「わしはむしろその逆を考えておった」ダンブルドアが言った。
「きみはこれまでヴォルデモート卿きょうの考えや感情に接近するという経験をしてきたのじゃが、ヴォルデモート卿はやっと、それが危険だということに気づいたのじゃ。どうやら、きみに対して『閉へい心しん術じゅつ』を使っているようじゃな」
「なら、僕は文句ありません」
心を掻かき乱される夢を見なくなったことも、ヴォルデモートの心を覗のぞき見てぎくりとするような場面がなくなったことも、ハリーは惜おしいとは思わなかった。
二人は角を曲がり、電話ボックスとバス停を通り過ぎた。ハリーはまたダンブルドアを盗み見た。
「先生?」
「なんじゃね?」
「あの――ここはいったいどこですか?」
「ここはのう、ハリー、バドリー・ババートンというすてきな村じゃ」
「それで、ここで何をするのですか?」
「おう、そうじゃ、きみにまだ話してなかったのう」ダンブルドアが言った。
「さて、近年何度これと同じことを言うたか、数えきれぬほどじゃが、またしても、先生が一人足りない。ここに来たのは、わしの古い同どう僚りょうを引退生活から引きずり出し、ホグワーツに戻もどるよう説得せっとくするためじゃ」
「先生、僕はどんな役に立つんですか?」
「ああ、きみが何に役立つかは、いまにわかるじゃろう」
ダンブルドアは曖昧あいまいな言い方をした。
「ここを左じゃよ、ハリー」
二人は両側に家の立ち並んだ狭せまい急な坂を登った。窓という窓は全部暗かった。ここ二週間、プリベット通りを覆おおっていた奇き妙みょうな冷気が、この村にも流れていた。吸きゅう魂こん鬼きのことを考え、ハリーは振り返りながら、ポケットの中の杖つえを再確認するように握りしめた。
第4章 ホラス・スラグホーン(3)
「わしはむしろその逆を考えておった」ダンブルドアが言った。
「きみはこれまでヴォルデモート卿きょうの考えや感情に接近するという経験をしてきたのじゃが、ヴォルデモート卿はやっと、それが危険だということに気づいたのじゃ。どうやら、きみに対して『閉へい心しん術じゅつ』を使っているようじゃな」
「なら、僕は文句ありません」
心を掻かき乱される夢を見なくなったことも、ヴォルデモートの心を覗のぞき見てぎくりとするような場面がなくなったことも、ハリーは惜おしいとは思わなかった。
二人は角を曲がり、電話ボックスとバス停を通り過ぎた。ハリーはまたダンブルドアを盗み見た。
「先生?」
「なんじゃね?」
「あの――ここはいったいどこですか?」
「ここはのう、ハリー、バドリー・ババートンというすてきな村じゃ」
「それで、ここで何をするのですか?」
「おう、そうじゃ、きみにまだ話してなかったのう」ダンブルドアが言った。
「さて、近年何度これと同じことを言うたか、数えきれぬほどじゃが、またしても、先生が一人足りない。ここに来たのは、わしの古い同どう僚りょうを引退生活から引きずり出し、ホグワーツに戻もどるよう説得せっとくするためじゃ」
「先生、僕はどんな役に立つんですか?」
「ああ、きみが何に役立つかは、いまにわかるじゃろう」
ダンブルドアは曖昧あいまいな言い方をした。
「ここを左じゃよ、ハリー」
二人は両側に家の立ち並んだ狭せまい急な坂を登った。窓という窓は全部暗かった。ここ二週間、プリベット通りを覆おおっていた奇き妙みょうな冷気が、この村にも流れていた。吸きゅう魂こん鬼きのことを考え、ハリーは振り返りながら、ポケットの中の杖つえを再確認するように握りしめた。
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