ケイティ・ベルと友達の声が風に運ばれて、後ろを歩いていたハリーの耳に届いていたが、しばらくしてハリーは、その声が叫さけぶような大声になったのに気づいた。ハリーは目を細めて、二人のぼんやりした姿を見ようとした。ケイティが手に持っている何かをめぐって、二人が口論していた。
「リーアン、あなたには関係ないわ!」ケイティの声が聞こえた。
小道の角を曲がると、霙はますます激はげしく吹きつけ、ハリーのメガネを曇くもらせた。手袋をした手でメガネを拭ふこうとしたとたん、リーアンがケイティの持っている包みをぐいとつかんだ。ケイティが引っぱり返し、包みが地面に落ちた。
その瞬しゅん間かん、ケイティが宙ちゅうに浮いた。ロンのように踝くるぶしから吊つり下がった滑稽こっけいな姿ではなく、飛び立つ瞬間のように優雅ゆうがに両手を伸ばしている。しかし、何かおかしい、何か不気味だ……激しい風に煽あおられた髪かみが顔を打っているが、両目を閉じ、虚うつろな表情だ。ハリー、ロン、ハーマイオニーもリーアンも、その場に釘くぎづけになって見つめた。
やがて、地上二メートルの空中で、ケイティが恐ろしい悲鳴を上げた。両目をカッと見開き、何を見たのか、何を感じたのか、ケイティはその何かのせいで、恐ろしい苦悶くもんに苛さいなまれている。ケイティは叫び続けた。リーアンも悲鳴を上げ、ケイティの足首をつかんで地上に引き戻もどそうとした。ハリー、ロン、ハーマイオニーも駆かけ寄って助けようとした。しかし、みんなで足をつかんだ瞬しゅん間かん、ケイティが四人の上に落下してきた。ハリーとロンがなんとかそれを受け止めはしたが、ケイティがあまりに激しく身をよじるので、とても抱き止めていられなかった。地面に下ろすと、ケイティはそこでのたうち回り、絶ぜっ叫きょうし続けた。誰だれの顔もわからないようだ。
ハリーは周まわりを見回した。まったく人気ひとけがない。<>
第12章 シルバーとオパール Silver and Opals(12)
ケイティ・ベルと友達の声が風に運ばれて、後ろを歩いていたハリーの耳に届いていたが、しばらくしてハリーは、その声が叫さけぶような大声になったのに気づいた。ハリーは目を細めて、二人のぼんやりした姿を見ようとした。ケイティが手に持っている何かをめぐって、二人が口論していた。
「リーアン、あなたには関係ないわ!」ケイティの声が聞こえた。
小道の角を曲がると、霙はますます激はげしく吹きつけ、ハリーのメガネを曇くもらせた。手袋をした手でメガネを拭ふこうとしたとたん、リーアンがケイティの持っている包みをぐいとつかんだ。ケイティが引っぱり返し、包みが地面に落ちた。
その瞬しゅん間かん、ケイティが宙ちゅうに浮いた。ロンのように踝くるぶしから吊つり下がった滑稽こっけいな姿ではなく、飛び立つ瞬間のように優雅ゆうがに両手を伸ばしている。しかし、何かおかしい、何か不気味だ……激しい風に煽あおられた髪かみが顔を打っているが、両目を閉じ、虚うつろな表情だ。ハリー、ロン、ハーマイオニーもリーアンも、その場に釘くぎづけになって見つめた。
やがて、地上二メートルの空中で、ケイティが恐ろしい悲鳴を上げた。両目をカッと見開き、何を見たのか、何を感じたのか、ケイティはその何かのせいで、恐ろしい苦悶くもんに苛さいなまれている。ケイティは叫び続けた。リーアンも悲鳴を上げ、ケイティの足首をつかんで地上に引き戻もどそうとした。ハリー、ロン、ハーマイオニーも駆かけ寄って助けようとした。しかし、みんなで足をつかんだ瞬しゅん間かん、ケイティが四人の上に落下してきた。ハリーとロンがなんとかそれを受け止めはしたが、ケイティがあまりに激しく身をよじるので、とても抱き止めていられなかった。地面に下ろすと、ケイティはそこでのたうち回り、絶ぜっ叫きょうし続けた。誰だれの顔もわからないようだ。
ハリーは周まわりを見回した。まったく人気ひとけがない。
「ここにいてくれ!」
吠ほえ哮たける風の中、ハリーは大声を張り上げた。
「助けを呼んでくる!」