松尾も気付かなかったのだろう。
 松尾が、苦《く》痛《つう》の表情など、まるで見せないのが却《かえ》って怖かった。むしろ、薄《うす》笑《わら》いさえ浮《う》かべている。
 そして——不意に松尾の体が崩《くず》れた。
 路上に伏《ふ》した松尾の体の下から、血がゆっくりと広がり始める。
 男がナイフを手に立ち上がる。
 「——何やったのよ!」
 女が叫《さけ》んだ。
 「俺……だって……頭に来たから……」
 と、男がボソボソと言った。
 「殺したのよ!」
 女のほうが、こういうときは冷静になるようだ。
 松尾の上にかがみ込んで、上《うわ》衣《ぎ》のポケットを探《さぐ》った。
 「——見て!」
 「何だ?」
 「警《けい》察《さつ》手帳よ」
 しばらく、どちらも口をきかなかった。
 「そんな……」
 「本物の警官よ! 刑事を殺したのよ!」
 女が叫んだ。「何てことしたのよ!」
 「どうしよう……俺……」
 男が、血のついたナイフを投げ出した。
 「だめよ。どこかへ捨てなきゃ」
 女がバッグの中のものを拾い集めて、ハンカチで血のついたナイフを包んだ。「さあ、早く逃げるのよ!」
 「どうする? だって、もしかしたら、まだ助かるかもしれない——」
 「もう死んでるわよ! 誰か来ない内に。早く!」
 「う、うん」
 男のほうはただ呆《ぼう》然《ぜん》としているばかりで、女に腕を取られて、よろけるようにして立ち去った。
 ——私は、ゆっくりと、松尾のほうへ歩み寄った。
 本当に死んでいるのだろうか? かがみ込んで、手首を取ってみる。
 ——そこには生命のしるしは、全くなかった。
 私は、しばし呆然として、松尾の死体を見下ろして立っていた。
 何という皮肉だろう。殺そうとした相手が、こんなにも簡《かん》単《たん》に、他の人間に殺されてしまうとは。
 しかも、刺《さ》されているのだ!
 それは、まるで、天が私に代って、松尾を殺してくれたようなものだった。「切り裂きジャック」は、またしても、その腕を振《ふる》うことなしに終ってしまったのである。
 ——ふと、我に返って、私は歩き出した。こんなところを人に見られては怪《あや》しまれる。
 「怪しまれる、か……」
 そう呟いて、笑い出した。
 切り裂きジャックが、怪しまれるもないものだ。どうなってるんだ、全く!
 私が笑いながら、歩いて行くと、すれ違ったどこかの酔っ払いが、
 「おい、兄《あん》ちゃん、ご機《き》嫌《げん》だね」
 と、声をかけて行った。
 私は足を早めた。霧は少し晴れかかっている。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%