マルフォイの尻尾しっぽを押さえようと決意したにもかかわらず、何のチャンスもつかめないまま一、二週間が過ぎた。できるだけ頻繁ひんぱんに地図を見ていたし、ときには授じゅ業ぎょうの合間に行きたくもないトイレに行ってまで調べたが、マルフォイが怪しげな場所にいるのを一度も見かけなかった。もっとも、クラッブやゴイルが、いつもより頻繁に二人きりで城の中を歩き回ったり、ときには人気ひとけのない廊下ろうかにじっとしていたりするのを見つけたものの、そういうときに、マルフォイは二人の近くにいないばかりか、地図のどこにいるのやら、まったく見つからなかった。これは不ふ思し議ぎ千万せんばんだった。
マルフォイが実は学校の外に出ているという可能性をちらりと考えてもみたが、厳げん戒かい体制たいせいの敷しかれた城で、そんなことができるとは考えられなかった。地図上の何百という小さな黒い点に紛まぎれて、マルフォイを見失ったのだろうと考えるしかなかった。これまではいつもくっついていたマルフォイ、クラッブ、ゴイルが、ばらばらな行動を取っている様子なのは、それぞれが成長したからだろう――ロンとハーマイオニーがそのいい例だと思うと、ハリーは悲しい気持になった。
二月が三月に近づいたが、天気は相変わらずだった。しかも、雨だけでなく風までも強くなった。談だん話わ室しつの掲けい示じ板ばんに、次のホグズミード行きは取り消しという掲示が出たときには、全員が憤慨ふんがいした。ロンはかんかんだった。
「僕の誕たん生じょう日びだぞ!」ロンが言った。「楽しみにしてたのに!」
「だけど、そんなに驚くようなことでもないだろう?」ハリーが言った。
「ケイティのことがあったあとだし」
ケイティはまだ「聖せいマンゴ病院」から戻もどっていなかった。その上、「日刊にっかん予よ言げん者しゃ」には行方不明者の記事がさらに増え、その中にはホグワーツの生徒の親戚しんせ
第18章 たまげた誕生日 Birthday Surprises(12)
マルフォイの尻尾しっぽを押さえようと決意したにもかかわらず、何のチャンスもつかめないまま一、二週間が過ぎた。できるだけ頻繁ひんぱんに地図を見ていたし、ときには授じゅ業ぎょうの合間に行きたくもないトイレに行ってまで調べたが、マルフォイが怪しげな場所にいるのを一度も見かけなかった。もっとも、クラッブやゴイルが、いつもより頻繁に二人きりで城の中を歩き回ったり、ときには人気ひとけのない廊下ろうかにじっとしていたりするのを見つけたものの、そういうときに、マルフォイは二人の近くにいないばかりか、地図のどこにいるのやら、まったく見つからなかった。これは不ふ思し議ぎ千万せんばんだった。
マルフォイが実は学校の外に出ているという可能性をちらりと考えてもみたが、厳げん戒かい体制たいせいの敷しかれた城で、そんなことができるとは考えられなかった。地図上の何百という小さな黒い点に紛まぎれて、マルフォイを見失ったのだろうと考えるしかなかった。これまではいつもくっついていたマルフォイ、クラッブ、ゴイルが、ばらばらな行動を取っている様子なのは、それぞれが成長したからだろう――ロンとハーマイオニーがそのいい例だと思うと、ハリーは悲しい気持になった。
二月が三月に近づいたが、天気は相変わらずだった。しかも、雨だけでなく風までも強くなった。談だん話わ室しつの掲けい示じ板ばんに、次のホグズミード行きは取り消しという掲示が出たときには、全員が憤慨ふんがいした。ロンはかんかんだった。
「僕の誕たん生じょう日びだぞ!」ロンが言った。「楽しみにしてたのに!」
「だけど、そんなに驚くようなことでもないだろう?」ハリーが言った。
「ケイティのことがあったあとだし」
ケイティはまだ「聖せいマンゴ病院」から戻もどっていなかった。その上、「日刊にっかん予よ言げん者しゃ」には行方不明者の記事がさらに増え、その中にはホグワーツの生徒の親戚しんせきも何人かいた。
「だけど、ほかに期待できるものって言えば、ばかばかしい『姿すがた現あらわし』しかないんだぜ!」
ロンがぶつくさ言った。
「すごい誕生日祝いだよ……」
三回目の練習が終わっても、「姿現わし」は相変わらず難むずかしく、何人かが「ばらけ」おおせただけだった。焦しょう燥そう感かんが高まると、ウィルキー・トワイクロスと口癖くちぐせの「3さんDディー」に対する多少の反感が出てきて、トワイクロスの「3D」に刺激しげきされた綽名あだながたくさんついた。ドンクサ、ドアホなどはまだましなほうだった。
三月一日の朝、ハリーもロンも、シェーマスとディーンがドタバタと朝食に下りていく音で起こされた。
「誕生日おめでとう、ロン」ハリーが言った。「プレゼントだ」
ハリーがロンのベッドに放り投げた包みは、すでに小高く積み上げられていたプレゼントの山に加わった。夜のうちに屋敷やしきしもべ妖よう精せいが届けたのだろうと、ハリーは思った。
「あんがと」
ロンが眠そうに言った。ロンが包み紙を破り取っている間に、ハリーはベッドから起き出し、トランクを開けて、隠かくしておいた「忍しのびの地ち図ず」を探った。毎回使ったあとは、そこに隠しておいたのだ。トランクの中身を半分ほど引っくり返し、丸めたソックスの下に隠れていた地図をやっと見つけた。ソックスの中には、幸運をもたらす魔法薬、フェリックス・フェリシスの瓶びんがいまもしまってある。