首相は一いっ瞬しゅん言葉を失った。自分がこんな状じょう態たいに置かれていることで怒ってはいるものの、目の前に座っている萎しなびた様子の男が、やはり哀あわれに思えた。
「ご愁しゅう傷しょうさまです」ややあって、首相が言った。「何かお力になれることは?」
「恐れ入ります、閣下。しかし、何もありません。今夜は、最近の出来事についてあなたにご説明し、私の後任をご紹しょう介かいする役目で参りました。もうとっくに着いてもいいころなのですが、なにしろ魔法大臣はいま、多忙たぼうでいらっしゃる。何やかやとあって……」
ファッジは振り返って醜みにくい小男の肖しょう像ぞう画がを見た。銀色の長い巻まき毛げの鬘かつらを着けた男は、羽根ペンの先で耳をほじっているところだった。
ファッジの視線しせんをとらえ、肖しょう像ぞう画がが言った。
「まもなくお見えになるでしょう。ちょうどダンブルドアへのお手紙を書き終えたところです」
「ご幸運を祈いのりたいですな」
ファッジは初めて辛辣しんらつな口調になった。
「ここ二週間、私はダンブルドアに毎日二通も手紙を書いたのに、頑がんとして動こうとしない。ダンブルドアがあの子をちょっと説得せっとくする気になってくれていたら、私はもしかしたらまだ……まあ、スクリムジョールのほうがうまくやるかもしれないし」
ファッジは口く惜やしげにむっつりと黙だまり込んだ。しかし、沈ちん黙もくはほとんどすぐに破られた。肖像画が、突然、事務的な切きり口こう上じょうでこう告げた。
「マグルの首相閣下かっか。面会の要請ようせい。緊きん急きゅう。至し急きゅうお返事のほどを。魔法大臣 ルーファス・スクリムジョール」
「はい、はい、結構けっこう」首相はほかのことを考えながら生なま返へん事じをした。
第1章 むこうの大臣 The Other Minister(14)
首相は一いっ瞬しゅん言葉を失った。自分がこんな状じょう態たいに置かれていることで怒ってはいるものの、目の前に座っている萎しなびた様子の男が、やはり哀あわれに思えた。
「ご愁しゅう傷しょうさまです」ややあって、首相が言った。「何かお力になれることは?」
「恐れ入ります、閣下。しかし、何もありません。今夜は、最近の出来事についてあなたにご説明し、私の後任をご紹しょう介かいする役目で参りました。もうとっくに着いてもいいころなのですが、なにしろ魔法大臣はいま、多忙たぼうでいらっしゃる。何やかやとあって……」
ファッジは振り返って醜みにくい小男の肖しょう像ぞう画がを見た。銀色の長い巻まき毛げの鬘かつらを着けた男は、羽根ペンの先で耳をほじっているところだった。
ファッジの視線しせんをとらえ、肖しょう像ぞう画がが言った。
「まもなくお見えになるでしょう。ちょうどダンブルドアへのお手紙を書き終えたところです」
「ご幸運を祈いのりたいですな」
ファッジは初めて辛辣しんらつな口調になった。
「ここ二週間、私はダンブルドアに毎日二通も手紙を書いたのに、頑がんとして動こうとしない。ダンブルドアがあの子をちょっと説得せっとくする気になってくれていたら、私はもしかしたらまだ……まあ、スクリムジョールのほうがうまくやるかもしれないし」
ファッジは口く惜やしげにむっつりと黙だまり込んだ。しかし、沈ちん黙もくはほとんどすぐに破られた。肖像画が、突然、事務的な切きり口こう上じょうでこう告げた。
「マグルの首相閣下かっか。面会の要請ようせい。緊きん急きゅう。至し急きゅうお返事のほどを。魔法大臣 ルーファス・スクリムジョール」
「はい、はい、結構けっこう」首相はほかのことを考えながら生なま返へん事じをした。